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取材報告

2009

第37回日本磁気共鳴医学会大会 開催


■ 日本磁気共鳴医学会大会
■ 学術奨励賞(ポスター)の表彰
■ 第37回日本磁気共鳴医学会大会主催 市民公開講座「がんのMR画像診断と治療の進歩」
■ 株式会社AZE共催 イブニングセミナー3 「MRIによる3D, 4D volume reading活用術─Thin client systemでisotropic dataを使いこなす─」

吉川宏起大会長(駒澤大学医療健康科学部)
吉川宏起大会長
(駒澤大学医療健康科学部)

受付風景
受付風景

ポスター展示会場
ポスター展示会場

通路もポスター展示会場に
通路もポスター展示会場に

●機器展示

シーメンス旭メディテック
シーメンス旭メディテック

GEヘルスケア・ジャパン
GEヘルスケア・ジャパン

日立メディコ
日立メディコ

フィリップスエレクトロニクスジャパン
フィリップスエレクトロニクスジャパン

AZE
AZE

ザイオソフト
ザイオソフト

● シンポジウムY
「MRSの臨床応用と最新技術
〜MRS追加のタイミング〜」

座長:徳島大学・原田雅史,シーメンス旭メディテック・丸山克也
座長:徳島大学・原田雅史,
シーメンス旭メディテック・丸山克也

森田奈緒美氏(徳島大学)
森田奈緒美氏
(徳島大学)

磯辺智範氏(筑波大学)
磯辺智範氏
(筑波大学)

戸崎光宏氏(亀田メディカルセンター)
戸崎光宏氏
(亀田メディカルセンター)

富安もよこ氏(放射線医学総合研究所)
富安もよこ氏
(放射線医学総合研究所)

鶴田邦彦氏(磯部クリニック)
鶴田邦彦氏
(磯部クリニック)

竹内麻由美氏(徳島大学)
竹内麻由美氏
(徳島大学)

平田智嗣氏(日立製作所中央研究所)
平田智嗣氏
(日立製作所中央研究所)

指定発言:平井俊範氏(熊本大学)
指定発言:平井俊範氏
(熊本大学)

第1回MRSプロジェクト会議会場 代表:原田雅史氏(徳島大学)
第1回MRSプロジェクト会議会場
代表:原田雅史氏
(徳島大学)

 2009年10月1日(木)〜3日(土)まで,第37回日本磁気共鳴医学会大会が吉川宏起大会長(駒澤大学医療健康科学部)のもと,パンパシフィック横浜ベイホテル東急にて開催された。今学会のテーマは,「文明開化の挑戦─マクロからミクロ〜そして機能・代謝へ─」。このテーマに基づいた特別講演やシンポジウムなどが多数企画された。

 今回はコンパクトな会場スペースに加えて,ポスター演題が当初の予定の2倍以上(223題)に増えたため通路にも展示されたことで,人口密度の高い大会となっていた。反面,賑やかで一体感のある空間が生まれていたとも言える。一般演題は577題と,これも予想以上の数になったとのことで,4つの会場をフルに使って口演が行われた。

 1日目の1日(木)14時からは,「シンポジウムT:肝特異性造影剤温故知新」(座長:慶應義塾大学・谷本伸弘氏,大阪暁明館病院・廣橋伸治氏)が行われた。Gd-EOB-DTPA(プリモビスト)は2008年1月に大きな期待の中で認可され,昨年の本学会ではGd-EOB-DTPAの臨床的検討の発表が中心を占めていた。肝細胞がん(HCC)の多血性病変の評価や,転移小病巣の検出,乏血性早期肝がんの早期発見,FNHの性状診断などにおけるMRIの診断体系が変わる可能性があるとして,普及に伴う臨床的有用性の報告が注目を集めてきた。しかし,2年近くが経過した現在では,その臨床的メリットとともに,いくつかの問題点も指摘されるようになってきた。一方,従来からの肝特異性造影剤であるSPIOは,Gd-EOB-DTPAや,SPIOと同じくKupffer細胞に取り込まれる超音波造影剤「ソナゾイド」の登場で存在意義が問われているが,血液プール造影剤としての独自の有用性が認められていることから,これらの造影剤をどのように併用または使い分けして臨床に生かすかが重要となってくる。

