東芝メディカルシステムズ(株)は,「The Best Image 2009」を,12月19日(土),東京ステーションコンファレンス(千代田区丸の内)で開催した。The Best Imageは,東芝の製品で撮影された医用画像について,その臨床的な有用性と画像技術を中心に審査して表彰するもので,1993年に「画論」としてスタートして今回で17回目の開催となる。今年はCT,MR,超音波の3モダリティ10分野に484件の応募があり,その中から上位入賞の53件について審査を行い最優秀賞などを決定した。今回は初めて,モダリティごとに上位入選施設によるプレゼンテーションとディスカッションを行い,その後審査によって最優秀賞などが発表されるスタイルとなった(超音波では,2年前に単独開催時に1度実施されている)。
3つの会場に分かれて行われたディスカッションでは,進行役の審査員からのコメントや東芝関係者への技術的な問いかけなどもあり,真剣かつ熱心なディスカッションが行われた。
ディスカッション終了後,審査を行う間に行われた特別講演は超音波,CT,MRの各分野から最新のトピックスが紹介された。超音波では,畠二郎氏(川崎医科大学)が「消化管エコーにおけるPrecision Imagingの効果」として,消化管領域でさらなる高画質をもたらすPrecision Imagingのさまざまな臨床例(干し柿飲み込みによる腸閉塞の診断など)をユニークな語り口で紹介した。CTは,佐竹光夫氏(国立がんセンター東病院)による「Area Detector CTによる体幹部の臨床応用」で,4Dデータによる放射線治療の治療計画への応用など最新の事例が紹介された。なお,国立がんセンター東病院には診断用のAquilion ONEが稼働しているが,近く治療計画用として新たに1台が導入される予定とのことだ。MRの磯田裕義氏(京都大学)は,「非造影血管描出法の進歩と高磁場への適用検討」について,腹部領域,特に肝臓での非造影MRIの応用を紹介した。肝動静脈,門脈に対してTime-SLIP法と3D-TrueSSFPなどを用いたMR Venography,MR Arteriography,MR Portographyの可能性を示した。その上でさらなるSNRの向上,コントラストの向上のために3T MRIへの期待を述べた。
〈審査結果〉
最後に,改めて優秀賞に入賞した施設を紹介し,各分野の最優秀賞などを発表,小松研一代表取締役社長から賞状が授与された。主な受賞施設(症例名)と審査コメントを紹介する。
●超音波部門
[心臓部門・最優秀賞]
群馬大学医学部附属病院 高田智子(左回旋枝の冠動脈瘤)
[血管部門・最優秀賞]
特定医療法人鳩仁会札幌中央病院 及川明日香(中心静脈カテーテルに形成された静脈内血栓
[腹部部門・最優秀賞]
東邦大学医療センター大森病院 工藤岳秀(悪性腹膜中皮腫)
[表在部門・最優秀賞]
東邦大学医療センター大森病院 三塚幸夫(ソナゾイド造影超音波検査にて不染域を認めた乳癌の1例)
審査コメント◎吉川氏は「超音波画像が鮮鋭化し診断や治療に直結する臨床的な検査になっている」と述べ,医師と超音波検査技師とのコラボレーション,情報の共有がさらに重要になると強調した。水口氏は超音波のさまざまな技術を取り入れ的確に活用して撮影上の工夫がされていることは当然として「その上で丁寧でわかりやすい画像を提供して,臨床医の診断や治療に貢献する情報があるかどうかで審査した」と述べて,さらなる研鑽に期待するとした。
●CT部門
[シングル,2,4,8,16列部門・最優秀賞]
医療法人豊田会刈谷豊田総合病院(流産後外傷性動静脈瘻)
[32,64列部門・最優秀賞]
医療法人沖縄徳洲会出雲徳洲会病院(腹腔鏡下直腸切除術前シミュレーション)
[心大血管部門・最優秀賞]
財団法人倉敷中央病院(左冠動脈肺動脈起始−Brand-White-Garland症候群)
(320列部門は最優秀賞該当施設はなし)
審査コメント◎CT部門では今年初めて320列部門が設けられたことがトピックスだったが,片田氏は「64列までは機器を使いこなしている症例が多かったが,320列ではまだ"機械に撮らされている"ものが目立った」として,最優秀賞がでなかった理由を説明した。一方で3年ぶりに最優秀賞がでた心大血管部門の栗林氏は「受賞した症例は生後2か月の診断の難しい部位を短時間で低被ばくで描出し救命に繋がったことを高く評価した。審査では画像のクォリティだけでなく,いかに治療や予後に寄与したかのアウトカムと最近の課題である低被ばくであるかどうかを基準に選考した」とポイントを説明した。
●MR部門
[1/0.5/0.35テスラ部門・特別優秀賞]
医療法人社団水光会宗像水光会総合病院(傍矢状洞部髄膜腫)
[1.5テスラ部門・特別優秀賞]
聖マリアンナ医科大学東横病院(頸動脈狭窄症)
小山市民病院(乳腺腫瘍)
[1.5テスラ部門・最優秀賞]
杏林大学医学部付属病院(陳旧性心筋梗塞)
審査コメント◎MR部門は1.5テスラが中心となってきており,その中でも東芝の特徴である非造影検査の多様化が目についた。開発側が思いつかないような撮像方法で取り組む症例があるなどMRIの奥深さを感じさせた。扇氏は「胆管と血管を同時に描出したり,乳腺で非造影撮影法を使って腫瘍の"造影"効果をみるというような新しい取り組みが次々にでてきて驚いた。"The rolling stone gathers no moss"であり,ベストイメージも17回目だが毎回新しいトピックスがあり,少しもマンネリ化しない。今回の新しい審査方法を含めて,ベストイメージの今後のさらなる発展に期待したい」と総括した。
審査員は次の通り。
●超音波部門
(心臓部門)
吉川純一氏(大阪掖済会病院 病院長)
竹中 克氏(東京大学医学部附属病院 検査部 講師)
(血管部門)
松尾 汎氏(松尾クリニック・松尾血管超音波研究室 室長)
平井都始子氏(奈良県立医科大学附属病院 中央内視鏡・超音波部 准教授)
(腹部・表在部門)
水口安則氏(国立がんセンター中央病院 臨床検査部 医長)
金田 智氏(東京都済生会中央病院 放射線科 担当部長)
畠 二郎氏(川崎医科大学附属病院 検査診断学 内視鏡・超音波部門 教授)
●CT部門
(マルチスライスCT部門)
森山紀之氏(国立がんセンターがん予防・検診研究センター センター長)
片田和広氏(藤田保健衛生大学医学部 放射線医学教室 教授)
(心大血管部門)
栗林幸夫氏(慶應義塾大学医学部 放射線科学教室 教授)
吉岡邦浩氏(岩手医科大学医学部 放射線医学講座 准教授)
(テクニカル部門)
辻岡勝美氏(藤田保健衛生大学医療科学部 放射線学科 准教授)
八町 淳氏(長野赤十字病院 中央放射線部 課長)
山口隆義氏(北海道社会保険病院 放射線部 副技師長)
●MR部門
似鳥俊明氏(杏林大学医学部 放射線医学教室 教授)
大友 邦氏(東京大学大学院医学系研究科 放射線診断学 教授)
扇 和之氏 (日本赤十字社医療センター放射線診断科 部長) |