富士通(株)は,5月14日(木)と15日(金)の2日間,東京国際フォーラム(千代田区)において,「富士通フォーラム2009」を開催した。
毎年同フォーラムで行われる医療特別セミナー「富士通病院経営戦略フォーラム」は今年で11回目を迎え,「医療再生―病院経営を救う道を考える」をテーマに14日午後に行われた。総合司会を東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医療経済学分野教授の川渕孝一氏が務め,赤穂市民病院名誉院長の邉見公雄氏が,「生命(いのち)輝かそう日本の医療人」と題して基調講演を行った。邉見氏は,中央社会保険医療協議会(中医協)委員として携わった2006年度と2008年度の診療報酬改定の経緯を述べた。また2010年度の改定について,DPCでは精神科医療と救急医療をどう評価するかが残された大きな課題だと述べたほか,廃止が予定されている調整係数について,新しい機能評価係数に関する基本的な考え方を説明した。このほか,社会保障国民会議の最終報告や日本病院団体協議会がまとめた「医療・介護提供体制および診療報酬体系のあり方について」の概要などを述べた。
基調講演に続き,4題の講演が行われた。諏訪赤十字病院院長の小口寿夫氏は,赴任後短期間で赤字から黒字化を達成するまでの取り組みを紹介。積極的な経営改革と患者中心の医療の徹底や,病院祭をはじめ,職員の活力を引き出す取り組みを同時に行ったことが経営改善につながったと述べた。徳島県病院局徳島県病院事業管理者の塩谷泰一氏は,「自治体病院はどこへ行く」と題して講演。財団法人操風会岡山旭東病院院長の土井章弘氏は,病院経営の基盤は,経営理念に基づく職員づくりと地域との交流づくりであると述べ,同院の取り組みを紹介した。医療法人社団滉志会副理事長/内閣府・規制改革会議医療タスクフォース専門委員の阿曽沼元博氏は,「病院再興のマーケティング―地域チーム医療」と題して講演した。阿曽沼氏は,病院には企業と異なる特殊性があるために,経営が難しい部分があるとし,医療機関経営には人材獲得力,組織変革力,営業・広報力,実行・資金力が求められると述べた。また,地域チーム医療には,地域中核医療機関が各地域にあり,それを地域全体でサポートする仕組みづくりが必要だと述べた。
また講演後には,演者らが壇上に並び,パネルディスカッションが行われた。総合司会の川渕氏がコーディネーターを務め,医療制度の問題点や経営改善ノウハウなどについて活発な議論が行われた。
同日午前には,医療ソリューションセミナーとして,旭川赤十字病院副院長の牧野憲一氏による「旭川における北海道最大規模の地域連携」と題した講演が行われた。地域医療支援病院である旭川赤十字病院では,2008年4月に富士通の地域連携ネットワークシステム「HOPE/地域連携」を導入し,連携先の医療機関に電子カルテシステム上の診療情報やPACSの画像データを公開している。牧野氏は,同システムを利用することで,患者情報を連携先の医療機関に確実に提供でき,診療情報提供書作成の負担軽減も図れるとメリットを述べた。
また,展示ホールの医療コーナーには, HOPE/地域連携や2008年7月に発売された電子カルテソリューション「HOPE/EGMAIN-GX」*が展示された。コーナー中央には,連携先医療機関と中核病院での使用をイメージして端末を設置し,デモンストレーションで診療所からの紹介状作成や情報の参照,中核病院における情報公開の流れを操作を説明しながら紹介した。
*4月24日に,過去の診療パターンなどを自動的にデータベース化し,簡単にオーダ発行ができる機能などを搭載した新バージョン「HOPE/EGMAIN-GX V2」が発売された。
【展示ホール:医療コーナー】 |
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医療コーナー全景 |
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地域医療連携をイメージした展示
一番左が診療所,中央が中核病院の地域連携室におけるHOPE/地域連携の端末。一番右は,中核病院の診察室をイメージして,電子カルテソリューション「HOPE/EGMAIN-GX」が展示された。HOPE/地域連携は,公開専用のサーバを用いており,外部から直接電子カルテシステムのデータに接続していない。また,サーバに置くコピー情報は,患者さんの同意に基づき任意に選択することができるなど,セキュリティやプライバシーへの配慮がされている。連携先の医療機関は,インターネットに接続した端末があれば,費用負担なくシステムの利用が可能である。 |
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