標準化の現状と課題などが報告された会場風景
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中村雅美 氏
(写真1)
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保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)は7月1日(金),コクヨホール(東京)において,平成17年度の業務報告会を行った。JAHISは,保健・医療・福祉の三分野における情報システムの基盤整備と標準化を推進することで,健康で豊かな国民生活の維持向上に貢献することを目的に活動を行っている。今回の業務報告会では,JAHISを取り巻く外部環境が国際的標準化,医療行政施策などにより大きく変化を遂げており,保健・医療・福祉へのIT適用に対する行政の期待が高まっているという背景を受けて,運営会議,医事コンピュータ部会,医療システム部会,国内/国際標準化特別委員会,保健福祉システム部会,事業推進部などから,今後の課題や活動の成果,将来展望などが報告された。
はじめに,高平敏男総務会長が挨拶に立ち,11年目を迎えた今年は次の10年を見据えた重要な年であり,これまでよりも積極的で具体的な活動を積み重ねる必要があると挨拶した。さらに今年は,1)経済産業省から受託した,標準化に向けた実証事業・システムの統合要請事業のモデル事業のスタート,2)9月に日本で開催予定のISO/TC215国際会議への協力や,医療IT戦略で先進的な国の要人の日本への招聘など海外とのパイプ強化,3)11月に開催予定の第25回医療情報学連合大会への積極的な関与,の3つの重要なイベントがあるとした。なかでも医療情報学連合大会では,産業界から初めて,JAHISの金杉明信副会長が大会長を務めることが注目されている。
講演では,日本経済新聞社編集局科学技術部編集委員の中村雅美氏(写真1)が,「医療とIT」をテーマに,日本の医療分野におけるIT化の課題などについて語った。日本はIT技術に優れており,広く普及しているが,医療の分野においては普及が進んでいるとは言えない。その原因の1つに,情報開示が徹底されていない現状があるとし,カルテ情報の共有化や標準化が重要な課題であると述べた。また,ITは医療の質や安全性,QOLの向上をもたらすものであり,コストは患者が負担すべきであるが,代わりに医療者側はメリットをきちんと示し,患者を納得させることが重要であるとの考えを示した。
続いて,運営会議の坂入 実議長が,平成16年度の結果報告と今後の活動計画として,(財)日本医療機能評価機構と連携して「医療安全」をテーマに共同検討会を設置し,平成17年度から2年間にわたり,年4回程度開催することなどを報告した。
JAHISは,厚生労働省の「保健医療分野の情報化に向けたグランドデザイン」に沿った電子レセプトの普及や,標準的電子カルテの整備に積極的に取り組んでおり,各部会の報告も,それらに関連した内容が中心であった。医事コンピュータ部会の加藤隆一部会長からは,グランドデザイン目標設定の中間年を終了して,医療機関全体における電子レセプト普及率は10.2%という現状の報告と,審査支払機関とタイアップした メーカー説明会の開催や自治体医療制度の情報共有と標準化の推進など,普及に向けた具体的な活動内容などが報告された。また,医療システム部会報告では篠田英範運営幹事が,平成16年度から経済産業省の委託を受けて行っている,医療情報システムにおける相互運用性推進普及プロジェクトの現状報告を行った。同事業は国のモデル事業として平成17年度以降3年間にわたって続けられることになっており,相互運用可能なシステム構築基盤を整備していくことになるという。
担うべき役割がますます高まっているJAHISであるが,今後は,標準化の啓発,普及・推進を目指した「標準化基礎コース」など,会員企業の社員向けの人材育成事業に,さらに力を入れていくという。また,会員相互の情報連携強化や会員同士のビジネスチャンス拡大を支援するWebコンテンツを利用した事業にも,新規事業として取り組んでいく。
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