日本超音波医学会第82回学術集会が5月22日(金)〜24日(日)の3日間,東京国際フォーラムで開催された。会長は,京都大学大学院医学研究科教授の椎名 毅氏。
超音波診断装置は,非侵襲性,リアルタイム性,簡便性が特長であり,近年,プローブや信号処理技術の進歩により,活用の場が大きな広がりを見せている。診断と治療の融合はもちろん,他のモダリティとの技術的な融合も視野に入れた開発が進められており,新しい“Innovation”への期待を込めて,「超音波診断・治療におけるInnovationとFusion」がメインテーマとなった。それに伴い,本学術集会では,光音響イメージングと組織弾性イメージングをテーマとした招待講演や,異分野融合および診断・治療支援に関するシンポジウムなどが行われた。また,その他のシンポジウムおよびパネルディスカッションでは,3Dの使い方,造影剤,精度とアーチファクト,専門医と検査士の育成問題といった領域横断的な12の共通テーマが設けられたほか,領域別の19テーマが設けられ,超音波医学の基礎から最先端分野まで幅広く網羅できる内容となった。
23日に行われた会長講演では,椎名氏が,「音で触れる―Elasticity Imagingの開発の道のりと展望」と題して,組織弾性イメージングの原理や有用性などについて述べた。1990年代には,組織弾性イメージングの研究が世界中で進められていたが,椎名氏らを中心とする筑波大学と日立メディコの共同研究グループがいち早く実用化に成功し,2003年に世界に先駆けて発表した。講演で椎名氏は,組織弾性イメージングの主な有用性として,組織診断が可能なため早期診断ができる,組織型による鑑別診断が可能,硬さの情報を利用したがんや動脈硬化,肝硬変の診断が可能,などを挙げた。また,さらなる可能性として,がんの治療効果判定や,見かけ上組織が硬くなったような状態になる心筋梗塞の診断への応用などが検討されていると述べた。さらに,現在実用化されている組織弾性イメージングの2大手法としてStatic methodとDynamic methodを挙げ,それらの特徴について詳述した。
このほか,機器展示会場においては,フロンティアテクノロジーやライブセッションのコーナーが設けられ,最新の超音波機器の機能や使い方を実感できる多彩な発表が行われた。
次回の第83回学術集会は,近畿大学消化器内科の工藤正俊氏が会長を務め,2010年5月29日(土)〜31日(月)の3日間,京都国際会議場にて開催される予定である。 |