メイン会場で開催された
シンポジウム風景
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ランチョンセミナー会場風景
(東芝)。 テーマは「Ditterential THIの臨床最前線」。定員を超える参加者が集まり,立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。
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菅原基晃 会長
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5月20日(金)〜22日(日)の3日間にわたり,日本超音波医学会第78回学術集会(JSUM2005)(会長:菅原基晃・東京 女子医科大学附属日本心臓血圧研究所基礎循環器科教授)が東京国際フォーラムで開催された。超音波医学は現在,非侵襲的診断法としての重要性がますます高まっている。さらに,画像の三次元化の実現という技術の進歩とともに,もともと超音波が収集している信号を有効に利用し,心機能,血管弾性,組織弾性などの定量的な情報から機能を評価するための研究が進んでおり,今後の展開が注目されるところである。
本学術集会のメインテーマである“画像と機能の超音波”は,こうした流れを背景に決定されたものであり,菅原基晃会長は,診断のみでなく治療への応用も超音波医学の今後の重要な発展の方向であるとしている。シンポジウムやパネルディスカッションでも「tissue
elastography」,「3D画像の進歩」,「血管エコーの標準化に向けて」など,新技術をテーマに超音波の役割の拡大へとつながる演題が多数設けられた。また今回は,超音波診断法の飛躍的な進歩を支えてきた先進機器の展示を重要な学術プログラムの一環と位置付け,「展示デモ:フロンティア・テクノロジー」と名付けた企業各社のデモンスト レーションが組み込まれた。展示会場中央に用意された特設ステージでは,各社とも最新技術とその臨床応用をアピールするデモンストレーションを行い,多くの人が発表に耳を傾け,盛況だった。
会期中には招待講演2題,シンポジウム11題,教育セッション12題が設けられ,パネルディスカッションやワークショップなどで積極的に意見が交わされた。
次回の第79回学術集会は,2006年5月26日(金)〜28日(日)にかけて,大阪府立成人病センターの田中幸子氏を会長に,大阪府の大阪国際会議場で開催される予定だ。
招待講演
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【招待講演1】 Tissue Doppler
Echocardiography−a major technical advance
with impacton the understanding, diagnosis,
and treatment of heart failure
Alan G. FRASER(Wales Heart Research Institute,
University of Wales, College of Medicine,
Cardiff, UK)
【招待講演2】中国におけるHIFU治療
Feng WU(Institute of Ultrasonic Engineering
in Medicine & Clinical Center for Tumour
Therapy, Chongqing Medical University, China) |
シンポジウム
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【シンポジウム1】 ストレイン1−Tissue
Elasticity Imaging
座長:植野 映(筑波大学大学院機能形態回復医学),椎名 毅(筑波大学大学院システム情報工学研究科)
【シンポジウム2】 超音波治療の現状と将来
座長:岡井 崇(昭和大学医学部産婦人科学教室),梅村晋一郎((株)日立製作所中央研究所)
【シンポジウム3】 腹部超音波診断の新技術
座長:森安史典(東京医科大学第4内科),山口 匡(千葉大学工学部)
【シンポジウム4】 ストレイン2−心筋strainライブシンポジウム
座長:竹中 克(東京大学医学部附属病院検査部),三神大世(北海道大学医療技術短期大学保健学科)
【シンポジウム5】 子宮頸管の超音波所見とその臨床的意義
座長:吉田幸洋(順天堂大学浦安病院産婦人科),沖津 修(つるぎ町立半田病院産婦人科)
【シンポジウム6】 前立腺癌における超音波医学の進歩
座長:棚橋善克(棚橋よしかつ+泌尿器科),中村昌平(自衛隊中央病院泌尿器科))
【シンポジウム7】 国際シンポジウム−Wave intensity
座長:Alan G. FRASER(Wales Heart Research Institute,
University of Wales, College of Medicine,
Cardiff,UK)
Motoaki SUGAWARA(Department of Cardiovascular
Sciences, Tokyo Womenユs Medical University,
Tokyo, Japan)
【シンポジウム8】 胎児心機能評価−特に心不全をどう評価するか
座長:前野泰樹(久留米大学総合周産期母子医療センター小児科),佐藤昌司(九州大学周産母子センター)
【シンポジウム9】 頸動脈超音波−診断治療への応用
座長:岡田芳和(東京女子医科大学脳神経外科),小林英一(千葉大学脳神経外科)
【シンポジウム10】 3D画像の進歩
座長:蜂屋弘之(千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター),松尾裕英(四国電力総合健康開発センター)
【シンポジウム11】 血管エコーの標準化に向けて
座長:松尾 汎(松尾循環器クリニック),尾崎俊也(幸循会OBPクリニック臨床検査科) |
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日立メディコ。 赤い受賞リボンが目を引くブース正面には,2004年のRSNAでCum
Laudeを受賞した「Real-time Virtual Sonography」を展示。あらかじめ撮影しておいたCTボリュームデータから,超音波画像と同一断面の再構成画像をリアルタイムで描画できる。また,「Real-time
Tissue Elastography」は,組織の固さの違いを色で表現することにより,特に乳がんの早期診断などに役立つという(TOPICS参照)。 |
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持田シーメンスメディカルシステムズ。
ブースには「ACUSON」,「SONOVISTA」,「SONOLINE」の各シリーズを展示。「ACUSON
Sequoia」は,発売当時のプラットフォームを生かし最先端の仕様にバージョンアップ可能。完全にフリーハンドで画像調整が行われ,常に最適化される。また,「SONOVISTA-ColorFD」は日本の産婦人科領域に合わせ,胎児計測など細かいところまで行き届いたソフトウエア構築が好評だという。 |
TOPICS
Real-time Tissue
Elastography
乳がんの診断に威力を発揮 |
植野 映・筑波大学病院乳腺甲状腺内分泌外科助教授は,筑波大学と日立メディコの共同研究により開発した「Real-time
Tissue Elastography」(以下,Elastography)の有用性をいち早く評価し,2003年には世界で初めて臨床応用の発表を行った。今回の学術集会でも,Elastographyをテーマとしたシンポジウムで座長を務めた植野氏によると,超音波診断には大きく2つの問題点があるという。1つはCTやMRIなどに比べて手技に高い技術力が要求されること,もう1つは偽陽性が多いことだが,どちらもElastographyによって大きく改善されるという。まず技術力の問題は,組織の固さがわかるElastographyの機能を用いたトレーニングを行えば,わずか3か月でも数年の経験者と同程度の技術が身に付けられるという。さらに腫瘍の固さの違いを弾性スコアとして色で表示するため,Bモードでは同じように見える腫瘍も,その部分にプローブを当て軽く押さえて揺らすだけで,がんの疑いがあるかどうかを瞬時に判断できる。「おそらく偽陽性の半分はなくせるのではないか。生検の減少も期待できる。患者さんが余計な不安を持たなくて済むし,なにより医療費の抑制につながる」と植野氏。さらに,将来的にはさまざまな分野での応用が可能とのことで,「Elastographyはまだ発展途上です。どんどん改良されているから面白いですよ」と笑顔で語った。今後の展開が注目される技術である。
植野 映氏(右)と日立メディコマーケティング本部長の佐々木 明氏。
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