2009年2月7日(土),8日(日)に長崎新聞文化ホール(長崎県長崎市)で開催された「第18回日本乳癌画像研究会」(当番世話人:磯本一郎・長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座放射線診断治療学)において,GE横河メディカルシステム社が「ブレストトモシンセシスの臨床研究」と題するランチョンセミナーを共催した。
8日に行われたランチョンセミナーでは,国立病院機構名古屋医療センターの遠藤登喜子氏が座長を務め,乳房の画像診断分野の世界的権威であるトロント大学ブレストイメージング部長であるロベルタ・ジャン(Roberta A.Jong)博士が,世界最先端の乳房画像診断技術「ブレストトモシンセシス」*について講演した。
デジタルブレストトモシンセシス(DBT)とは,1回の撮影で検査部位に異なる角度でX線を連続パルス照射し,撮影後に画像を再構成することで,任意の複数断層画像を一度に得る技術である。通常のマンモグラフィ画像は二次元画像で読影するのに対し,DBTでは奥行き方向のデータも収集して薄いスライス厚に再構成して観察することにより,通常の二次元画像の課題であった乳腺の重なりを解消し,より精度の高い情報を得ることが可能となる(図1)。
図1 デジタルブレストトモシンセシス(DBT) |
|
(左)通常のマンモグラフィでの撮影イメージ (右)ブレストトモシンセシスでの撮影イメージ |
ジャン博士はDBT機能のクリニカル評価について,「一般的にマンモグラフィにおいては,偽陰性は20%と言われている。この原因としては,高密度乳腺(Dense Breast)の場合の高信号に疾患部分が重なっていた場合に見逃している可能性が考えられる。DBTにより,薄いスライス厚で画像を観察することにより,高密度乳腺における診断能が上がると考えられる」とした。25症例で2D マンモグラフィとDBTの臨床評価を行った結果,DBTの検出能の方が高いことが統計的に実証されたと述べた。また,2D画像において病変と考えられていたものについてDBTを用いて再検証することで,病変ではないことが確認された例もあるという。
ジャン博士は,「今後,臨床のスクリーニングで用いる場合の問題点としては,情報量が多くなることによる読影医師への負担が考えられ,読影の環境についての検討も必要となってくる。トモシンセシスは非常に注目されている新しい技術であり,早期の製品化を期待する声も多いが,撮影・読影・画像管理などトータルワークフローの確立やさらなる臨床データとエビデンスの整備などの課題を解決すべく慎重に臨床評価を進めている」と述べた。
*GE社のデジタルブレストトモシンセシス(DBT)は薬事未承認で,現時点での製品化は未定。GE社のDBTの特長は以下のとおりである。
(1) |
2Dと同じピクセルサイズでDBTのデータを取得することにより,2D同様の高精細画像が得られる。 |
(2) |
撮影角度が40度で広いため,隣接した物体でも薄いスライス厚で観察できる。 |
(3) |
間接変換フラットパネルの利点である「低線量域での高いDQE(detective quantum efficiency:量子検出効率)」の効果により,2D撮影時と同等以下の被ばくでの撮影が実現できる。 |
|