 本シンポジウムでは,Gd-EOB-DTPAの臨床報告が3題,SPIOの臨床報告が3題発表され,最後に,信州大学の角谷眞澄氏が「one stop shoppingは実現するか?」と題して総括を述べた。角谷氏は,検討が進むにつれて明らかになってきたGd-EOB-DTPAの問題点として,造影早期では投与量が少ないこと,造影後期では平衡相が存在せず海綿状血管腫の診断能が低下すること,肝細胞造影相では肝機能低下例での評価,高信号を呈する中分化型肝細胞がんの評価などを挙げ,いままで構築してきた造影MRIの画像診断学を改めて確認し,SPIOや単純MRIの再認識も含めて,温故知新の重要性を指摘した。

● シンポジウムT 肝特異性造影剤温故知新
座長:慶應義塾大学・谷本伸弘氏     大阪暁明館病院・廣橋伸治氏
座長:慶應義塾大学・谷本伸弘氏
大阪暁明館病院・廣橋伸治氏
会場全景
会場全景
「早期肝細胞癌診断におけるGd-EOB-DTPA造影MRIの有用性」佐野勝廣(山梨大学)
「早期肝細胞癌診断におけるGd-EOB-DTPA造影MRIの有用性」
佐野勝廣(山梨大学)
「EOB・プリモビストの臨床的インパクト」岡田真広(近畿大学)
「EOB・プリモビストの
臨床的インパクト」
岡田真広(近畿大学)
「動注CTにて多血性fociを有する乏血性肝細胞性結節と診断された結節のEOB造影MRI肝細胞相における検出能」小林 聡(金沢大学)
「動注CTにて多血性fociを有する乏血性肝細胞性結節と診断された結節のEOB造影MRI肝細胞相における検出能」
小林 聡(金沢大学)
「SPIO-MRIによる肝機能/肝障害度の評価」西江昭弘(九州大学)
「SPIO-MRIによる肝機能/肝障害度の評価」
西江昭弘(九州大学)
「SPIOの有用性と限界を再考する(肝内病変から肝外病変まで)」丸上永晃(奈良県立医科大学附属病院)
「SPIOの有用性と限界を再考する(肝内病変から肝外病変まで)」
丸上永晃(奈良県立医科大学附属病院)
「SPIOによる肝腫瘤性病変の診断」小林 茂(自治医科大学)
「SPIOによる肝腫瘤性病変の診断」
小林 茂(自治医科大学)
「肝特異性造影剤温故知新:one stop shoppingは実現するか?」角谷眞澄(信州大学)
「肝特異性造影剤温故知新:one stop shoppingは実現するか?」
角谷眞澄(信州大学)

 2日目には,特別講演「次世代疾患オミックスとシステム・パソロジー」(田中 博氏・東京医科歯科大学)や,日本分子イメージング学会の協力によるシンポジウムV「分子イメージング」,シンポジウムW「高磁場MRの未来と医療政策」,シンポジウムX「CTとの棲み分け」などが行われた。

 最終日の3日目には,シンポジウムY「MRSの臨床応用と最新技術〜MRS追加のタイミング〜」(座長:徳島大学・原田雅史氏,シーメンス旭メディテック・丸山克也氏)が企画された。本シンポジウムは,2009年4月よりスタートした同学会のプロジェクト研究「臨床proton MR Spectroscopyの有用性検討のための症例データベース構築と標準的測定方法による診断基準の検討(略称:MRSプロジェクト)」を機に,現状における領域別MRSの臨床応用の実際を報告するものであった。

 最初に,MRSプロジェクト代表の原田氏から,これまでの経緯が説明された。2005年,放射線科専門医会WGに「proton MRS臨床有用性検討ワーキング」を発足,2007年に「proton MRSコンセンサスガイドライン」を発表,同年スタディグループ「MRSの有用性と標準化検討グループ」を発足。2008年に分科会として「LCModelユーザーミーティング」を発足させ,2009年に「proton MRSコンセンサスガイドライン2009」(日本磁気共鳴医学会サイトで公開)を発表。そして,上記のMRSプロジェクト発足に至った。今回のMRSプロジェクトは,スタディグループの参加者を中心に,proton MRSのデータベースを構築し,多施設からの臨床症例を蓄積して診断基準の作成を試み,最終的にはproton MRSの普及につなげることを目的としている(サーバは徳島大学に設定)。4年間で1000例を目標にし,最終的には日本磁気共鳴医学会のサーバに移行する予定とのことだ。

