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取材報告

2010
医機連とMETIS主催の第5回医療機器市民フォーラムが開催
テーマは「頭の病気-予防・診断・治療の最前線」


会場風景
会場風景

パネルディスカッション風景
パネルディスカッション風景

荻野和郎氏(医機連)
荻野和郎氏
(医機連)

桐野高明氏(国立国際医療センター)
桐野高明氏
(国立国際医療センター)

松本昌泰氏(広島大学)
松本昌泰氏
(広島大学)

井原康夫氏(同志社大学)
井原康夫氏
(同志社大学)

樋口輝彦氏(国立精神・神経センター)
樋口輝彦氏
(国立精神・神経センター)

前野一雄氏(読売新聞)
前野一雄氏
(読売新聞)

梶谷文彦氏(METIS)
梶谷文彦氏
(METIS)

 日本医療機器産業連合会(医機連)と医療技術産業戦略コンソーシアム(METIS)が主催し,内閣府,厚生労働省,経済産業省,文部科学省が後援する第5回医療機器市民フォーラムが1月23日(土),よみうりホール(東京・千代田区)にて開催された。テーマは,「脳卒中,アルツハイマー病,うつ病 頭の病気−予防・診断・治療の最前線」。少子高齢化が進み,経済情勢も厳しさを増す中,三大疾患の1つである脳卒中や,アルツハイマー病をはじめとする認知症,また近年,患者数の急増により関心が高まっているうつ病は,深刻な社会問題となっている。本フォーラムでは,この3つの疾患について,それぞれの専門医による講演とパネルディスカッションが行われるとあって,800人の募集に対して2300人の応募があり,会場はほぼ満席となった。

  冒頭,医機連会長でMETIS共同議長の荻野和郎氏(日本光電(株)代表取締役会長)が挨拶に立ち,日本の医療機器や医療を取り巻く厳しい現状について概説したほか,近年,ライフサイエンス分野では脳科学の進歩が著しいことから,これらの研究成果とわが国が世界に誇るエレクトロニクスや素材,精密工学などの先端技術を組み合わせ,国を挙げて世界トップレベルの技術開発に取り組んでいくことが,国民への医療サービスの提供や日本の経済発展に貢献するとの考えを述べた。また,プログラムコーディネーターを務めた国立国際医療センター総長の桐野高明氏は,医療の進歩に伴い,感染症のコントロールが可能になるなど社会的な疾患の様相は変化しており,頭の病気の診断・治療法についてもさらなる進歩が期待できると述べ,予防法や最新の治療法を紹介する本フォーラムを通じて,一人でも多くの人々の健康に貢献したいと挨拶した。

  続いて行われた第1部では,初めに,広島大学医学部医学科長の松本昌泰氏が,脳卒中をテーマに講演した。脳卒中の分類として,脳梗塞,脳出血,クモ膜下出血を挙げ,それぞれの発症の機序や症状などについて概説したほか,脳卒中による死亡や後遺症を減らし健康を維持するために重要な高血圧の管理,一過性脳虚血発作(TIA)の症状などについて紹介した。また,脳卒中の診断・治療のための検査法であるCT,MRI,MRA,頸部血管エコー,脳血管造影検査の特徴や,脳梗塞の最新の治療法である血栓溶解療法(t-PA),脳卒中の危険因子,一次予防と二次予防の重要性,脳卒中の予防のポイントなどについて解説し,脳卒中による死亡や後遺症を防ぐためには,危機の予知・予測(情報システム),危機の防止・回避・事前の諸準備,危機対処(被害極限措置),危機再発防止などの危機管理が重要であると述べた。

  同志社大学生命医科学部教授の井原康夫氏は,アルツハイマー病をテーマに講演した。高齢化が進むに伴い認知症が指数関数的に増加し,さらにその6〜7割をアルツハイマー病が占めているという現状について紹介したほか,老人斑(Aβ)と神経原線維変化(τ)の蓄積によって引き起こされるアルツハイマー病の機序と,その予防における最先端の研究成果,アルツハイマー病の原因となる老人斑を抑制するワクチンの可能性,具体的な予防法について概説した。

  国立精神・神経センター総長の樋口輝彦氏は,うつ病をテーマに講演した。うつ病を取り巻く社会背景や,他の疾患と異なる診断の困難さなどについて触れた上で,うつ病発症にかかわる神経新生の低下をもたらすストレスと脳との関係や,症状,年代別の有病率,うつ病の素因,治療法などについて詳述。また,うつ病の客観的診断法の確立が急がれると述べ,診断のための新しいマーカーとして検討されている,近赤外光を脳に当てて脳血量(ヘモグロビン濃度)の増減に伴う検出光の増減を測定する近赤外線トポグラフィー,視床下部・下垂体・副腎皮質(HPA)系異常を検出するDEX/CRHテスト,うつ病で増加するとされる血中に含まれるタンパク質ProBDNFを紹介した。

 講演後の第2部では,読売新聞東京本社編集委員の前野一雄氏がコーディネーターを務め,3名の演者によるパネルディスカッションが行われた。来場者からは,脳ドック受診施設の選び方と受診のタイミング,認知症改善薬の効果,抗うつ薬の服用方法など,事前に多数の質問が寄せられており,頭の病気に対する関心の高さがうかがえた。

 また,本フォーラムの最後には,METIS共同議長の梶谷文彦氏(川崎医療福祉大学副学長・教授/岡山大学特命教授/川崎医科大学名誉教授)が挨拶に立ち,日本発の医療機器の研究開発の促進や国際競争力を高め,国民の健康と福祉に貢献するために産官学が協働で取り組むMETISについて紹介し,多くの国民の理解を得ながら活動を続けていきたいと述べた。


●問い合わせ先
日本医療機器産業連合会(医機連)
TEL 03-5225-6234 FAX 03-3260-9092
http://www.jfmda.gr.jp/