撮像時間は10分前後,血管は1分前後。全身を対象にした検査では,さまざまなコントラストによる撮像とすべての血管を描出することができる。また,臓器と血管を重ね合わせた表示では,解剖学的な位置情報がわかりやすくなる。
シーメンスの事業内容を紹介したBernd Rennebaum 氏 (シーメンス旭メディテック(株)MSM本部長)
MRIの基礎と 日本市場について解説した 中辻 博 氏 (シーメンス旭メディテック(株) メディカルソリューション マーケティング本部副本部長 CT/MRI統括責任者)
Bernd Montag 氏 (シーメンスMR事業部副社長)
福田国彦 氏 (東京慈恵会医科大学 放射線医学講座教授)
シーメンス旭メディテック(株)は7月30日,ホテル西洋銀座(東京)において,同社の最新MRI装置「MAGNETOM Avanto」の1号機導入事例について,東京慈恵会医科大学の福田国彦教授(放射線医学講座)を招いたプレスセミナーを開催した。 セミナーではBernd Montag氏(ドイツ・シーメンスMR事業部副社長)が「Tim will change MR forever」と題して,部位別のコイルが多く,チャンネル数も限られたMRIの現状を打破したTim(Total imaging matrix)テクノロジーの特長をアピールした。Timは,32個のRFチャンネルを持ち,最大76個のマトリクス・コイル・エレメントを全身に配置して実効FOV205cmで真の全身撮像を可能にした。コイルを選ぶのではなく,検査部位を選ぶ革命的な検査を実現する。一方で,騒音を従来比で97%カットした。同氏は,マルチスライスCTのような感覚で,より安心して検査を受けられるだろうと述べた。 続いて福田教授が,「新しいMRI Timの臨床応用」と題して講演。東京慈恵会医科大学では,導入して1か月になるが,毎日が新しい発見だという。同氏は“Timのインパクト”として,@従来は1回で1部位を撮像していたが,Timを用いれば撮像部位に応じたコイルの脱着ではなく,全身に配置された表面コイルのなかから使用するものを選択できること,AS/Nが大幅に向上した表面コイル,B任意方向のパラレルイメージングが可能で,さらなる高速撮像を実現していることを挙げ,これらにより真の意味での全身MRIが現実となったとした。また,全身MRIの臨床利用として現時点で考えられるのは,@悪性腫瘍の病期診断と治療効果判定,A転移性骨腫瘍や多発性骨髄腫などの全身骨の評価,B多発性関節炎や筋炎などの全身の骨関節,軟部組織の評価,C動脈硬化症や血管炎などの全身の心血管系の評価,D健康診断目的,などだが,今後使用を続ければ,まだまだ利用範囲はひろがるだろうと述べた。一方で福田教授は,現状の問題点として,現在の保険診療制度下での制約(診療報酬点数など)や,膨大な画像データが発生することから,読影システムの再構築,画像診断医のマンパワー不足など,マルチスライスCTが登場したときと同じような問題が再現される可能性なども示した。とはいえメリットは多く,高速撮像が可能となり息止めが不可能な小児や安静呼吸下での撮像への対応など,MRI自体の適応の拡大が見込まれると同時に,高速・高精細を実現したことで,マルチスライスCTのような使い方ができる点を評価した。さらに,Timにより患者さんが受ける恩恵として,検査時間の短縮,複数回の検査予約からの解放,必要に応じて全身精査が可能,閉所恐怖症からの解放,騒音の軽減を挙げ,Timテクノロジーによる新しいMRIへの期待を示した。
●問い合わせ先 シーメンス旭メディテック(株)MSM本部 マーケティングコミュニケーショングループ:平山 TEL 03-5423-8340 http://www.med.siemens.co.jp