INNERVISION

東芝メディカルシステムズ,
Vision for Tomorrow 2004
― 256列マルチスライスCTへの道標
(64列マルチスライスCTの登場)― を開催



会場風景


挨拶する宮成専一郎 氏
(常務取締役関西支社長)


奥村美和 氏
(CT開発部臨床応用
開発担当グループ長)


大久保 優 氏
(CT事業部
国内営業担当部長)


【臨床講演(1)】


座長:楢林 勇 氏
(大阪医科大学
放射線医学教室教授)


東 将浩 氏
(国立循環器病センター
放射線診療部)


松木 充 氏
(大阪医科大学
放射線医学教室)


【臨床講演(2)】


座長:杉村和朗 氏
(神戸大学大学院
医学研究系教授)


Edward P. Shapiro 氏
(Johns Hopkins Bayview
Medical Center Professor)


片田和廣 氏
(藤田保健衛生大学
医学部放射線医学教室教授)

 4列以上のマルチスライスCTでは国内約800台,世界で約1900台の納入実績を持ち,マルチスライスCTで世界をリードする東芝メディカルシステムズ(株)は9月2日,0.5mmスライス厚で64列同時撮影マルチスライスCT「Aquilion 64列システム」の発売開始を発表した。そして,同システムおよび臨床的有用性を紹介する場として,マルチスライスCT臨床講演会“Vision for Tomorrow 2004 ― 256列マルチスライスCTへの道標(64列マルチスライスCTの登場)―”を9月11日,帝国ホテル大阪(大阪市北区)にて開催した。参加者は300人を超え,注目度の高さがうかがえた。
 講演会は,第1部として,最新技術紹介および「Aquilion 64列システム」の紹介が行われた。最初に,多列化へと進むマルチスライスCTの技術とともに,ユーザーの関心が高い被曝低減について,同社のコンセプトと技術が奥村美和氏(CT開発部臨床応用開発担当グループ長)より発表された。同氏は,被曝線量評価指標として,単に被曝線量のみの評価指標では なく,画質も考慮した評価指標であるDEI(Dose Efficiency Index)を紹介した。そして,DEI指標を用いた画質を考慮した被曝低減技術として,焦点外X線の低減や焦点移動のないX線管の開発,画像フィルタの一種である量子フィルタの開発,各患者さんに対して適切な線量と最良な画像を得るためのス キャン条件を設定するプログラムであるスキャンシミュレータなどを紹介した。
 続いて,「Aquilion 64列システム」の開発コンセプトを中心に,大久保 優氏(CT事業部国内営業担当部長)が紹介したAquilionでは,高S/N,0.5mmスライス厚でのアイソトロ  ピックデータによる画像診断を行うことで,他のX線装置を代替しうるComputed Volume Radiography(CVR)のコンセプトで開発が進められてきた。そして今回,「Aquilion 64列シス テム」では,高密度・高集積検出器を採用することで,冠動 脈の分解能がより一層高まったとして,Cardio Vascular Radiograpy(CVR)という新しいコンセプトへと進化したとし,新キャッチフレーズとして“CVRからCVRへ”を表明した。さらに「Aquilion 64列システム」では,心臓全体を7秒でスキャンでき,冠動脈の分解能の向上により,2.5mmのステントの開存状態,ステント内内膜増殖,プラークの性状解析などを可能としているとした。
 第2部の臨床講演(1)では,楢林 勇氏(大阪医科大学放射線医学教室教授)を座長に,「マルチスライスCT診断のポイント」をテーマとして,16列のマルチスライスCTでの撮影および診断についての講演が行われた。
 「大動脈・末梢動脈疾患に対するマルチスライスCTの応用」について発表した東 将浩氏(国立循環器病センター放射線診療部)は,CTアンギオを撮る際の造影剤の注入方法や撮影タイミングについて述べ,大動脈疾患での大動脈瘤と大動脈解離の撮影や診断,さらに造影剤の低減の試みについて述べた。下肢大動脈疾患では,閉塞性動脈硬化症,血栓塞栓症,バー  シャー病の撮影や診断,さらにステントの内腔を見る方法として,軌道同期サブトラクションを紹介した。
 「マルチスライスCTにおける腹部画像診断―撮影から診断まで―」について発表した松木 充氏(大阪医科大学放射線医学教室)は,造影検査での注入量,注入速度,注入時間などについて述べ,肝・腎・胆・膵での撮影や診断,精査における各時相について述べた。そして,検査する上で対象となる臓器,疾患に合った体重別造影剤投与量,検査法を選択すべきであること,肝細胞がんでは高速注入下で注入時間を一定にし,至適タイミングで撮影するべきであるとした。
 臨床講演(2)では,杉村和朗氏(神戸大学大学院医学研究系 教授)を座長に,「32列マルチスライスCTから256列まで」のテーマで,32列・64列の臨床的有用性を中心に講演が行われた。
 「Clinical impacs of Aquilion 32 on cardiac imaging」について発表したEdward P. Shapiro氏(Johns Hopkins Bayview Medical Center Professor)は,昨今の心臓CTの進歩は著しいとし,CTでの心臓検査は侵襲性がなく,カルシウムに対する感受性が高いため,カルシウムスコアの評価に適しており,特に32列のマルチスライスCTでの精度は高いとした。さらに,プラーク量のスコアリングの新しい試みとして“Sure-Plaqe”を紹介し,動脈の血管壁の体積と密度に基づいた,より正確なリスクスコアが出せるとした。
 最後に,片田和廣氏(藤田保健衛生大学医学部放射線医学教室教授)が「マルチスライスCT 4列から256列への進化」のテーマで,64列の臨床的有用性を中心に発表した。同氏は,64列へと多列化が進むにあたって,体軸方向32mmの範囲をすべて,最小スライス幅0.5mm×64素子で構成したこと,コーン角が広がることによるアーチファクトを低減するためのアルゴリズムの工夫を図ったこと,さらに,ボリュームとしてファイルの管理ができるようにしたファイルシステムなどの開発が重要なポイントであるとした。そして,64列での臨床上のメリットとして,ほとんどの臓器が0.5mmのスライス厚で10秒以下のスキャン時間で得られるスキャン時間の短縮,動脈相での静脈の重なりが減少するなど,ボリュームデータとしての時間分解能の向上,従来1mmスライスを用いざるを得なかった腹部領域において,0.5mmスライス厚の使用が可能となったため,微細な血管構造などの描出を可能としたハイリゾリューションスキャンの実現,心電同期スキャンにおけるスキャン範囲の広がりなどを挙げた。そして最後に,4列から始まり,今回発表された64列までのマルチスライスCTは,最終的には256列へとつながる過程であるとして,256列システム開発の現況を紹介して講演を終えた。

●問い合わせ先
東芝メディカルシステムズ(株)CT事業部
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