2005年
年頭所感を
発表する
桂田昌生JIRA会長
|
|
毎年恒例の社団法人日本画像医療システム工業会(JIRA)会長 桂田昌生氏の年頭所感の発表が1月12日,KKRホテル東京において行われた(以下,要旨抜粋)。
昨年は,史上最多の台風の上陸や中越地震,釧路沖地震やスマトラ沖地震・津波など,自然災害による被害が多く,被災された皆様方には心からお見舞い申し上げます。われわれ医療機器業界に携わる者にとっては,被災された医療機関の状況確認や医療機器等の迅速な復旧が,最重要な使命であるとの認識から,加盟企業各社が一丸となって,装置の貸出しなども含め,全力で復旧作業に当たってまいりました。JIRAとしましては,今後,対応状況の詳細な情報収集・分析を通して,さらなる災害対応の強化に努めていきたいと考えております。
日本の医療制度は,国民皆保険制度に支えられ“いつでも,誰でも,何処でも”医療機関を選択できるという,他国に例を見ないすばらしい制度であり,男女とも平均寿命が他国を大きく上回るという結果にも繋がっていますが,反面すばらしさの維持のため,財政面も含め種々の問題が歪として発生し,医療の質の低下も危惧されています。
現在,日本では社会保障制度の整備,その一環である医療制度,保険制度改革が大きな課題になっています。これにより,医療を取り巻く環境は,IT化の進展,政府による医療ネット ワーク化の推進,公的医療機関の独立行政法人化,DPC導入など,大きく変化しています。このような環境変化は,少なからず病院経営にも影響を与え,ひいては画像診断機器・システムに対する期待も,高機能・高診断能にとどまらず,患者様や検査者の方への負担軽減,アプリケーション・ワークフロー改善あるいは病院経営への寄与など,医療サービスに貢献するさらなるニーズが生まれています。
このような急速な環境変化の中で,日本の医療機器産業が発展していくためには,常々申し上げている通り,厚生労働省の『医療機器産業ビジョン』の確実な実行を図ることが重要であり,ビジョンを具現化するための仕組みの構築が必要です。
一方,具体的な仕組みづくりを推進する上で,解決していくべき課題も多くあります。
医療保険における技術の適正な評価という面において,研究開発やその後の販売にいたる総合コストや維持管理コストが,どのようにリターンされるかが重要になります。この保険償還の仕組みにおける画像診断機器等の技術料評価プロセスの透明化,当該技術の医療への貢献,付加価値に対する評価,維持管理コストの評価が,重要なポイントであると思っています。
技術の医療への貢献という意味で,興味深い調査があります。JIRAが,医学会のご協力により“早期がんと進行がんの治療効果と経済性”について調査したところ,がんが早期に発見できた場合,予後(5年生存率)と平均診療保険点数(医療費)で,進行がんとの比較において,顕著な差があることが明確になりました。画像診断機器・システムの発展により,がんの早期発見が可能となり,その結果,5年生存率の向上や医療費の削減にも大きく貢献していると言えます。
また,装置の安全な使用と維持管理コストについても,参考となる調査結果があります。画像診断機器・システムの 導入実態と安全確保状況を把握するため,JIRAが実施した調査(5年に1回実施)によりますと,装置の買い替えの年数が98年の調査に比して,平均で約2年延び10.5年と初めて10年を超えました。反面,保守点検の実施率が約3ポイント落ち,平均で71.3%,最近,導入が増えている中古機器の保守点検にいたっては,平均35.3%にとどまり,改正薬事法における市販前から市販後までの安全確保を図るという面では,問題点が浮き彫りにされました。
近年,画像診断機器・システムの発展には目覚しいものがあり,国民のQOLの向上,医療の発展,そして効率化に貢献しております。JIRAとしましては,さらにこれを推進していくため,平成17年は次のような基本姿勢で活動を推進していく所存です。
対外活動の面では,医療環境の整備が進展していく中,『医療機器産業ビジョン』を具現化するための仕組みの構築や課題解決のため,厚生労働省,経済産業省をはじめとした行政各機関や日本医学放射線学会,放射線技師会などの医学関連団体,さらには海外業界団体との連携をさらに強化し,質の高い医療の提供に貢献してまいります。また,内部体制を強化し,JIRAの活動を活性化していくため,加盟各企業に対する基盤サービスの整備,コンプライアンス体制の強化などを通し,社会貢献(CSR)活動も積極的に支援していきます。
JIRAとしましては,今後も画像診断機器に携わる立場から,産・官・学が一体となって,質の高い医療の提供が実現できるよう,具体的な提言を行っていきたいと考えております。
|