“e-Japan戦略”が2005年度で終了し,政府は2006年1月,新たに“IT新改革戦略”を発表。今後展開すべき重点的な政策の筆頭に「ITによる医療の構造改革」を掲げた。それらに携わるベンダーから成る保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)としては,これまで以上にレセプトのオンライン化,また医療情報の標準化に向けた活動を推進していかなければならない。このような状況の中で7月5日(水),コクヨホール(東京)において,平成18年度の業務報告会を 行った。内容は,昨年度の成果を中心に,各部会・委員会や特別プロジェクトなどの1年間の活動状況が報告された。
冒頭,開会挨拶には,総務会長の松本洋一氏が立った。会員数も増え,富士通(株)の秋草直之氏の新会長就任をはじめ,標準化推進部(国内標準化委員会,国際標準化委員会,普及推進委員会,医療ソフトウェア安全性検討PJ)などの新設により改編した新生JAHISの躍進を誓った。
続いて,運営会議議長の田原 保氏から,JAHISの今年度の活動方針についての報告があった。本年度の活動方針として,(1)情報の的確な収集と伝達,(2)事業環境の改善と市場拡大,(3)共通基盤の確立(標準化),(4)公的使命への責任の4項目を挙げた。6月9日に設立された医療IT推進協議会の使命や相互運用性実証事業の現況についても説明があった。そのほか,2007年春に大阪で開催される第27回日本医学会総会展示企画にJAHISとして出展することで,医療ITの重要性を国民に直接アピールする。予定している企画は,“ユビキタス・ハウス(家庭での医療IT活用)”と“EHRビデオ(日本版EHRのメリットを国民にアピール)”であると報告があった。
続いて,医事コンピュータ部会,医療システム部会,国内/国際標準化特別委員会,保険福祉システム部会,事業推進部の各部会,委員会からの昨年1年間の成果と今後の活動について報告があった。
特別講演では田中 博氏が,「わが国の医療IT推進へ向けて――海外の最新動向と日本の戦略提案」と題し,英国,カナダ,米国をはじめ,海外諸国の国家医療IT化政策を紹介した上で,日本のあるべき医療ITについて,行政,医療界,医学界,産業界などが取るべき施策について述べた。その中で,欧米諸国のほとんどが医療のIT化について大型の長期政策を進行しており,日本は後れをとっていると指摘した。そして,日本版地域医療情報圏(RHIO-J)構築の重要性を説き,医療のIT化については,3段階戦略(医療情報化への基盤形成,地域医療情報圏の構築,国民医療IT政策の実現)が適切であるとした。また,医療IT化のグランドデザインの実行のためにも,地域,諸団体がばらばらにならないようまとめる上げるための国民的横断組織の必要性を述べ,医療IT推進協議会の役割・機能に大きな期待を寄せた。
最後に,閉会挨拶にて,総務会副会長の小澤泰幸氏は,IT新改革戦略が発表され,新たなグランドデザインの策定,レセプトのオンライン化,生涯健康管理や医療機関の情報連携,また地域医療連携の確立や日本版EHRの青写真策定などが急務とされる中で,JAHISの役割は重要で,かつ大きな期待が寄せられている。今後,JAHISのブランドイメージをアップさせていくことで,さらに存在感を高めていきたいと述べた。
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松本洋一
氏
総務会長 |
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小澤泰幸
氏
総務会副会長 |
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田原 保
氏 運営会議議長 |
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加藤隆一
氏
医事コンピュータ部会会長 |
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木下邦男
氏 歯科システム委員会
前委員長 |
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篠田英範
氏 医療システム部会
運営幹事 |
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長谷川英重
氏 国内/国際標準化
特別委員会 |
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大島義光
氏 地域医療システム委員会
委員長 |
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倉岡立郎
氏 健康支援システム委員会
委員長 |
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大久保道久
氏 事業推進部部長 |
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田中 博
氏 日本医療情報学会
理事長/学会長 |
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