2007
形態から機能,代謝へをテーマに
「第35回日本磁気共鳴医学会大会」が開催


大会長:杉村和朗氏
大会長:杉村和朗氏
(神戸大学)
(写真1)


Eポスターの閲覧会場 Eポスターの閲覧会場

機器展示会場には15社が出展 機器展示会場には15社が出展

 9月27日(木)〜29日(土)の3 日間,兵庫県の神戸ポートピアホテルにおいて,「第35回日本磁気共鳴医学会大会」が開催された。ポートピア地区の開発事業として,医療産業都市構想を推進している神戸市での開催となったが,2006年にはポートピアに神戸空港が開港したことで,交通の便が向上。大会の開催地にふさわしい場所となった。

 今回の大会長は,神戸大学大学院医学系研究科内科系講座放射線医学分野教授の杉村和朗氏(写真1)が務めた。杉村大会長が今回のテーマとして掲げたのが,“From Mor phology to Function and Metabolism(形態から機能,代謝へ)”。MRIは3T装置が臨床現場に登場したことで,これまでの形態画像だけでなく,機能や代謝情報を得るためのモダリティとして,多くの期待が集っている。

 杉村氏は,開会式の挨拶の中で,筑波大学臨床医学系放射線医学教授だった故・板井悠二氏の言葉を引用し,「MRIのMRはミスター(Mr)であり,ミスターイメージ,つまり画像診断の王様である」と説明。「CTやPETなど多様なモダリティがあるが,形態,動態,機能,代謝などを横断的に診断できるのはMRIだ」と述べた。

 また,杉村氏は,大会のIT化を推進したことについても触れ,従来のポスターセッションを,Eポスター(CyPos形式)にするなど,新たな試みに取り組んでいく姿勢をアピールした。

 そのEポスターは,9月21日(金)から事前にインターネット上で,演題登録者と事前参加登録者を対象に閲覧可能にした。これにより,参加者はあらかじめ興味ある演題を閲覧し,大会期間中に発表者と時間をかけて質疑応答できるようになる。事前閲覧が可能になったことで,第5〜7会場では,主にEポスターの発表が行われた。領域ごとにセッションが設けられたが,参加者はすでに発表内容を閲覧しているという前提のもとに進められ,発表者のプレゼンテーションもコンパクトにまとめたものになっており,質疑応答の時間を多くするよう配慮されていた。

 初日,メインとなる第1会場(ポートピアホール)では,開会式後に国際都市・神戸らしく,インターナショナルセッションが行われた。“ From Morphology to Function and Metabolism”という大会テーマにふさわしく,今後MRIが開拓していく新たな領域である「Molecular Imaging」がテーマとなった。日本磁気共鳴医学会会長である犬伏俊郎氏(滋賀医科大学MR医学総合研究センター教授)と米国National Institutes of Health(NIH),National Cancer Institute(NCI)のMolecular Imaging Programの小林久隆氏が座長を務めた。

 インターナショナルセッションに続いて,杉村氏による大会長講演が行われた。大会テーマを演題名とした講演で杉村氏は,まずMRIの現在までの技術の進歩について,空間分解能の向上と撮像時間の短縮という要素を挙げた。この2つの技術進歩により,MRIはCTと並ぶ画像診断の中心的な存在に位置づけられていると,1.5T装置と3T装置との比較画像を交えながら説明。高磁場装置の登場により,形態診断だけでなく,動態,機能,代謝情報が得られるようになったとして MR spectroscopy,DWIなどを紹介した。また,MRIの適用が期待される分野として,Molecular Imagingについても解説した。講演のまとめとして,研究者に期待することについて,MRIの未知なる能力を引き出すこと,超高磁場機器の利用,Molecular Imagingへの展開を挙げた。さらに杉村氏は,MRIは無限の可能性を秘めているとした上で,装置や造影剤の安全性に配慮し,被検者に静かで快適な検査環境を提供することが求められていると締めくくった。

 最終日には市民公開講座「知っておきたい乳がんの知識」が行われるなど,学会関係者だけでなく,一般市民も参加。新しい試みを多く採り入れた今回の大会は,1600名の参加を得て盛況のうちに幕を閉じた。

 次回は,旭川医科大学実験実習機器センターの田中邦雄氏を大会長に,2008年9月11 日(木)〜13日(土),旭川市民文化会館で開催される。


●問い合わせ先
日本磁気共鳴医学会 事務局
TEL 03-3443-8622 FAX 03-3443-8733
http://www.jsmrm.jp/indexj.html