講演会風景
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座長:高橋克日己 氏
(写真1)
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山部清明 氏
(写真2)
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千村 宏 氏
(写真3)
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紀ノ定保臣 氏
(写真4)
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ジョン・D・ハラムカ 氏
(写真5)
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コダック(株)は10月4日(火),5日(水)の両日,東京(時事通信ホール)と大阪(ホテル阪神)において,「Kodak
Digital Vision 2005 〜デジタル環境がもたらす医療改革セミナー〜」を開催した。東京会場では,千葉大学医学部附属病院企画情報部教授の高橋克日己氏(写真1)を座長に,大阪会場では,大阪大学大学院医学系研究科教授の武田 裕氏を座長に,日米における医療IT化の第一人者を迎え,講演が行われた。
講演に先立ち,コダック(株)ヘルス事業部長の山部清明氏(写真2)から,ソリューションビジネスの一環としての本セミナー開催の挨拶があった。続いて,厚生労働省医政局研究開発振興課医療機器・情報室長の千村 宏氏(写真3)から,厚労省は,“医療の質の向上”,“適切な医療情報の管理”,“医療組織の経営効率化の支援”などの視点・考え方をもとに,IT化による医療情報の連携活用,電子カルテや遠隔医療の普及促進など,医療分野におけるIT化を推進しているとの話があった。
講演1では,岐阜大学大学院医学系研究科教授の紀ノ定保臣氏(写真4)が「Next
Generation EMR for Providing High Quality Medecine」と題し,岐阜大学病院の実績データを使って,医療のIT化は「個の医療(Personalized
Medicine)」への貢献が大きいと報告した。岐阜大学病院の新総合医療情報システム「SystemGifu」のように情報を中央集中一元化できれば,あらゆるデータを,診療科の枠を超えてリアルタイムに共有することができ,診療プロセスが効率的になる。そして,蓄積されていくデータをもとに診療プロセスのパターンを分析し,より合理的かつ効率的な診療プロセスを生み出すことができ,いずれは患者一人ひとりが,パーソナライズされた“テーラーメイド医療”も可能となることを示唆した。
続く講演2では,米国ハーバード・メディカルスクールCIO(最高情報責任者)のジョン・D・ハラムカ氏(写真5)が「Healthcare
IT:“Connecting Providers and Patients”」と題し,1998年に開発した,3000人の医師と1万2000人の医療スタッフ,および100万人の患者が,Webベースで診療情報を共有できる電子カルテシステムを例に,医療のIT化について述べた。ハラムカ氏は,電子カルテシステムによって,それまで情報のデリバリーにかかっていたコストは削減され,診療情報も発生と同時に即,データ化されるため,無駄がなくなり医療の質が向上したという。また,医療のIT化は,システム開発技術の問題よりも,人間とプロセスの問題の方が重要であることを指摘。導入時には,医師がカルテ入力作業に懐疑的で,反発もあったため,今後は,そうした改善策の1つとして,ボイス認識システムの開発も進めているとした。
両氏とも,IT導入時のスタッフへの説得と教育が重要で,そこを乗り越えれば,長期的に見て,あらゆる面で絶大な成果を得られることを強調した。実際,完全ペーパーレス・フィルムレスの岐阜大学病院においては,膨大な用紙代とフィルム代が不要になったことで,コスト面では以前とさほど変わらず,診療プロセスの効率化に成功。患者からの評判も良いという。また,ハラムカ氏も,ビジネス・コンティニュイティ(事業事務の連続性)計画と信頼性がカギであり,計画どおりにすべてが導入されたあかつきには,多くのプラス面が出てくる,と指摘した。
今回のセミナーでは,IT化による医療改革を牽引している日米の代表的な施設の成果が,明確な数字でデータ化されて発表された。今後もデジタル環境の動向には注目していきたい。
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