INNERVISION

第23回 日本医用画像工学会大会
(JAMIT Annual Meeting 2004)開催


 

 


仁木 登 大会長
(徳島大学)


今回,すべてがポスター展示となった研究発表では,活発な意見交換がなされた。


企業展示(17社)ではCADシステムを中心に紹介。

 第23回日本医用画像工学会大会(JAMIT Annual Meeting 2004)が8月4日(水),5日(木)の2日間,法政大学ボアソナード・タワー26階(東京)において開催された。今回は研究発表がすべてポスター展示発表となり,参加者にとってはステージ発表よりも,より積極的に討論に参加する機会が増えたが,このことは今年の大きな特長と言える。大会長に仁木 登氏(徳島大学工学部光応用工学科)を迎え,前年より多い326名の参加者を数え,活発な発表と討論が展開された。
 第1日目に行われたオーガナイズドセッション1「医用イメージングの最前線」では,尾川浩一氏(法政大学工学部)と本間一弘氏(医薬品医療機器総合機構)が司会を務め,CTやMRIなど主要なモダリティに関する最新技術動向について講演が行われた。はじめに,杉原直樹氏(東芝メディカルシステムズ(株)CT事業部CT開発部)が最新の32列マルチスライスCTについて,32列装置の概要や臨床上のメリット,画像を紹介した。次に,巨瀬勝美氏(筑波大学物理工学系)がMRIの最新動向について,13C,129Xeなどの新しいコントラストエージェントや全身MRI,分子イメージングなどを挙げて進化を続けるMRIの現状を簡潔に述べた。続いて,村山秀雄氏(放射線医学総合研究所)がPET装置と技術について解説。今後の課題として,高解像度・高感度化,低価格化,目的別の最適化,要素技術の開発・標準化などがあるとした。続く平山 昭氏(GE横河メディカルシステム(株)画像応用技術センター)が注目のPET-CTについて説明。PET単独機に比べ,吸収補正画質の向上によるPET画像の画質の向上,および重ね合わせの精度の向上などによる診断能の向上が認められるとした。次に,椎名 毅氏(筑波大学大学院システム情報工学研究科)が,「医用超音波イメージングの最前線」として,リアルタイム3Dやハーモニックイメージング,組織弾性イメージングなどを紹介した。最後は,竹端 榮氏(オリンパス(株)医療研究開発本部医療研究部)が,最新の内視鏡画像診断技術について解説。照明光分光特性の工夫により,拡大倍率やCCDの画素数向上では得られない生体情報を可視化する光診断技術を紹介した。
 招待講演では,医用画像工学以外の分野から,高名な3氏による講演が行われた。辻内順平氏(東京工業大学名誉教授)が司会を務めた講演1では,新井賢一氏(東京都臨床医学総合研究所研)が「ゲノム医科学とシステム生物学の課題」について講演。システム生物学の流れにおけるイメージング技術の役割などについて述べた。講演2では赤塚孝雄氏(山形大学工学部)が司会を務め,冨田 勝氏(慶應義塾大学先端生命科学研究所)が「メタボローム解析と細胞シミュレーション」と題して,同氏らが開発した,コンピュータを利用して多数の代謝物を一斉に短時間で計測する「メタボローム解析」技術について解説した。講演3では,飯沼 武氏(放射線医学総合研究所)の司会のもと,山口直人氏(東京女子医科大学)が「がん予防戦略における情報・数理・疫学」について講演。がん予防戦略の最適化では,数理的・疫学的アプローチが重要であることを述べた。
