東芝メディカルシステムズ(株)は11月9日,世界貿易センタービル(東京・港区)において「商品戦略発表会」を行った。従来同社は,会社概況と経営戦略,中期計画の目標などを“経営戦略発表会”で報告してきたが,今回はトータルソリューションを構成する"製品"に関しての"戦略"に重点を置いた報告となった。
冒頭,桂田昌生社長(写真1)は,日本および世界のマーケットの厳しい状況の中,今年度4000億円の売上高と,今後10%台の成長をめざすと表明。主要事業戦略として,(1)テクノロジーリーダーシップ,(2)トータルソリューションの提供,(3)グローバル事業拡大,(4)クリニカルバリューの最大化が紹介された。商品戦略では同社の主要モダリティであるCT,MRI,US,X-ray,ヘルスケアITの各ラインナップが紹介された。なかでも,製品化が注目されていた256列のCT装置を「Area
Detecter CT」として紹介した。1回転(1スキャン)で心臓や頭部をフルカバーし,リアルタイムに4D画像を表示できる。従来の64列CTの診断過程を飛び越えた新しい診断能・ワークフローを可能にする"Real
Time Volume Imaging System"であるとした。またさらに,ベッドの移動がないため,64列CTの被曝線量の1/4となる被曝低減を実現しているとした。今後,RSNA2007で発表し,来春国内で販売を開始する予定であると述べた。
また,当日最も重点を置いて発表されたのが,64列マルチスライスCT「Aquilion64」を用いた心臓冠動脈狭窄度診断に関して,従来のX線血管撮影診断システムによる心臓カテーテル検査との比較研究を,世界7か国9サイトの先進医療機関が参加して実施する国際的多施設臨床試験(グローバル・マルチセンタースタディ)「CorE64」におけるメインスタディの最終報告の紹介であった。「CorE64」の最終報告は,11月4〜7日にかけて米国フロリダ州オークランドで開催された第80回米国心臓協会(AHA)学術集会の最も注目されるセッションである"Late-Breaking
Clinical Trials"において,米国Johns Hopkins大学病院より報告された。トライアルでは,316のケースで統一的な撮影条件のもと0.5mmスライス厚でCT冠動脈撮影(CTCA)を実施し,それから30日以内に心カテ検査を行い,技術的・手続的な問題のあるケースを除き,最終的に291のケースの検査結果の解析が用いられた。そして,心カテ検査で50%以上の狭窄ありと診断されたケースに対して,CTCAでも同様に診断された場合を正診とし,患者単位で診断精度(accuracy)が測定された。その結果,感度(sensitivity)=85%,特異度(specificity)=90%,陽性的中率(PPV)=91%,陰性的中率=83%と非常に良好な成績が得られた。さらに,ROC解析が行われ,CTCAのAUC(ROCカーブ下面積)値=0.93という結果が得られた。これにより,CTCAが心カテ検査と同等の診断能を持つことが示された。商品戦略発表会の会場では,調査研究者であるDr.
Joao Lima(Johns Hopkins大学),新沼廣幸氏(岩手医科大学内学第二講座),吉岡邦浩氏(岩手医科大学放射線医学講座)の学会発表直後のメッセージがビデオで流れ,「CorE64」の最終報告でCTCAの有用性が裏づけられたと述べた。今後「CorE64」では,このメインスタディ最終報告の論文化,エビデンス化をはじめ,さらにサブスタディを継続して進めていく予定である。 |