取材報告

2005
在日ドイツ商工会議所が医療シンポジウムを開催
「急速に進む医療制度改革――ドイツと日本における課題と対策」

会場風景


ペーター・バロン 氏
ペーター・バロン 氏

 

クラウス・テオ・シュレーダー氏
クラウス・テオ・シュレーダー氏

 

黒川 清 氏
黒川 清 氏

 4月から始まった「日本におけるドイツ年2005/2006」の  イベントの一環として4月28日(木),在日ドイツ商工会議所(ペーター・バロン会頭)主催のシンポジウム「急速に進む医療制度改革――ドイツと日本における課題と対策――」が皇居前・パレスホテルを会場に開催された。日独の医療制度改革の課題を検証しようというもので,医療関係者ら400人以上が会場を訪れた。

 はじめに,在日ドイツ商工会議所会頭のペーター・バロン氏が挨拶に立ち,公的医療制度を早くから実施してきた日独の制度にはいくつかの共通点があり,制度に軋みが生じている現在,両国の医療関係者が医療技術,薬品,バイオテクニックなどに関して議論することはきわめて有意義であると語った。

 第1部では,ドイツ連邦保健・社会保障省事務次官のクラウス・テオ・シュレーダー氏と日本学術会議会長の黒川清氏が,「日本とドイツにおける医療政策」をテーマに講演した。シュレーダー氏はドイツの医療政策の問題として,少子高齢化による医療費の高騰と健康保険組合の赤字拡大が予想されるという点を挙げ,2003年から医療費の給付体系,患者の自己負担率などに関する具体的な改革を実行していると述べた。成果として,2004年の健康保険組合の黒字は50億ドルを超えたが,今後は就業者の収入を基準にした保険料率の決定が難しくなるとし,早急に別の方法で財政基盤づくりをする必要があると述べた。また黒川氏は,日本の医療制度を考える前に,先進国として果たすべき役割があるとの観点から考えを述べた。医療制度改革の裏には,“生活習慣病”に莫大な医療費がつぎ込まれている先進国とは対照的に,世界の全人口の約8割が十分に医療を受けられないという現実があるのを忘れてはならないと語った。

 第2部の「医療のクオリティーとコストパフォーマンス」では,医療制度進捗評価専門委員会副会長のペーター・スクリーバ氏が,ドイツにおける国立病院と私立病院との対比から,国立病院は品質を維持したままコスト削減することは可能だと話した。また,日本医師会常任理事の土屋隆氏は,いま医療に求められているのは安全の確保と質の高さであるとし,独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事の土井脩氏が,医薬品や医療機器をより早く,より安全に患者に届けるためのシステムの構築が,医療の質の向上のために重要であると述べた。さらに第3部では,「医療分野における産学連携」をテーマに,シャリテー産科クリニック院長のヨアヒム・ドゥーデンハウゼン氏と(財)先端医療技術振興財団理事長の井村裕夫氏が,ドイツと日本の産学連携の現状についてそれぞれ紹介した。

 最後に,本シンポジウムのスポンサー企業でもあるバイエルヘルスケア社グローバル医療政策部長のミヒャエル・ショットラー氏,日本シエーリング株式会社常務取締役のニコラウス・ミュ ラー氏,シーメンス旭メディテック株式会社メディカルソリューションマーケティング本部・取締役・本部長のベルンド・レネバウム氏,テュフジャパン株式会社テュフズードグループWG1客員,テュフインフォサービス部長の村山靖氏による,「日本の医療制度に対するドイツ企業の提言」と題したパネルディスカッションが行われた。ドイツの医療制度改革の具体策や日本の医療の効率化を高めるための方策に焦点が当てられ,活発な議論が交わされた。


ペーター・スクリーバ 氏
  土屋 隆 氏   土井 脩 氏   ヨアヒム・ドゥーデンハウゼン 氏   井村裕夫 氏
ペーター・
スクリーバ 氏
  土屋 隆 氏   土井 脩 氏   ヨアヒム・
ドゥーデンハウゼン 氏
  井村裕夫 氏
ミヒャエル・ショットラー 氏   ニコラウス・ミュラー 氏   ベルンド・レネバウム 氏   村山 靖 氏    
ミヒャエル・
ショットラー 氏
  ニコラウス・
ミュラー 氏
  ベルンド・
レネバウム 氏
  村山 靖 氏    

●問い合わせ先
在日ドイツ商工会議所 ドイツ年担当事務局
TEL 03-5276-8827,8744 
http://www.dihkj.or.jp