7月10日(火),東京大学・山上会館において「第8回化学放射線治療科学研究会」が開催された。開会にあたり,放射線総合医学研究所で稼働している医療用重粒子加速器「HIMAC」の開発に携わった,平尾泰男氏(医療用原子力技術研究振興財団 写真1)が挨拶に立った。平尾氏は,新技術を取り入れコンパクト化した医療用先進小型加速器の開発と普及を推進し,がん治療に特化した人材と粒子線のプロフェッショナルの育成につながる研究を進めていくことを,同研究会に期待すると述べた。
東京大学医学部附属病院放射線科准教授/緩和ケア診療部長の中川恵一氏(写真2)は,「がん対策基本法・がんプロフェッショナル養成について」をテーマに講演を 行った。近年,ライフスタイルの欧米化に伴い,日本では肺がん,前立腺がん,乳がんなど,欧米型のがんが増加傾向にある。それに伴い,手術以外の選択肢として放射線治療のニーズが高まっており,がん治療医や理工系医学物理士の確保など,放射線治療を取り巻く環境の整備が重要であると指摘した。その上で,政府が示した具体的な対策として,がん対策基本法,特に,今年6月15日に策定されたがん対策推進基本計画について説明をした。医師やがん患者・その家族らも参加した協議会では,(1)放射線療法・化学療法の推進と,これらを専門的に行う医師などの育成,(2)治療の初期段階からの緩和ケアの実施,(3)がん登録の推進,が重点的事項として同計画に盛り込まれ,がんの早期発見,予防,研究への取り組みが,国家レベルでより現実的に動き出したと述べた。
そのほか同研究会では,〈先進イオンシステム〉,〈先進電子・X線システム〉をトピックスに医療用先進小型加速器開発レビューが発表され,〈医学物理人材育成と研究開発〉のテーマでディスカッションが行われた。 |