安藤 裕
学術大会長
(写真1)
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特別企画会場風景
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IHEデモのガイド付きツアー風景
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第9回日本医療情報学会春季学術大会(シンポジウム2005)は安藤 裕学術大会長(放射線医学総合研究所重粒子医科学センター医療情報室長 写真1)のもと,7月13日(水),14日(木)の2日間,東京国際交流館で開催された。本大会は,同じくお台場の東京ビッグサイトで,13〜15日の3日間にわたって開催された「国際モダンホスピタルショウ」との連携が可能になるよう,会期を重ねて設定し,両会場間を無料シャトルバスで結ぶという配慮がなされた。
本大会のテーマは,「病院情報システムと部門システムの連携はどこまで容易になったか」。医療のIT化をより一層促進し,普及させるためには,病院情報システムと部門システム(RISやPACSなど)との連携が不可欠となってくる。そこで本大会では,医療情報の円滑な連携を可能にするDICOM,HL7などの標準規格の使い方の国際ガイドラインであるIHE(Integrating
the Healthcare Enterprise)を中心に,プログラムが構成された。IHEは1999年から,アメリカのRSNAとHIMSSが中心となって推進している活動で,ヨーロッパやアジアにも広がり,日本では2001年に関連7団体が参加してIHE-Jプロ ジェクトが立ち上げられ,現在に至っている。
14日の特別企画「医療情報連携のための情報統合化プロジェクト」──IHEの現状と病院情報システムにおける期待される役割──は,IHEの現状を把握するとともに,放射線部門,臨床検査部門,循環器部門,内視鏡部門,病理部門などの業務ワークフローに基づき,DICOMやHL7などの標準規格を使って,どのようなシステムを構築するかという展開が報告された。IHE-Jプロジェクトを後援している経済産業省の堀越祐太郎課長補佐からは,同省の保健医療福祉分野の情報化に向けた取り組みが報告された。埼玉医科大学は平成16年度「医療情報システムにおける相互運用性の実証事業」の公募委託先として,初のIHE導入システムを構築した。採択テーマ名は「IHE-Jを用いた相互運用性に関する放射線部門を題材としたショウルーム型実証事業」。経済産業省としては,リアルショウルーム,バーチャルショウルームとして今後も力を入れていきたいと述べた。また,医療情報管理者育成事業,モデルプログラム開発事業にも積極的に取り組んでいくという。なお,予定されていた厚生労働省の新村和哉室長の報告は欠席のため中止されたが,司会の木村通男・浜松医科大学教授から,情報システムにおけるインセンティブとして,医療連携に対する保険点数加算を検討しているとの同省の方向性が紹介された。
初日の13日(水)には,シンポジウム「IHEを利用した業務フロー分析は可能か:医療連携のための情報統合化プロジェクトの活用」が企画され,実際にIHEを取り入れたシステム導入例や,核医学,内視鏡,循環器のIHEの業務フローなどについての議論が行われた。
また,会期中,多目的ホールにおいて,IHEデモが実施された。14社が参加して,2種類のシナリオ──「PDI:可搬型媒体を利用して情報をやり取り」「SWF+PIR:通常運用のワークフロー,患者の整合性確保」に基づき,ガイド付きツアーが行われ,IHEによる情報連携のメリットを目に見える形でアピールした。
今秋の11月24日(木)〜26日(土)には,第25回医療情報学連合大会(第6回日本医療情報学会秋季学術大会)が,パシフィコ横浜・会議センターで開催される予定である。大会長は,保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)副会長,日本電気株式会社執行役員社長の金杉明信氏。これまでの歴史の中で初めて,産業界から大会長を迎えることが大きな話題を呼んでおり,新しい展開が期待される。
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