 2日目のオーガナイズドセッション2では,田村進一氏(大阪大学大学院医学研究科)と池田 充氏(名古屋大学医学部)が司会を務め,「CADの最前線」について9氏が講演を行った。はじめに,土井邦雄氏(シカゴ大学)が「CADの現状と展望」として,CADの基礎概念や現状,将来の可能性について講演。21世紀のCADの予測として,2000〜2010年は初期的CAD実用化の進展期,2010〜2020年は総合的CAD開発/臨床実用期,2020年以降は成熟期となるとした。次に米国から,Michael F. McNitt-Gray氏(David Geffen School of Medicine at UCLA)が「NCI Lung Image Database Consortium(LIDC)」を発表。National Cancer Institute(NCI)のLung Image Database Consortium(LIDC)が,肝臓がん診断の発展やトレーニングなどを目的に,CT画像をもとにしたCAD診断のためのデータベースを作成していることなど,LIDCの取り組みについて紹介した。次に,藤田広志氏(岐阜大学大学院医学研究科)が,「知的クラスター岐阜・大垣地域におけるCADプロジェクト」と題して講演。平成16年度の同地域クラスターとして,県内外企業や研究機関による「画像診断支援」開発プロジェクトの研究体制などについて解説した。続いて清水昭伸氏(東京農工大学大学院共生科学技術研究部)が「複数臓器の同時抽出アルゴリズムの開発と課題」と題して,文科省科研費特定領域研究の概略と,三次元CT画像から複数臓器を同時に抽出する臓器横断型CADシステムについて述べた。次に,木戸尚治氏(山口大学工学部)が「びまん性肺疾患のCAD」と題して,陰影が多彩で種類が多いびまん性肺疾患に対して,診断論理の明確化と診断精度の向上を実現するためのCADシステムを紹介した。続く森 健策氏(名古屋大学大学院情報科学研究科)は,「知的CADとしてのナビゲーション診断システム」について講演。人体内部の自由な移動・検査が可能なナビゲーション診断と,知的自動診断を統合したナビゲーション型知的CADシステムを紹介した。次の「肺がんCAD」では,河田佳樹氏(徳島大学工学部)が発表。肺がんCADとして,低線量三次元CT画像を用いたがんを疑う結節を検出する存在診断CADと,精査用三次元CT画像を用いてがんを疑う結節をがん・非がんに区別する鑑別診断CADを紹介した。次に,本谷秀堅氏(山形大学工学部)が「知的CADのための複数モダリティ画像の統合」と題して,高精度な自動検出や,多様な診断情報の提示・診断支援に有用な複数モダリティ画像統合 データベースの構築の方法などを紹介した。最後に杉本直三氏(京都大学大学院情報学研究科)が「心血管CAD」と題して,文科省科研費特定領域「多次元医用画像の知的診断支援」の「時系列病理形態理解に基づく知的CAD」班での取り組みを紹介した。
 ポスター展示発表では,各研究発表の時間にはパネル前で多くの参加者が熱心に討論する姿が見られた。また,今回はCADシステムを中心とした企業展示も充実していた。一方で,辻内順平氏の会長退任と同時に,赤塚孝雄氏の会長選任が決定されるなど,大きな節目も迎えたが,医学と工学の融合を図る場としての役割がますます期待される。
 なお次回,第24回は縄野 繁氏(国立がんセンター東病院)を大会長に,同時期・同会場にて開催される。

●問い合わせ先
 日本医用画像工学会事務局
 TEL 03-5684-1636
 URL http://www.jamit.jp


● オーガナイズドセッション1「医用イメージングの最前線」


司会:尾川浩一 氏

杉原直樹 氏

巨瀬勝美 氏

村山秀雄 氏

司会:本間一弘 氏

平山 昭 氏

椎名 毅 氏

竹端 榮 氏

● 招待講演1「ゲノム医科学とシステム生物学の課題」


司会:辻内順平 氏

新井賢一 氏

● 招待講演2「メタボローム解析と細胞シミュレーション」


司会:赤塚孝雄 氏

冨田 勝 氏

● 招待講演3「がん予防戦略における情報・数理・疫学」


司会:飯沼 武 氏

山口直人 氏

● オーガナイズドセッション2「CADの最前線」


司会:田村進一 氏

司会:池田 充 氏

土井邦雄 氏

Michael F. McNitt-Gray 氏

藤田広志 氏

清水昭伸 氏

木戸尚治 氏

森 健策 氏

河田佳樹 氏

本谷秀堅 氏

本谷秀堅 氏