肺がん，結腸がんのCADを開発するメディックサイトは，2006年1月から国立がんセンターがん予防・検診研究センターと共同研究を開始する。2005年12月14日（水）には，東武銀座ホテルにおいて，日本法人であるメディックサイトジャパン（株）CEO（アジア）のデイヴィット・サムナー氏（写真右），国立がんセンターがん予防・検診研究センターの検診技術開発部画像診断開発室長の柿沼龍太郎氏（写真中），同検診部総合検診室長の飯沼　元氏（写真左）が出席し，説明会を行った

　メディックサイトは，2000年に設立以来，イギリス，アメリカ，中国などにおいて，肺がん，結腸がんのCT画像用のCADを開発している。

　日本では，2004年12月から営業活動を開始。2005年3月には東京・恵比寿に日本オフィスを開設した。4月に開催されたJRCや奈良県で行われたI-ELCAP（International Early Lung Cancer Action Program）の12th International Conference on Screening for Lung Cancerにおいて，日本での事業展開などについてのプレス発表を行った。また，同社は，3D画像処理システム，ワークステーションを手掛けるテラリコン・インコーポレイテッドと日本を含む世界での商業契約を結ぶなど，日本での事業を展開中。現在，2006年度に向け日本人スタッフを募集するなど，活発に国内での活動を行っている。

　同社が手掛ける肺がんのCAD「LungCAD」は，CT画像から結節，がんを検出・測定する。また，結腸がんのCADである「ColonCAD」はCT画像から結腸ポリープ，がんを検出・測定する。ソフトウエアの特長としては，「LungCAD」，「ColonCAD」ともに，多様な人口集団による世界最大のデータベースにより開発されており，競合他社に比べ，きわめて高い検出率と正確なサイズの測定を実現していると，サムナー氏は説明している。「LungCAD」の場合，NEF（結節画像強調フィルタ）を5mm以上の肺結節検出に使用すると，91％の有病正診率，「ColonCAD」の場合，ポリープ画像強調フィルタを使用すると，5mm以上のポリープで，94％の有病正診率になるという。

　今回発表された，国立がんセンターがん予防・検診研究センターとの共同研究は，日本国内での事業を本格的に進めるためのものである。共同研究は，肺がん，結腸がんそれぞれのソフトウエアを用い4項目ずつ，計8項目行われる。国立がんセンターからデータを提供してもらうことで，例えば，「LungCAD」の場合，日本人に多いスリガラス状陰影（GGO）の検出性能を上げるよう，アルゴリズムを日本人向けに最適化していく。さらに，共同研究では，そのソフトウエアを実際に日本人の患者に対して適用し，検出，計測の成績を評価する。

　「LungCAD」を用いて行われる研究では，予防・検診研究センター長の森山紀之氏，柿沼氏の指導のもとに行われる。2005年5月から構築を進めている研究用のサーバシステムに匿名化した患者データを蓄積して行うこととしており，結節ありの症例100例，結節なし30例のデータを集める。現在，同センター肺がん検診におけるマルチスライスCTの読影時間は平均13分となっているが，この研究により，読影時間を大幅に短縮できるようなソフトウエアになってほしいと柿沼氏は述べている。

　一方，「ColonCAD」は，森山氏，飯沼氏の指導のもとで行われる。まず，40例に対し，内視鏡検査を行った上で，「ColonCAD」でvirtual colonoscopyを実施し，その結果を評価する。その上で，第2段階として，大腸内視鏡検査をした40例に対し，CT colonoscopyでのデジタル前処置において「ColonCAD」を使用し，その有用性を評価する。飯沼氏は，この研究を通じ，同センターにおける大腸がんのCT検診のシステムを構築できるようにしたいと期待を込めた。

　今回発表された研究は，サムナー氏によると，早ければ2006年の第1四半期には成果を出せるとしている。メディックサイトでは，日本人向けに最適化されたソフトウエアが提供できるようになった段階で，薬事申請を行うこととして いる。

マルチスライスCTの登場により，膨大なデータ量が発生する一方，読影する放射線専門医の不足が深刻な問題となっており，CADに集まる期待は大きい。メディックサイトと国立がんセンターの共同研究が，わが国のがん検診に大きな進歩をもたらすことが望まれる。