取材報告

2006
第6回 化学放射線治療科学研究会 開催

研究会会場風景
研究会会場風景

上坂 充 氏
上坂 充 氏
(写真1)

中川恵一 氏
中川恵一 氏
(写真2)

細貝知直 氏
細貝知直 氏
(写真3)

西尾禎治 氏
西尾禎治 氏
(写真4)

白石憲史郎 氏
白石憲史郎 氏
(写真5)

笹野仲史 氏
笹野仲史 氏
(写真6)

 9月5日(火),東京大学医学部附属病院入院棟A15階大会議室にて「第6回 化学放射線治療科学研究会」(弥生研究会)が開催された。2003年に発足した本研究会だが,本年度に,主催者らが代表となって文部科学省科学研究費補助金基盤研究C(調査研究)「研究開発的医学物理創成と人材育成」が採択されたことを受け,今回は,革新的な放射線医療システム,医学物理分野における人材育成に注目し議論する場とした。会場からの発言もあり,多様な意見が活発に交わされた。

 まず,東京大学大学院工学系研究科原子力専攻教授の上坂 充氏(写真1)が,「研究開発的医学物理創成とトピックスとしてX線DDS」と題して講演をした。その中で上坂氏は,欧米のオリジナルの医学物理士とわが国の医学物理士ではその定義が違うこともあり,世界に通じる日本人医学物理士がいない状況に触れ,欧米のような医学物理士の医療現場における役割の重要性とその人材育成の急務を訴えた。また,上記の科研費の採択により,日本原子力学会内に特別研究専門委員会として「研究開発的医学物理特別専門委員会」の設置に至ったとし,当日の午前中には,その第1回目の会議が行われ たと報告した。そのほか,経済産業省新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に採択された開発中の“X線DDS(drug delivery system)”の有用性などについて報告した。

 続いて,東京工業大学大学院総合理工学研究科特任助教授の細貝知直氏(写真3)が「レーザープラズマ加速のピンポイントセルセラピー応用」,国立がんセンター東病院臨床開発センター粒子線医学開発部物理専門官の西尾禎治氏(写真4)が「Dose  volume delivery Guided Radiotherapyの研究」,東京大学医学部附属病院放射線科の白石憲史郎氏(写真5)が「腫瘍免疫と放射線治療」,東京大学医学部附属病院放射線科の笹野仲史氏(写真6)が「エダラボンの放射線防護効果」,放射線医学総合研究所の遠藤真広氏(写真7)が「新規粒子線治療施設と人材育成プログラム」と題して,それぞれの研究・開発について経過や成果,見解などを報告した。

 東京大学医学部附属病院放射線科助教授の中川恵一氏(写真2)は,「がん対策基本法と放射線治療」と題して講演をした。中川氏は,「がん対策基本法」が成立した今年6月15日までの経緯を述べ,政官民問わず多くの人々の協力を得たと報告した。また,がん医療で世界をリードする米国のがんに関する統計データを用いながら,わが国にも“がん登録”が必要であると強調。先進国で行っていないのは,わが国くらいであると述べた。その上で,米国のがんの死亡率が減少に転じているのは,このがん登録の寄与が大きいとし,わが国におけるこれからのがん治療の成績向上のためにも不可欠だと言及。個人情報保護法によって個人情報の扱いにナーバスになってしまうわが国の社会背景が制度化の壁になっていると指摘した。

 最後に,三菱重工業(株)医療機器事業統括室主席技師の川田則幸氏(写真8)が,「IGRT機に搭載するイメージングシステムの開発」と題し,医療装置メーカーの立場から現在進行中である,世界初の動態追尾機能付き「高精度四次元治療器機」について報告があった。

 欧米に劣らない医学物理分野の確立に向け科研費が採択されたことをはじめ,化学放射線治療科学研究会は,わが国のがん医療の発展のために大きな一歩を踏み出した。今後の活動から目が離せない。


遠藤真広 氏
川田則幸 氏
遠藤真広 氏
(写真7)

  川田則幸 氏
(写真8)

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東京大学大学院工学系研究科原子力専攻
作美 明
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