取材報告

2006

人材育成をテーマにした
「第26回医療情報学連合大会」が開催される


特別講演が行われたA会場
特別講演が行われたA会場


櫻井恒太郎 氏
大会長:櫻井恒太郎 氏
(写真1)

岡田 弘 氏
岡田 弘 氏
(写真2)

西村周三 氏
西村周三 氏
(写真3)

企業展示会場
企業展示会場

 11月1日(水)〜3日(金)の3日間,札幌コンベンションセンターにおいて,「第26回医療情報学連合大会」が開催された。北国での開催ということもあり,例年より3週間ほど早い時期の開催となった。大会長は北海道大学大学院医学研究科医療情報学分野教授の櫻井恒太郎氏(写真1),プログラム委員長は奈良先端科学技術大学院大学の湊 小太郎氏,実行委員長は北海道大学病院医療情報部副部長の遠藤 晃氏が務めた。

 近年,電子カルテシステムを中心に,医療のIT化が進んできたことから,医療情報学連合大会も情報システムをテーマに扱う機会が多かった。一方で,医療情報学は,医学,工学,情報学などの学際的な研究が求められている。そこで,今大会では,先端研究や人材育成のトピックスを取り上げるため,「次世代の医療情報へ──フロンティアの開発と人材の育成」をテーマに掲げた。

 プログラムは大会長講演などの特別講演が5題,シンポジウムが15題,ワークショップが19題,一般口演277題,ポスターが144題,ハイパーセッションが10題設けられたほか,産官学共同企画,ランチョンセミナーやスポンサープログラムなどで構成された。また,大会の前後1日をPre-congress,Post-congressと銘打ち,Pre-congressでは,10月31日(火)にHELICS協議会(医療情報標準化推進協議会)が4回目となるシンポジウム「電子カルテ2008年問題〜スムースなリプレースを目指して〜」を開催。ほかに4テーマのチュートリアルを行った。Post-congressでは,11月4日(土)に日本医療情報学会人材育成プログラムとして,2つのチュートリアルが設けられた。

 大会初日には,特別講演1として,北海道大学大学院理学研究院付属地震火山研究観測センター長の岡田 弘教授(写真2)が「自然災害の軽減をめざして──症状監視と減災コミュニケーション」と題して発表した。岡田氏は,2000年の有珠山噴火における防災体制について,観測データによる噴火予知から,行政,住民の対応について,時系列的に説明した。その上で,ハザードマップを有効に活用した町づくりなどの事前対策により被害を最小限にできたと説明。災害に立ち向かうためには,住民,行政,マスメディア,そして科学者の連携を強固なものにすることが重要だと述べた。

 岡田氏の特別講演に続き,櫻井氏の大会長講演が行われた。テーマは,「医療情報と医学教育・EBM──何をどう教えればよいか」。櫻井氏は,医療情報学の教育において,その内容が操作やプログラムといったことから,文献検索などへ移ってきたと指摘。また,医学教育におけるITの役割について説明した。そして,今後の課題として,clinical decision supportの再開発などについて言及した。

 特別講演3では,京都大学大学院経済研究科教授の西村周三氏(写真3)が「病院のIT化の進展と医療経済」と題して発表した。西村氏は,医療費を抑制するという医療制度改革の動きの中で,今後医療のIT化のための予算が拡大される可能性は低いと指摘。医師や看護師確保のために財源が用いられるとした。さらに西村氏は,予防医学のためのデータ蓄積や,医師や看護師の業務負担を軽減するようなメリット,経済効果,診療時間節減効果などを具体的に示すことがIT化の推進に重要だと述べた。

 3日間にわたって行われた大会には,約2200名の参加者があった。また,企業展示では,50ものブースが設けられ,本州よりも一足早い冬将軍の訪れにもからわらず,活気のある大会となった。なお,第27回医療情報学連合大会は,東京医科歯科大学歯学部附属病院の土屋文人氏を大会長に,2007年11月23日(金)〜25日(日),神戸国際会議場とポートピアホテルにおいて開催される。


●問い合わせ先
第26回医療情報学連合大会事務局
北海道大学病院医療情報部内
TEL 011-706-6017 FAX 011-700-5608
E-mail jcmi2006@med.hokudai.ac.jp