医療放射線防護連絡協議会は9月13日(木),タワーホール船堀(東京・江戸川区)において,「第25回医療放射線の安全利用フォーラム」を開催した。司会・進行を総務理事の菊地 透氏(自治医科大学RIセンター)(写真1)が務め,「新しい放射線医療技術に伴う放射線防護のあり方」をテーマに,講演やパネル討論が行われた。
講演に先立ち,日本大学医学部放射線医学教室の田中良明氏(写真2)が,「本フォーラムを通じて放射線防護に関する問題点を掘り下げ,明日からの医療現場に役立ててほしい」と開会の挨拶をした。
基調講演では田中氏が座長を務め, 2題の発表が行われた。東京大学医学部附属病院放射線部副部長の増本智彦氏(写真3)は,「新しい放射線診療の状況と展望」と題して,CT,IVR,イメージガイド下放射線治療の現状と将来展望について講演した。マルチスライスCTの登場で広範囲を容易に撮影できるようになったことにより,過剰な検査で被曝が増加する可能性があると指摘した。また,イメージガイド下放射線治療の精度を高める方法として,病変部に埋め込んだ金属マーカーをX線透視により追尾し照射する動体追跡照射と赤外線カメラ,X線透視により呼吸性移動を監視しながら照射する呼吸同期照射を紹介。複数の手法を組み合わせることにより,治療成績の向上に寄与する高精度な放射線治療が実現されることを期待すると述べた。
国立保健医療科学院の山口一郎氏(写真4)は「放射線医療技術の進展と放射線安全規制」と題して講演。2007年4月に厚生労働省医政局より発出された通知,「複数のエックス線管と複数の高電圧発生装置を搭載するエックス線装置の安全使用について」を説明した。このほか,新しい放射線診療技術を導入するためのルール整備について述べた中で,放射化特性を低く抑えたコンクリートを先端医療施設に適用した事例を紹介。施設解体後の廃棄まで考えて建材を選ぶ必要があると述べた。
「新しい放射線診療装置の導入に伴う放射線防護のあり方を考える」をテーマに行われた話題提供では,菊地氏が座長を務め,装置メーカーの被曝低減への試みなどが発表された。また,最後に設けられたパネル討論では,講演者が壇上に並び,参加者と活発な意見交換が行われた。
フォーラムプログラム
司会・進行:菊地 透(自治医科大学RIセンター)
●基調講演
座長:田中良明(日本大学医学部放射線医学教室)
1. 「新しい放射線診療の状況と展望」
増本智彦(東京大学医学部附属病院放射線部副部長)
2. 「放射線医療技術の進展と放射線安全規制」
山口一郎(国立保健医療科学院)
●話題提供:新しい放射線診療装置の導入に伴う放射線防護のあり方を考える
座長:菊地 透(自治医科大学RIセンター)
1. 「マルチスライスCTの被ばく低減技術」
猪川弘康(東芝メディカルシステムズ(株)営業推進部CT担当)
2. 「CNR法によるCT被ばく線量の低減技術
高木 博((株)日立メディコCTシステム部)
3 .「CTにおける被ばく線量低減の最新技術」
角尾卓紀(GE横河メディカルシステム(株)MI&CT技術部)
4. 「Philips Allura Xper DoseWise」
藤田守昭((株)フィリップスエレクトロニクスジャパン メディカルシステムズ
X-ray営業技術)
5. 「IVR装置における線量表示」
佐々木 理((株)島津製作所医用技術部)
6. 「シーメンスの血管撮影装置における放射線防護機能について」
横山義治(シーメンス旭メディテック(株)マーケティング本部AXグループ)
7. 「イメージガイド下放射線治療」
磯部 徹(エレクタ(株)マーケティング部)
8. 「新しいデジタルX線画像検出器」
佐藤 斉(茨城県立医療大学保健医療学部放射線技術科学科)
●パネル討論:新しい放射線医療技術の導入に先行した放射線安全管理の展望
座長:菊地 透(自治医科大学RIセンター)
|