注目を集めた特別鼎談
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歓迎セレモニーで合唱した横浜国立大学グリークラブの皆さん
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金杉明信 氏
(写真1)
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岡村 正 氏
(写真2)
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岸本周平 氏
(写真3)
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根本明宜 氏
(写真4)
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武田 裕 氏
(写真5)
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三原直樹 氏
(写真6)
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松村泰志 氏
(写真6)
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第25回医療情報学連合大会(第6回日本医療情報学会秋季学術大会)が,2005年11月24日(木)〜26日(土)の3日間,パシフィコ横浜会議センターで開催された。25回の歴史を持つ同大会において,今回,産業界から初めて,JAHIS(保健医療福祉情報システム工業会)副会長の金杉明信氏(日本電気(株)代表取締役執行役員社長 写真1)が大会長を務めた。大会テーマは,「医療におけるITの戦略的活用…質の向上と効率化の両立」。産官学が連携し,国全体として医療のIT化への戦略的な取り組みを進めていくことことが求められる中,質の向上と効率化のためにITをいかに活用していくかを議論するための場となった。
大会プログラムは,企画講演・鼎談が大会長講演,学会長講演など5題,シンポジウムとワークショップが32題,一般演題は377題,ポスターセッションが82題,ハイパーデモセッションが32題に上り,演題数が600以上という,これまでの大会の中でも最も多いものとなった。
今回の大会は,JAHISが中心となって産官学が連携して行われるということもあり,企画演題・鼎談も産業界の視点から構成された。24日に行われた大会長講演では,金杉氏が,「ユビキタス社会の進展と医療情報システムの将来」の演題で講演。医療のIT化を進めるためには,標準化やインセンティブ付与などの国としての取り組みと,ユビキタス技術が重要だと述べた。その上で,国民のためにも行政と学会,業界団体が連携を強化していくことが今後ますます重要になるとまとめた。
また,この講演の前に行われた特別講演では(株)東芝の岡村 正取締役会長(写真2)が,25日の招待講演では元財務官僚で退職後,内閣府の政策参与として経済諮問会議にかかわった経歴を持つ岸本周平氏(中央大学客員教授 写真3)がそれぞれ演壇に立った。
岡村氏は,「飽くなき改革と技術革新によりグローバル化・ネットワーク化に対応を」と題し,ユビキタスネットワーク社会において,日本が21世紀も持続的に成長するための方策について講演。変化を先取りした変革と,目標の計数化,顧客の視点に立ったサービスの向上の重要性を訴えた。一方,岸本氏は,「世界の中の日本」をテーマに,米国,中国と日本の関係の変遷について触れた上で,国際社会におけるわが国のめざすべき方向性について論じた。
このほか多くの参加者の注目を集めたのが,25日に行われた特別鼎談「オーダリングシステム黎明期から学ぶ,電子カルテ時代に向けての提言」であった。この鼎談は,黎明期から医療情報システムにかかわってきた国際医療福祉大学大学院院長の開原成允氏を司会に迎え,システムを手がけてきたベンダーの視点から,医療情報システム普及のための課題と方策について話し合うというもの。富士通(株)出身の阿曽沼元博氏(国際医療福祉大学教授),日本電気執行役員の岩波利光氏,日本アイ・ビー・エム(株)出身の豊田 建氏((株)HCI代表取締役)が,自らの経験を踏まえて,医療情報システムの導入におけるベンダー側,病院側の問題点について触れ,今後望まれる両者間の連携関係について意見を出し合った。
産業界が中心の大会ということもあって,例年行われる企業展示には53社が出展。病院向け電子カルテの大手である日本電気,富士通,東芝メディカルシステムズ(株)と東芝住電医療情報システムズ(株),診療所向け電子カルテ大手の三洋電機(株)などが製品を紹介していた。また,電子カルテ製品だけでなく,部門システムの展示も多かった。特に,PACSやRISなどの放射線部門システムの出展が目立ち,GE横河メディカルシステム(株),富士フイルムメディカル(株),コニカミノルタエムジーが出展。GE横河メディカルシステムと富士フイルムメディカルは,ランチョンセミナーも開催した。
24日に行われた富士フイルムメディカルのランチョンセミナーは,横浜市立大学附属病院医療情報部の根本明宜氏(写真4)が「特定機能病院におけるフィルムレス運用実現に向けた取り組み」と題して講演。DPC化により,放射線部門の効率化が求められる中,富士フイルムメディカルのPACS「SYNAPSE」を導入してフィルムレス化を図ったことで,経営面においても年間4000万円程度のコスト削減効果があったことなどを報告した。
また,25日のGE横河メディカルシステムのランチョンセミナーでは,大阪大学医学部附属病院医療情報部教授の武田 裕氏(写真5)を座長に,同院のフィルムレス運用についての講演が行われた。同院は,日本電気製の電子カルテシステムとGE横河メディカルシステムの「Centricity」を導入している。講演では,まず,放射線科の三原直樹氏(写真6)が「フィルムレス運用による画像診断」と題し,放射線科医の立場からフィルムレス化のメリットを論じた。それに続き,医療情報部の松村泰志氏(写真7)が,同院の電子カルテとPACSのシステム運用について説明した。
産業界主導による今回の医療情報学連合大会は,これまでの大会よりも,経済的,経営的な観点から医療情報を考える演題が多かったように思われる。電子カルテをはじめとした病院情報システムは,病院経営にメリットをもたらすとはいえ,思うように普及が進んでいない。今後,医療のIT化を進めるためにも,大会のテーマにも使われた「戦略的活用」が重要であり,今大会において,その方向性が示された意義は大きいと言える。なお,次回は2006年11月1日(水)〜11月3日(金),札幌コンベンションセンターにおいて,櫻井恒太郎氏(北海道大学病院医療情報部教授)を大会長に迎えて開催される。
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富士フイルムメディカルの
ランチョンセミナー会場 |
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企業展示の様子。東芝メディカルシステムズと東芝住電医療情報システムズ |
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企業展示の様子。コニカミノルタエムジー
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