(株)インフィニットテクノロジーは,同社のPACS「INFINITT PACS」が東京女子医科大学東医療センターに導入され2009年6月より完全フィルムレスで稼働開始したことを受けて,11月17日(火),同センターの導入事例の報告とインフィニット社の製品概要などの記者説明会を本社(東京都台東区)で開催した。説明会には,PACS構築に当たった東京女子医科大学東医療センター放射線科部長の上野惠子教授が出席し,フィルムレスPACS稼働までの経緯と運用の現況についてコメントした。
インフィニットテクノロジーは,韓国の医療システムベンダー「INFINITT Healthcare」の日本法人。INFINITT社は韓国国内のPACS市場ではトップシェア(70%)で,特に大学病院では90%以上のシェアを持つ。世界でも,アメリカ,ヨーロッパ,アジアなど,全世界で1600以上の施設に導入されている。日本市場には2004年に参入し,PACSと3Dワークステーションでこれまで300施設以上の実績がある。また,韓国内で東芝メディカルシステムズ(株)とジョイントベンチャーを設立(Toshiba-INFINITT Medical Systems:TIMS)し,CT,MRIの販売とサービスを行っているほか,東芝のCTにOEMでBAS(Brain Angio Subtraction)を提供。日本光電工業(株)とはOEM契約により統合画像情報システム「Dioram」が来年1月から発売されるなど,日本企業との連携も積極的に行っている。
代表取締役の趙顯眞(チョウヒョンジン)氏は「INFINITTは医療情報システムの専業メーカーとして,PACSを中心にワールドワイドで多くの実績を作っている。われわれのPACSは,放射線画像はもちろん,循環器動画像や歯科画像まで扱えるシームレスな環境をWebで構築し,ユーザーに最適な環境を提供できる。韓国でトップシェアとなったのは,将来を見越したロードマップに基づいてR&Dを続けたことと,ユーザーの要望に迅速に対応し最新の環境を提供できる体制を構築したことで,このポリシーの下に全世界でビジネスを展開している」と述べた。
INFINITT PACSは,2Dと3Dの画像,レポート,RISを統合したオールインワンのシステム構成が特長で,統一感のあるユーザーインターフェイス,Webベースのビューワでどこでもユーザーに最適な環境を構築できる。
今回,日本国内では初めての大学病院への採用事例として東京女子医科大学東医療センター(東京都荒川区,495床)を紹介した。同センターでは,完全フィルムレスで2009年6月から稼働した。モダリティは,CT2台,MRI,CR6台,内視鏡4台,超音波5台など計31台を接続。端末台数は読影端末15台,院内のクライアント147台。メインサーバを中心に放射線画像,循環器動画像,マンモグラフィ,歯科X線画像を一元管理する。サーバはメインストレージ(36TB)と同じ容量のオンラインバックアップストレージを備えて「止まらない」システムを構築した(RISはAJS(株)製)。
営業部長の森住隆浩氏は「サーバでは,1患者で3000枚以上になるthinスライスのCTデータも一元管理して,各端末で3D画像を作成し2D画像とシームレスに読影が可能だ。ユーザーはIDによって院内のどこの端末でも自分の環境を構築して画像を利用できる。ひとつのサーバにさまざまな画像データを統合しているが,動画像や歯科画像などユーザーの必要性に合わせ機能を切り分けてシステムを活用できるのが特長だ」と説明した。
放射線科部長として導入を進めた上野氏は,INFINITT PACSの導入のポイントを次のように述べた。
「東京女子医科大学東医療センターでは,PACS導入以前はすべてフィルム運用で年間1億円のフィルム代がかかっていた。電子画像管理加算の新設でフィルムレスへの検討を開始し,最終的にアメリカ,日本,INFINITTの3社のPACSを検討した。実際に3社の製品を並べて使い勝手を検討し投票で点数をつけたところ,高い評価を受けたのがINFINITT PACSだった。なじみのない韓国のメーカーであること,日本法人の規模が小さいことが気がかりだったが,私自身がRSNAなどで感じているレベルの高い韓国の大学病院で評価されているシステムということでINFINITT PACSを導入した。導入のメリットは,サーバが1本に集約され保守コストが抑えられること,放射線画像だけでなくすべての画像を管理するため診療へのプライオリティが上がり,リスク管理の重要度を院内により理解してもらえたことだ。3Dについては,作成の作業負担が技師に集中していたこともあって,必要な個人が自分で作れるシステムにした。稼働後,心配したトラブルもなくサポート体制も迅速で満足している。日本バージョンとしての要望も出しており,今後のバージョンアップにも期待したい」。 |