慶應義塾大学医学部と国立病院機構東京医療センターは5月12日(水),オリンパス(株),シスコシステムズ(株),日本テレコム(株),(株)フォーカスシステムズと共同で,高速の商用回線を利用し,遠隔地から内視鏡外科手術用カメラの視野を制御する遠隔共同手術を実施したと発表した。
世界初となった今回の遠隔共同手術では,慶應義塾大学病院と東京医療センターを日本テレコムの広域イーサネットサービス「Wide-Ether(ワイド・イーサ)」で接続。通信速度と安全性を両立した暗号方式を利用し,大容量の動画像をほぼリアルタイムにやりとりして,指導者が執刀医に手術指導を行うという仕組みになっている。指導者側からも内視鏡の視野を制御でき,臨床に近い手術が可能だという。
これまでにも,米ニューヨークと仏ストラスブルグを結んだ,ロボット遠隔制御による“リンドバーグ手術”など,遠隔医療分野の研究は盛んに行われている。しかし,高価な専用回線によるネットワークや装置などを使用するよりも,指導医と遠隔地の医師がネットワークを介して作業を分担しながら共同で手術を行うという,より現実的で実用的なシステムが必要と考えられていた。
その一方,慶應義塾大学医学部外科教室などでは,これまでにも遠隔手術指導システムの臨床応用を行っている。2003年1月には,東京医療センターとの間をADSL回線で結んで,世界で初めてインターネットを介した遠隔手術指導に成功している(本誌2003年3月号に報告)。今回は,さらに改良を重ね,高速商用イーサネット回線を利用して内視鏡の視野を操作できるシステムをつくり上げた。古川俊治氏(慶應義塾大学)は,「本システムの高速商用回線(70Mbps)や使用する装置は,従来に比べ比較的安価であり,普及可能な遠隔手術システムとなる」と述べ,今回のようなシステムの普及が実現すれば,地域による医療格差や教育にも貢献すると同時に,国民医療の向上に大きく寄与できると期待しているとした。また,今後の課題として,広域ネットワークを念頭においたセキュリティ対策や,ハイビジョンなどを使用したさらなる高画質化などを挙げ,改良の余地も多いことを示唆した。
発表では,内視鏡手術事故が相次ぐなか,患者への配慮についての質問が出されたが,「内視鏡下手術では良い術野を確定することが重要であるが,本システムを用いれば,高画質な動画像を同時に見ることができ,効果的な指導を行うことができる。これにより,患者は安心して手術を受けられるだろう」と古川氏が回答。患者にとってもメリットが大きいことを強調した。
●問い合わせ先
・慶應義塾大学医学部外科学教室:古川俊治
TEL 03-3352-1211(代)
・独立行政法人国立病院機構東京医療センター
外科:和田則仁
TEL 03-3411-0111(代)
・オリンパス(株)広報・IR室:井内
TEL 03-3340-2010
・シスコシステムズ(株)
アライアンス&テクノロジー:宮脇
TEL 03-5324-4047
・日本テレコム(株)
広報グループ:上村,倉野,岡
TEL 03-5540-8017
・(株)フォーカスシステムズ
新規事業推進室:丸谷,寺本,金子
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