米国医療機器・IVD工業会(AMDD)は7月24日(金),帝国ホテル(東京・千代田区)において,メディア向けのフォーラム「医療制度と医療機器の価格─各国における価格差の要因を中心に─」を開催した。AMDDは,医療機器や体外診断用医薬品(IVD)を手がける米国企業の日本法人などで構成される。今年4月に設立され,その前身は在日米国商工会議所の医療機器・IVD小委員会である。デバイスラグの解消と保険償還価格の適正化を目的に,2002年から「『先進医療技術の役割』啓発キャンペーン」を展開してきた。今回のフォーラムもその活動の一環であり,海外との間に大きな開きがある価格差について,(株)三菱総合研究所(三菱総研)に委託して実施した調査結果の発表など,報道関係者を対象に講演が行われた。
冒頭,挨拶に立ったAMDD保険委員会委員長の田村 誠氏は,先進医療技術について,デバイスラグは解消されつつあるが,海外で提供されている医療機器の約半数が価格など経済的要因により日本に導入されていないと,日本市場の現状を説明した。
この挨拶に続き,産業医科大学医学部教授の松田晋哉氏が,「医療制度の国際比較と医療機器の位置づけ」と題し,特別講演を行った。松田氏は,フランス,英国,米国などの医療制度の仕組みを解説。地域医療計画における医療機器の配備について,日本とフランスを比較し,規制によりMRIの追加やPETの新規導入ができない施設の事例などを紹介した。このほか,医療機器の承認,保険収載について,フランスの高等保険機構(HAS)の仕組みを説明した。さらにまとめとして,医療制度は歴史的,文化的,人口学的,疫学的な見地からの分析が重要であるとした上で,日本は医療費を増やすべきであり,DPCなどのデータを国民に示すとともに,医療の標準化を図っていくことが求められると述べた。
この後,調査報告として,三菱総研研究員の柴田俊明氏が,「医療機器のコスト構造に関する国際比較調査の結果報告」を発表した。この調査は,2008年12月〜2009年2月に行われ,12社での回答をまとめたものである。コスト構造を欧州と比較した場合,ステントなど心血管系の医療機器・医療材料は2.2倍,人口関節など整形外科系のそれは2.5倍も高コストであるという結果が出た。また,その内容を見ると,営業・マーケティング費用(5〜6倍),治験・薬事・品質管理費用(20倍),預託在庫額(10倍)が欧州よりも高くなっている。柴田氏は,これらのデータを示しつつ,高コスト構造の要因として,薬事審査期間が長く,高品質への要求が高いこと,医療機関が多く医師が分散し,症例数の集約度が低いこと,医療機関が預託在庫を多く持つ日本独自の商慣習が影響していると述べた。
この報告を受けて,田村氏は,このフォーラムの目的は,薬事制度や,医療提供体制の変更を求めるものではないと強調した上で,質の高い製品をタイムリーに出すことが企業の使命であり,それができるように努力していきたいとまとめた。 |