難波 清 氏
(医療法人ブレストピア
理事長)
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古澤秀実 氏
(ブレストピアなんば病院)
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坂元吾偉 氏
(財団法人癌研究会)
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日本初の乳腺疾患専門医療機関として発足し,トップレベルの専門スタッフや最先端機器をそろえた医療法人ブレストピアは3月23日(水),新高輪プリンスホテル(東京)において,MRガイド下集束超音波手術(以下,FUS)に関するプレスセミナーを開催した。セミナーでは,FUSの最終段階の臨床試験(国際間共同多施設臨床試験:BC004)の開始を発表するとともに,「乳房を切らずに生存率100%へのチャレンジ――乳がん治療を変える,集束超音波手術の最新動向」をテーマに,3氏がFUSの革新性や有用性について解説した。
FUSはMRIで病巣の位置と治療効果を確認しながら,超音波を1点に集中させて乳房内のがんに照射,熱凝固治療を行う。従来の治療法よりも侵襲性がきわめて低く,乳房を傷つけることもなく,安全に治療が行える。日帰り治療が可能で,同じ病巣を何度でも治療することもできる。2001年にFDA(米国食品医薬品局)の認可を得て以来,浸潤性乳がんに対する国際間共同多施設臨床試験BC001およびBC002が米国,カナダを中心に世界7施設において終了している。また,BC003については,日本で唯一参加を要請されたブレストピアなんば病院(宮崎)が2005年2月に試験を終えたばかり。ブレストピアでは2004年5月からFUSによる乳房温存手術を自費診療で実施しているが,4月18日には,世界に先駆けてFUSの最終段階の臨床試験BC004を開始したという。国際間共同多施設臨床試験のプロトコル作成に日本の一民間病院が中心的な立場で参加するのは非常にまれなケースである。
講演では初めに,難波 清氏(医療法人ブレストピア理事長)が,ブレストピアの乳腺疾患治療に対する取り組みとFUSの概要について解説。ブレストピアの取り組みとして,乳がんの啓発,検診,治療から終末期までの一貫した医療サービスを提供するためのトータルヘルスケアシステムを構築し,また,「乳がんによる生命と乳房の喪失をゼロに!」を目標に全国規模での活動を続けていることなどを紹介した。
続いて古澤秀実氏(ブレストピアなんば病院乳腺科部長兼病理部部長,FUS室室長)が,乳腺腫瘍に対するFUSの最新動向を紹介。臨床試験BC003を非常に良い成績で終えたことと,4月からの新しい臨床試験BC004を開始することを併せて報告した。
最後に日本乳癌学会理事長を務める坂元吾偉氏(財団法人癌研究会癌研究所乳腺病理部部長)がFUSの乳がん治療にもたらす意義について述べた。また,癌研究会は日本で最も乳がんの症例数が多いが,坂元氏はそうした豊富な経験を踏まえた上で,「FUSをすれば必ずしも放射線治療を行わなくてもよいというわけではなく,これを実現するためには画像診断に優れた医師や環境がなければならない」と,FUSはいまだ発展途上にあることを示唆した。
乳がんは,日本人女性の部位別がんの罹患率トップとなり,年間の死亡数も1万人弱となっている。しかし,わが国では乳がんに対する知識や理解の不足,検診体制の不備など,いまだ課題が残っている。こうした現状に対し,ピンクリボン活動が盛んに行われたことで,最近では徐々に国民の関心は強まっている。これらの活動とともに,乳がんによる死亡率の低減と乳房温存手術をより推進するためにも,今後,FUSの有効性が早期に示されることが期待される。
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