受付風景
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会場風景
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参加者は200名を超えた
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杉村和朗 氏
(写真1)
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楫 靖 氏
(写真2)
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磯田裕義 氏
(写真3)
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長縄慎二 氏
(写真4)
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金 東石 氏
(写真5)
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小畠隆行 氏
(写真6)
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今井 裕 氏
(写真7)
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興梠征典 氏
(写真8)
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日本における3T MRIの本格的な利用と普及を目的に「3T MR研究会」(杉村和朗
代表幹事:神戸大学大学院医学系研究科生体情報医学講座放射線医学分野教授 写真1)が発足し,その第1回目の研究会が1月21日(土),大阪の千里ライフサイエンスセンターにおいて開催された。高いS/Nや空間分解能が得られる全身用3T
MRIは,2005年3月にGE社の装置が薬事承認され,続いて同年11月にシーメンス社とフィリップス社の装置が認可された。そのため,欧米に比べて遅れていた3T
MRIの日本における普及への期待が急速に高まっている。一方で,現時点では撮像法の最適化が図られていないことや磁化率効果の影響を受けやすいことなどの課題もあり,それらの克服が今後の3T
MRI研究における大きな鍵となる。同研究会では,全身用MRI装置の臨床応用を行っている先行施設が具体的な症例を示しながら有用性や課題などについて発表し,さらに各メーカーの3T
MRI装置の技術的特徴なども報告されるとあって,参加者が200名を超え盛況となった。
はじめに,代表幹事の杉村和朗氏が挨拶に立ち,今後,日本の熱心な研究者によって,世界に向けて3T
MRIの研究成果が発信され,3T MRIは1.5Tに代わって臨床の標準機になるであろうとの期待を述べた。続く基調講演でも,「3T
MR時代の幕開け」と題して,3T MRIはスキャンテクニックやシミングの進歩により,脳のみならず全身の多くの臓器のイメージングに有用であると述べた。
神戸大学大学院医学系研究科放射線医学分野の楫 靖氏(写真2)を座長とする一般演題では,6人の専門家が多くの症例画像を示しながら,それぞれの臨床経験について報告した。健常者を対象に上腹部MR画像における3T装置と1.5T装置との比較を行っている京都大学医学部画像診断・核医学科の磯田裕義氏(写真3)は,「3T
MRIを用いた上腹部MR画像についての初期検討」と題して報告。3T MRIにおいてはSARの増大やアーチファクトの増加など克服すべき課題が多いとしながらも,撮像法の工夫や絶縁体padの使用などにより,画質の向上が得られたと述べた。
名古屋大学大学院医学系研究科分子総合医学専攻高次医用科学講座の長縄慎二氏(写真4)は,「3D-FLAIR;3種の撮影法」と題して,現実的な時間で撮影可能な3種類のthin
slice 3D-FLAIR法について概説した。全脳,脳幹部,内耳領域の臨床例を示しながらそれぞれの特徴について詳述し,薄切りが可能である,CSFアーチファクトがない,血管の造影効果がないなど,3D-FLAIRは神経放射線科医の新しい武器であるとの見方を示した。
3T装置では磁化率効果の増強やT1コントラストの低下,RF磁場不均一などのデメリットがあるとされる腹部領域について,大阪大学大学院医学系研究科放射線医学講座の金 東石氏(写真5)は「腹部領域での3.0T
MRIの使用経験」と題して,3T装置と1.5T装置の比較結果について報告した。上腹部や骨盤領域では撮像法の工夫や画質の改善が必要などの課題はあるものの,MRCPやSPIO造影では1.5Tと同様の画質が得られており,腹部領域でも3T装置は1.5T装置と同様に使用可能であると述べた。また,3T装置の可能性として,高いS/Nを利用してパラレルイメージングによる高分解能,高速化,さらに3D
isotropicイメージングによる検査時間の短縮などを挙げた。
放射線医学総合研究所分子イメージング研究センターの小畠隆行氏(写真6)は,「放医研における体幹部3T
MR研究の概要」と題して,体幹部MR研究における超高磁場MRIへの応用課程で発生した問題点や対処法について発表した。13C-MRSを用いた肝糖代謝計測には13C送受信サーフェイスコイルの設計により対応し,また,骨盤部画像コントラストの改善には,腹部全面に置くゼリーファントムを作成して対応したと述べた。
2003〜2004年にかけて,3T装置と1.5T装置を用いて脳神経領域,腹部領域における安全性と有用性を比較検討する臨床試験を行った,東海大学医学部基盤診療学系画像診断学の今井 裕氏(写真7)は,「3T
MRI臨床試験の経験について」と題して,臨床試験の結果を報告した。頭部領域においては,解剖学的微小構造や脳器質疾患の描出能のいずれにおいても3T装置が優れていると述べた。また,腹部領域においてはFFE法による肝内の血管や胆管の描出においては1.5T装置の方が優れているものの,TSE法での肝臓の輪郭や肝内血管と胆管の分離,膵臓の輪郭,膵管の描出,腎臓の輪郭,腎臓の皮髄境界,脊髄の輪郭,股関節の骨頭内部の骨梁構造,前立腺の内部構造においては3T装置の方が優れているとし,臨床試験では安全性評価を兼ねるために高S/N撮像などの撮像系列を用いたため,必ずしも腹部の撮像には最適ではなかったと報告した。
産業医科大学放射線科学教室の興梠征典氏(写真8)は,「中枢神経系における3T MRIの臨床応用:我々の経験」と題して,T1緩和時間が延長する3T
MRIでは,T1強調SE法に代わって,3D-fast SPGR法,T1強調FLAIR法が有用だとした。3T装置における,SARの制限,共鳴周波数が高く,B1不均一による信号ムラなどの課題は,パラレルイメージングなどの技術でほぼ解決されており,メリットの方が大きいことを考えると,少なくとも頭部領域においては近い将来,スタンダードになるとの見方を示した。
近畿大学医学部放射線医学教室診断学部門の村上卓道氏(写真9)が座長を務めた共催セミナーでは,「3T
MRI開発状況」をテーマに3社による発表が行われ,3T MRIの最新技術動向などが紹介された。なかでもシーメンス社がフランスのCEAと共同研究を行う巨大な11.74T
MRIの紹介には,参加者から大きな声があがった。
東海大学の今井 裕氏が座長を務める第2回研究会は, 2006年7月8日(土)に同会場で開催される予定である。
●共催セミナー |
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共催セミナー座長:村上卓道
氏(写真9) |
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フィリップス社の開発状況を発表したMyeong-Jin
Kim 氏
(Professor/Yonsei
University,Severance Hospital) |
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加藤公一
氏
(GE横河メディカルシステム(株)MRセールス&マーケティング部) |
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水内宣夫
氏
シーメンス旭メディテック(株)マーケティング本部MRグループ) |
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