取材報告

2007
放射線医学総合研究所が
創立50周年記念講演会を開催

会場風景
会場風景

米倉義晴 氏
米倉義晴 氏(写真1)

徳永 保 氏
徳永 保 氏(写真2)

高橋千太郎 氏
高橋千太郎 氏(写真3)

辻井博彦 氏
辻井博彦 氏(写真4)

菅野 巖 氏
菅野 巖 氏(写真5)

杉村 隆 氏
杉村 隆 氏(写真6)

酒井一夫 氏
酒井一夫 氏(写真7)

明石真言 氏
明石真言 氏(写真8)

久住静代 氏
久住静代 氏(写真9)

 放射線医学総合研究所は,7月20日(金),経団連会館(東京・千代田区)において,創立50周年記念講演会を開催した。

 同研究所は,1957年の創立以来,放射線の医学利用の推進,安全研究,科学者と技術者の養成に一貫して取り組んできた。2006年度からは,重粒子線によるがん治療,放射線が生体に及ぼす影響,分子イメージングの研究を中心とした「放射線に関するライフサイエンス研究」と,「放射線の安全と緊急被ばく医療研究」を2本の柱として重点的に研究を行っており,記念講演会もこれに基づきプログラムが組まれた。

 開会の挨拶に立った理事長の米倉義晴氏(写真1)は,「人類が放射線を利用し続けるかぎり,放射線と健康にかかわる研究を推進する放射線医学総合研究所の使命はさらに重要なものになっていく」と述べた。続いて,文部科学省研究振興局長の徳永 保氏(写真2)が来賓として挨拶し,今後の活動に期待を述べた。

 講演でははじめに,理事の高橋千太郎氏(写真3)が,「放医研の50年と現在」と題してこれまでの歴史と活動内容を紹介した。
「放医研における放射線医学の取り組み」では2題の講演が行われた。重粒子医科学センター長の辻井博彦氏(写真4)が,「ここまできた重粒子線がん治療」と題して講演した。辻井氏は,重粒子線は,X線よりも線量集中性に優れるため,高い生物効果を示すと説明。頭蓋底,頭頸部,骨盤領域などの手術困難ながんに対してだけでなく,肉腫や悪性黒色腫といった放射線抵抗性のがんに対しても有効だと述べた。分子イメージング研究センター長の菅野 巖氏(写真5)は,「分子で見る身体のはたらきと病気」と題して講演。腫瘍の悪性度の診断が可能な細胞増殖マーカーのFLTや低酸素状態の細胞に蓄積するCu-ATSMを例に,悪性腫瘍診療に貢献する分子イメージング技術を紹介した。

 この後,特別講演として国立がんセンター名誉総長の杉村 隆氏(写真6)は「半世紀を顧みて:がん治療の将来を想う」と題し,がんに関する研究の歴史などを紹介した。

  「放医研の放射線安全への取り組み」では2題の講演が行われた。放射線防護研究センター長の酒井一夫氏(写真7)が,「放射線防護研究のあゆみ」と題して講演を 行った。酒井氏は,放射線防護研究の目的は放射線の使用制限ではないことを強調。放射線を安全かつ安心して,有効に利用できる状況を整えることだと述べた。続いて,緊急被ばく医療研究センター長の明石真言氏(写真8)が,「放医研と我が国の被ばく医療」と題して講演。緊急被ばく医療体制の充実をめざして同研究所と全国の関係機関や専門家との間で構築しているネットワークを紹介した。

 最後に,原子力安全委員会委員の久住静代氏(写真9)が,「我が国の原子力安全確保について・・原子力安全委員会の役割と放射線医学総合研究所への期待」と題して特別講演を行った。久住氏は,国民に正確に理解してもらうことが難しい放射線の安全性について,同研究所が果たしてきた役割を評価し,医学利用の実績をもとに説得力のある説明をすることができると述べた。さらに,今後の原子力利用の前提にある安全確保の観点からも,研究の重要性を強調した。その上で,放射線の安全と医学利用に関する研究が並行して進められ,相乗効果を生みながら発展していくことを強く期待するとまとめた。


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