「医療の質・安全学会設立記念国際シンポジウム」が2005年11月26日(土),経団連ホールにて開催された(主催:医療の質・安全学会設立記念国際シンポジウム実行委員会,後援:厚生労働省,文部科学省,協賛:日本製薬団体連合会)。
日本だけでなく,世界の各国において医療への信頼が大きく揺らいでいるいま,医療の質と安全のあり方が重要な課題となっている。そのようななか,「医療の質・安全学会」は,広い分野にわたる専門家がその英知を集めて医療の質と安全の向上に資する研究を推進し,その成果を討論することで,患者本位の質と安全を提供する新しい医療システムのあり方を国内外に提言していくことを目的として発足した。
冒頭,厚生労働省医政局長の松谷有希雄氏,文部科学省大臣官房審議官高等教育担当の泉 紳一郎氏,日本医師会副会長の寺岡 暉氏が祝辞を述べ,近年,相次ぐ医療事故による医療への不信や不満が高まるなか,安全と安心の医療を追求する本学会へ期待を寄せた。
続いて,「医療の質・安全学会」の発起人代表であり,本学会の理事長に就任した自治医科大学学長の高久史麿氏が設立趣旨について,2004年の夏、日本医学会開催の医療の安全をテーマにした非公開のシンポジウムを契機に、幅広い分野で学際的な研究をし、社会に発表していくことをめざして,多くの人々の協力を得て,設立に至ったと述べた。
設立記念特別講演では,WHO西太平洋地域事務局長の尾身 茂氏が「患者の安全と医療の質について─21世紀の新しい医療を目指して─」と題して,日欧米における患者の医療に対する満足度の比較から,医療過誤のさまざまな要因,背景などについて報告した。
シンポジウム後半のパネル討議は,「21世紀の医療を創造するために─医療の質・安全における学術研究の意義─」をテーマに,高久氏と,東北大学大学院医学系研究科教授の上原鳴夫氏の司会進行で行われたが,それに先立ち,ジュネーブ大学教授で,WHOに設立された特別プログラム(World
Alliance for Patient Safety)のDidier Pittet氏による,「患者安全の向上─グローバルな視点からの課題─」と題した基調講演があった。
パネル討議は,本学会の理事である7名のパネリストが,医療の質・安全における学術研究の意義と課題について,それぞれの立場から医療安全への知見を披露した。
医療の安全が強く求められているなか,会場に溢れんばかりの参加者とその熱気は,2005年11月26日(土)正午に産声を上げた「医療の質・安全学会」への注目の高さと期待の大きさを十分感じさせるものであった。2006年11月23日(木),24日(金)には,第1回学術大会の開催が予定されている。
パネル討議:
「21世紀の医療を創造するために─医療の質・安全における学術研究の意義─」 |
|
司会:高久史麿氏
氏
(医療の質・安全学会 理事長,自治医科大学学長) |
|
司会:上原鳴夫
氏
(東北大学大学院医学系研究科教授) |
●パネリスト一覧 |
|
医療過誤の背景と対策
永井良三 氏(東京大学医学部附属病院院長) |
|
看護の立場から「医療の質・安全学会設立」への期待
−安全で質の高い医療を提供できる環境確保のために学際的な研究推進に期待する−
嶋森好子 氏(京都大学医学部附属病院看護部長) |
|
医薬品分野から医療の質・安全を考える
土屋文人 氏(東京医科歯科大学歯学附属病院薬剤部長) |
|
「医療の質・安全が向上する医療のシステム化」
三宅祥三 氏(武蔵野赤十字病院院長) |
|
「Doの科学」と医療の質・安全管理
武田 裕 氏(大阪大学大学院医学系研究科教授) |
|
医療の質・安全学ことはじめ
飯塚悦功 氏(東京大学大学院工学系研究科教授) |
|
21世紀の医療を創造するために
−医療の質・安全における学術研究の意義
田原克志 氏(厚生労働省医政局総務課医療安全推進室長) |