ザイオソフト(株)は10月31日(土),東京ステーションコンファレンスにおいて,「モーションイメージング研究会」を開催した。モーションイメージングは,従来の3D解析に時間軸を加えて動きを正確に把握することができる,同社が開発した新しい画像解析技術であり,臓器のスムーズな動きの再現や動きの数値化による機能の定量解析の評価が可能になると期待されている。本研究会では,「時間軸を加えた画像解析がもたらす可能性について」をテーマに,モーションイメージングの有用性と可能性などについて幅広い領域に関する発表が行われた。会場には約200名が来場し,活気にあふれた研究会となった。
同社代表取締役社長の松本和彦氏の挨拶に続いて行われた第一部の「冠動脈編」では,慶應義塾大学医学部放射線診断科教授の栗林幸夫氏が座長を務め,初めに同准教授の陣崎雅弘氏が「モーションイメージングによる心臓CTの画質向上」と題して講演した。陣崎氏は,心臓領域におけるモーションイメージングの可能性として,1)冠動脈の動きを追随して複数のデータから画像を再構成することによる冠動脈の描出能の向上,2)データ量を増やして画像再構成を行うことによる拡張期におけるノイズ低減と,それに伴う被ばくの低減を挙げ,本講演では特に2)についての検討結果を報告した。モーションイメージングでは理論上,従来使用していた静止画像の位相に加えて,その前後の位相の50%のデータを,心臓の動きを考慮して足し合わせることで画像を再構成している。陣崎氏は,これらを考慮してさまざまな考察を行った結果,ある一定の条件下では理論値通りのノイズ低減効果が得られると述べた。
愛媛大学医学部附属病院放射線科講師の東野 博氏は,「心臓四次元画像の歴史」と題して,世界でもいち早く心臓CT技術の開発に着手した同放射線科イメージングチームにおけるこれまでの取り組みと研究成果について述べた。その上で,心臓四次元CTではポンプ機能診断やMRIと比較した壁厚の測定の正当性が示されており,さらには局所壁運動についても左室造影とほぼ一致するとし,MRIなどと比べて低いCTの時間分解能についても,モーションイメージング技術によって大幅に向上していると評価した。
続いて行われた同放射線科の城戸輝仁氏の講演では,「心臓四次元画像の可能性」と題して,愛媛大学病院におけるモーションイメージング技術に関する具体的な検討結果が示された。CTでは現在,冠動脈狭窄の評価については有用性が認められているものの,心筋障害をより正確に診断するための心機能の評価については十分に行うことができない。そこで同院では,256列CTを用いて,心機能の評価にモーションイメージング技術がどこまで迫れるかについて,さまざまな検討が行われた。結果について城戸氏は,モーションイメージングでは心機能解析において,これまで以上に高精度な自動解析が可能であり,また,拡張機能障害の検出に必要な時相については解析範囲とR-R間隔についての検討が必要であるものの大きな可能性が期待できると述べ, 被ばく線量の低減やダイナミックスキャンなどの可能性についても展望した。
大阪大学大学院医学系研究科先進心血管治療学寄附講座准教授/徳洲会(野崎・名古屋・大垣)病院心臓センター長の角辻 暁氏は,「循環器診療におけるCTの使い方:現在と未来」と題し,冠動脈インターベンション治療を行う立場から見たCT画像の有用性について,豊富な症例を示しながら述べた。中でも特に有用な画像として,角辻氏はザイオソフト社のソフトウエア「zioTerm2009」に搭載されたSlab MIP画像を示しながら,日本発のCT画像や血管内超音波などの画像を用いた血管内治療の手法は近年,世界の多くの国で一般的となりつつあると紹介した。さらに,モーションイメージングの可能性として,ステント治療や左室壁運動の把握,より正確な血管領域の同定などへの期待を述べた。
第二部の「頭部胸腹部編」では,国立がんセンターがん予防・検診研究センターセンター長の森山紀之氏が座長を務め,初めに京都大学大学院医学研究科消化器内科学の辻 喜久氏が,「消化器画像診断における“時間軸”の役割」と題して,時間軸を取り入れた画像診断による消化器疾患の病態診断について述べた。膵疾患におけるPerfusion CTの有用性や,急性肝障害への時間軸画像の応用として肝血流評価などについての検討結果を示したほか,モーションイメージング技術への期待として,従来は確立した診断方法がなかった運動異常に起因する疾患(機能性胃腸症:FD,過敏性腸症候群:IBSなど)の新たな診断基準の作成や,小児など画像撮影時の静止が困難な症例におけるより高精度な画像作成への期待を述べた。
岩手医科大学先端医療研究センター教授の佐々木真理氏は,「脳神経領域における動態イメージングの現状と将来」と題し, DSAによる側副血行路の評価や,SPECTによる脳循環予備能の評価,CT Perfusion/MR Perfusionによる虚血ペナンブラの評価,認知症および無症候性虚血病変などにおける動態イメージングなどについて,それぞれの特徴や臨床試験における成果などについて概説した。その上で,特に従来は診断が困難だった認知症や無症候性虚血病変の診断に有用な技術革新として,さまざまな3Dアプリケーションの登場を挙げ,さらにはモーションイメージングの技術を用いることで,より正確な診断が可能になるとして,強い期待を述べた。
第二部の最後には,座長の森山氏が,「胸腹部領域における時間軸を伴う画像診断」と題して講演した。国産CTの開発の歴史から時間軸を伴う画像診断の意義,時間軸を伴うさまざまな画像診断,造影技術の進歩,画像診断機器の進歩とそれに伴う画像診断の変化,画像解析ソフトウエアの開発などについて画像を示しながら幅広く概説し,時間軸を取り入れた画像診断の臨床における有用性を確立することが重要であるとまとめた。
第三部の「特別講演」では,心臓画像クリニック飯田橋院長の寺島正浩氏が座長を務め, Cardiovascular Medicine, Stanford University, School of Medicin, Associate Professorの,Michael V. McConnell, M.D., MSEEが「The Future of Cardiovascular Imaging」と題して講演した。CT/MRIの進歩によって診断カテーテル法は心臓CT/MRIに置き換えられつつあると述べたほか,石灰化病変における心臓CTと心臓MRIの比較,3T MRIによるMRAの有用性などについて概説し,心臓イメージングの将来像について展望した。 |