持田シーメンスメディカルシステム(株)は9月29日(火),同本社ビル1階のシーメンスフォーラム(東京・品川)において,「女性に優しい,新しい乳がん検診〜超音波自動ブレストボリュームスキャナは日本の乳がん検診を変えられるか」と題するプレス説明会を開催した。
超音波自動ブレストボリュームスキャナABVS(Automated Breast Volume Scanner)は,ACUSON S2000と併せてACUSON S2000 ABVSとして今年5月から販売が開始されたもので,スタンド,アーム,タッチパネル,14MHzのトランスデューサーで構成されており,約1分間の自動スキャンによって,15.4cm×16.8cmという広範囲のボリュームデータを取得することができる。操作は,必要な範囲設定を行ってからスキャンボタンを押すだけときわめて簡単で,特別なスキルが不要なほか,両側乳房を約10分で撮影できるため,従来に比べて検査時間の大幅な短縮が可能である。また,得られたデータはアイソトロピックなボリュームデータであるため,再現性が高く,従来は困難だったコロナル断面の再構成が可能なため,術前の治療計画などにも有用性が高い。
プレス説明会では,はじめに同社代表取締役CEO会長のクロッツ・ホルガー氏が挨拶に立ち,ABVSによって,従来の超音波装置では困難な新しい手法による検診が可能になるとの期待を述べた。また,マーケティング本部本部長の大場拓也氏が,ABVSは現在の乳がん検診が抱える課題を解決し,乳がん検診の仕組みやワークフロー,インフラストラクチャーをドラスティックに変える可能性があると展望した。
続いて行われた招待講演では,ウィメンズ・ウェルネス銀座クリニック院長の対馬ルリ子氏が,「ここが問題! 日本の乳がん検診」と題して,日本の乳がん検診の現状について詳述した。乳がん患者が増加している現状や有用と思われる検診方法などに加えて,低い検診受診率,マンパワー不足,超音波による乳がん検査に対する受診者の認知度の低さといった課題についても幅広く紹介した上で,マンモグラフィと超音波診断を併用することで乳がん検出率の向上が期待できるため,年代,リスクなどにより適切な検診を受けることが重要であると述べた。
特別講演では,聖マリアンナ医科大学放射線医学講座教授/同大学付属研究所ブレスト&イメージング先端医療センター付属クリニック放射線科の中島康雄氏が,「自動ブレストボリュームスキャナは日本の乳がん検診を変えられるか?」と題して,ABVSの有用性について述べた。ABVSは現在,世界で約20台が稼働し,日本では今月出荷が開始されたばかりだが,中島氏は,2008年に個人輸入でABVSを導入し,国内で唯一使用経験がある。講演では,乳がんの種類や,年代による乳房の特性などについて説明した上で,石灰化病変に有用性の高いマンモグラフィと,腫瘤性病変に有用性の高い超音波診断装置のそれぞれの特長や,乳がん検診の課題などについて紹介。さらに,ABVSのメリットとして,従来の超音波検査で術者が撮像中に一人で行っていた撮像,画像の選択,読影というワークフローのうち,画像の選択と読影を独立させて専門医が行うことが可能になったことを挙げ,CTやMRIと同様の画像診断が可能になり,CTやMRIとの融合画像の構築など,臨床の新たな展開が期待できると展望した。
このほか,本セミナーではABVSの機器説明と併せて,実際の撮像方法のデモンストレーションが行われた。 |