 本シンポジウムでは座長の原田氏より各演者に対し,臨床検査でMRSを追加するタイミングのGrade分類を行う課題が出された(GradeT:必ず追加した方が良い場合や症例,GradeU:追加すると有効なことがある場合や症例,GradeV:追加しても良いが補助的な情報に留まる場合や症例)。米国ペンシルベニア大学病院(HUP)での頭部の臨床応用経験を発表した森田奈緒美氏(徳島大学)は,metaとGBMとの鑑別や,造影効果に乏しい腫瘍の良悪性鑑別,治療後の再発か壊死かの評価についてGradeTとした。同じく頭部への臨床応用について磯辺智範氏(筑波大学)は,脳腫瘍,放射線壊死と再発の鑑別,放射線治療の効果判定,高乳酸血症,悪性リンパ腫とトキソプラズマ症の鑑別,髄膜腫とhemangiopercytomaとの鑑別などをGradeTに挙げた。乳腺領域について戸崎光宏氏は,GradeTに術前化学療法症例を,GradeUに腫瘤の良悪性の鑑別を挙げた。肝臓について報告した富安もよこ氏(放射線医学総合研究所)は,研究段階のglycoCEST, 31P MRS,13C MRS,超偏極13C MRSを紹介し,現時点では1H MRSのみをGradeUとした。前立腺では鶴田邦彦氏(磯部クリニック)が,生検でも腫瘍の正確な悪性度が不明で治療方針が決まらないときをGradeTに,PSAが高いが腫瘍の局在がはっきりしないときをGradeUとした。女性骨盤については竹内麻由美氏(徳島大学)が,子宮筋層病変でT2WIにて低信号を示さない症例,子宮内腔病変で生検で診断困難な症例をGradeTに挙げた。

 最新技術に関する発表は2題。シーメンスの丸山克也氏が,MEGA & BASING(水抑制,脂肪抑制,任意のケミカルシフトでの代謝物質の抑制)について,日立製作所中央研究所の平田智嗣氏が,主に頭部計測時の高速CSIシーケンスであるEPCSIについて報告した。

 最後に熊本大学の平井俊範氏から,脳腫瘍MRSの発展に向けて,MRS収集法の確立,MRS適応の確立,簡便な評価法の確立が必要との指定発言があった。MRSは,増強効果が乏しく高灌流を示さない病変や,増強されるが低い灌流病変には非常に有用であり,簡単にすぐわかるMRSが臨床では求められていると述べた。

 なお,本シンポジウムに先立つ1日目の夜には,上記の「LCModelユーザーミーティング」および「第1回MRSプロジェクト会議」がハーバーラウンジにて開催された(次回の会議は2010年3月6日に開催予定)。参加者は予想を上回る80名以上にのぼり,臨床MRSへの関心の高まりが感じられた。

 次回の第38回日本磁気共鳴医学会大会は2010年9月30日(木)〜10月2日(土)の3日間,巨瀬勝美大会長(筑波大学)のもと,つくば国際会議場(エポルカつくば)にて開催される予定である(ホームページ 10月中旬公開予定)。


学術奨励賞(ポスター)の表彰

吉川大会長より賞状と記念品を授与(小西淳也氏)
吉川大会長より
賞状と記念品を授与
(小西淳也氏)

 第37回日本磁気共鳴医学会大会のポスター部門において,優秀論文が6題選出され,3日の閉会式にて表彰された。受賞ポスターは以下のとおり。

1. <P-1-5>
Cerebral amyloid angiopathyにおける脳白質病変に関する検討
小西淳也(神戸大学)

2. <P-1-89>
q-space imagingを用いたmyelinの可視化
〜脱髄疾患モデルによる検証
疋島啓吾(実験動物中央研究所)

3. <P-1-1>
Parkinson病診断におけるNeuromelanin imagingの有用性
吉澤 寿(荏原病院)

4. <P-1-21>
Diffusion-weighted Line-scan Echo-planar Spectroscopic Imaging
による代謝物拡散計測の精度向上
尾藤良孝(日立製作所中央研究所)

5. <P-1-92>
q-space imagingを用いた脊髄再生メカニズムの解明
〜再生医療への応用〜
藤吉兼浩(慶應義塾大学)

6. <P-1-110>
高磁場Overhauser-enhanced MRI装置の開発
長沼辰弥(九州大学)


第37回日本磁気共鳴医学会大会主催
市民公開講座「がんのMR画像診断と治療の進歩」開催

開会の挨拶をする吉川宏起大会長
開会の挨拶をする
吉川宏起大会長

座長:南 学氏
座長:南 学氏

川島博子氏
川島博子氏

今井 裕氏
今井 裕氏

坂田 優氏
坂田 優氏

 第37回日本磁気共鳴医学会大会最終日の10月3日(土)午後2時から,大会が主催する市民公開講座がパンパシフィック横浜ベイホテル東急にて開催された。テーマは,「がんのMR画像診断と治療の進歩」。司会は,南 学氏(筑波大学臨床医学系放射線医学教室教授)と大会長の吉川宏起氏(駒澤大学医療健康科学部教授)が務め,乳がん,腹部がん,がん化学療法のエキスパートによる講演が3題企画された。

