取材報告

2005
NPO法人TeamNET
医師と患者でつくる新しいがん医療をテーマに
市民セミナー「第2回進化するがん治療」を開催

セミナーの会場風景
セミナーの会場風景

 地域チーム医療の支援を目的に活動を行っている特定非営利活動法人 東京地域チーム医療推進協議会(TeamNET)は9月17日(土),財団法人癌研究会 癌研有明病院吉田講堂で,市民セミナー「第2回進化するがん治療〜医師と患者でつくる新しいがん医療〜」を開催した。多くの医療機関が連携して,高度な質の高いサービスを生活者の視点で提供する仕組みづくりを進める活動の一環として行われたもので,定員を上回る応募があり,会場は参加者でいっぱいとなった。

 はじめに,TeamNET理事長で癌研有明病院院長の武藤徹一郎氏(写真1)が挨拶に立ち,このセミナーでがんへの理解をさらに深め,予防法や早期診断,最先端の治療法などについて学び,実践してほしいと述べた。
 第1部の市民セミナーでは,がんの発生原因や日本のがん医療の現状,最先端の治療法の有用性や課題などについて,3名のがん治療の専門家がわかりやすく講演した。

 国立がんセンター総長の垣添忠生氏(写真2)は,「わが国のがん対策」について講演し,治療者の人材育成と,国民に情報発信することで,がんの早期発見率を向上させることが今後の課題であると述べた。また,患者自身も正しい治療法を正確に選び取る知識を身に付けることが必要であるとの考えを示した。

 東京大学名誉教授で日本免疫治療学研究会会長の江川滉二氏(写真3)は,「免疫細胞療法−−体の治癒力を利用した先端医療」と題して,実際の症例や治療成績などを示しながら,免疫細胞療法について紹介した。同療法は,抗がん剤や放射線と併用することで再発防止効果などが期待されるものの,進行がんについての有効性に関するエビデンスが少ない,公的健康保険が適用されないため治療費が高額になるなどの課題があると述べた。

 東京大学医学部附属病院放射線科助教授・緩和ケア診療部部長の中川恵一氏(写真4)は,「緩和ケアについて」と題して,放射線治療の有用性や緩和ケアについて紹介した。日本ではがんの治療法として手術が第1選択となることが多いが,患者の負担の少ない放射線治療も,その選択肢に加えるべきであるとの考えを示した。また,患者が“がん”や“死”を受け入れられるようにするためには痛みを取ることが重要であり,医療者自身が緩和医療への認識をさらに深めるべきであると述べた。

 第2部では,国際医療福祉大学教授の阿曽沼元博氏(写真5)がモデレータを務め,「集学的がん治療〜医師と患者でつくる新しいがん医療〜」と題して,シンポジウムとパネルディスカッションが行われた。武藤氏,垣添氏,順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター院長の佐藤 潔氏(写真6)の医療関係者3名のほか,患者の集い・モミの木代表世話人の藤原義久氏(写真7),市民のためのがん治療の会代表の會田昭一郎氏(写真8)の患者2名がシンポジストとなり,それぞれの立場から活発に意見が交わされた。

 “がんの治療法選択のポイント”について,佐藤氏は医療者の立場から,インターネットなどで集めた情報を基に自分の方向性を絞ることで,短時間でも医師と中身の濃い話し合いができるとアドバイスした。また,患者の立場から藤原氏は,信頼できる医師を見つけ,その人の情報を信じることが大切であると述べ,會田氏は自身の経験をもとに,患者は納得できるまで相談できる医師を必要としており,そういう意味で本当に必要な情報はまだ十分ではないと述べた。

武藤徹一郎 氏
  垣添忠生 氏   江川滉二 氏   中川恵一 氏
武藤徹一郎 氏
(写真1)
  垣添忠生 氏
(写真2)
  江川滉二 氏
(写真3)
  中川恵一 氏
(写真4)
阿曽沼元博 氏   佐藤 潔 氏   藤原義久 氏 會田昭一郎 氏
阿曽沼元博 氏
(写真5)
  佐藤 潔 氏
(写真6)
  藤原義久 氏
(写真7)
會田昭一郎 氏
(写真8)

 


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特定非営利活動法人 東京地域チーム医療推進協議会
〒107-0062 東京都港区南青山1-26-4六本木ダイヤビル4F
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