 「乳がんのMR画像診断の進歩」と題して講演した川島博子氏(金沢大学医薬保健研究域保健学科系准教授)は,乳腺領域の画像診断は非触知の石灰化など,早期の乳がんを見つけることが可能であり,マンモグラフィや超音波,そして最近ではMRIそれぞれの特徴を生かした検査の選択が必要と述べた。普及し始めているMRマンモグラフィは,より小さな乳がんや,見逃しがちな対側の乳がん,周囲への浸潤などを検出できる優れた検査法である。また,MRIによる乳がん検診についても言及し,適切な画像診断による早期発見・早期治療の重要性を訴えた。

 今井 裕氏(東海大学医学部基盤診療学系画像診断学教授)は「腹部がんのMR画像診断の進歩」をテーマに講演。被ばくのないMRI検査は腹部がんの診断に多くのメリットがあるとして,最近の技術的進歩を中心に解説した。特に,空間分解能の向上や,新しい造影剤の開発と臨床応用が腹部がん(特に肝がん)の検出に貢献していることを紹介。また,拡散強調画像の腹部または全身への応用の有用性についても述べた。

 最後に,「がん化学療法の実際」と題して,坂田 優氏(青森県三沢市立三沢病院病院長)が,全国から患者が集まる三沢病院での化学療法によるがんとの戦いについて報告した。3人に1人ががんで亡くなる時代において,治療法としては手術,放射線治療,化学療法のいずれか,または併用が実施される。化学療法は必ず副作用を伴うことが宿命だが,明らかに生存期間が延長したり,治癒するがんも出始めている。最近では分子標的薬などの新しい薬剤の開発など,進歩が著しいという。がんの化学療法がめざすクオリティ・オブ・ライフ(QOL)とは,社会生活への復帰,家族との生活への復帰にあるとし,病名を告知して疾病と治療への理解と協力を得ることが重要と述べた。厳しい状況下にある第一線の公立病院の医師の信念と覚悟に圧倒された講演だった。


●問い合わせ先
日本磁気共鳴医学会 事務局
TEL 03-3443-8622 FAX 03-3443-8733
http://www.jsmrm.jp/


イブニングセミナー3 「MRIによる3D, 4D volume reading活用術
─Thin client systemでisotropic dataを使いこなす─」開催

第37回日本磁気共鳴医学会大会/(株)AZE 共催

会場風景
会場風景

座長:佐久間 肇氏
座長:佐久間 肇氏

演者:片平和博氏
演者:片平和博氏

 横浜市みなとみらいで開催された第37回日本磁気共鳴医学会大会の初日である10月1日(木)の午後6時より,AZE社が共催するイブニングセミナーが行われた。三重大学医学部附属病院画像診断科の佐久間肇氏を座長に迎え,熊本中央病院放射線科の片平和博氏が「MRIによる3D, 4D volume reading活用術─Thin client systemでisotropic dataを使いこなす─」をテーマに講演した。

 急速に進歩した多列CTや高磁場MRIなどにより,高分解能なボリュームデータが臨床現場で扱われるようになってきた。読影に際しては,これらのボリュームデータをいつでも,どこでも,自在に扱えるようなネットワーク化されたThin Client Systemの有用性が認識され,注目されている。Thin Client Systemとは,サーバ(WS)に保存したthin slice dataをネットワーク下にある読影端末やHISなどの端末上で三次元画像の再構成・閲覧を自由に行えるシステム。画像処理はすべてサーバ側で行われ,端末には結果画像だけが配信されることで負荷はほとんどかからず,ユビキタスな読影・参照環境が構築できる。Thin Client SystemであるAZE VirtualPlace雷神は,複数ユーザーが同時に観察可能で,画像閲覧だけでなく解析も行えるなど,優れた特長が評価されている。

 片平氏は今回,AZE VirtualPlace雷神を用いたvolume readingのメリットを,sliding MIP法を駆使した心臓MRIをはじめ,腹部領域,泌尿器領域,脊椎,関節・四肢など幅広い分野における豊富な症例画像を提示しつつ力説した。また,3D読影から4D読影へ,そして,3D-MRAに時相情報を付加し,自由な断面で読影する方法も提案した。


●問い合わせ先
株式会社AZE
TEL 03-3212-7721 FAX 03-3212-7722
http://www.aze.co.jp/