INNERVISION

 



病院の外観と広々とした1階フロア


紀之定保臣医療情報部長
10年先の未来を先取りした新次元のシステムだという。


外来部門の各診察室にある「新総合医療情報システム」の端末。






写真左はICUにある端末。写真中は高次救命治療センター。 装置からの発生源入力により, 物品・物流管理も行える。 写真右のHCUでは, 室外からでも生体情報などが常時モニタに表示される。






病室にはベッドごとに端末を設置しており,利用者はICカードによる認証を行う(写真上・中)。患者のアメニティ向上にも配慮しており,写真下の図書室ではインターネットを利用することも可能。


新次元のインテリジェントホスピタル
岐阜大学医学部附属病院が移転オープン
──完全ペーパーレスフィルムレスを実現

 

 2004年6月1日(火),岐阜大学医学部附属病院(北島康雄院長)が移転し,新病院として開院した。新病院は,これまでの岐阜市司町から,医学部本館とともに同市柳戸に移り,建物は地上9階建て,延べ床面積6万1000m2。1〜3階は外来・中央診療部門・サービス部門が占め,4階以上が病棟で,病床数は旧病院と同じ606床となっている。免震構造の設計で,発電施設もあり,さらに,医師30名看護師80名を擁する国内最大規模の高次救命治療センターが設けられるなど,災害時にも万全の医療体制がとれるよう設計されている。
 新病院では,「インテリジェントホスピタル」をキーワードに,最新のIT技術が導入されている。院内すべてに光ファイバー網を張り巡らし,「新総合医療情報システム」と呼ばれる患者情報を一元的管理する電子カルテシステムを構築。完全フルデジタルのペーパーレス,フィルムレス環境を実現した。
 敷設された光ファイバー網は,バックボーンに10Gbpsの帯域を持つ高速スイッチを採用しており,院内に2800のポートが設置されている。すべてのベッドサイドまでこのネットワークが行き届いており,1Gbpsの速度で通信できるようになっている。このため,マルチスライスCTやMRIの膨大な画像データを圧縮することなく,実データもベッドサイドで参照することができるという。さらに,この光ファイバー網に加え,無線LANも導入しており,いつでも,どこからでも情報にアクセスできるユビキタス環境にもなっている。
 このネットワークを基盤に構築したのが,「新総合医療情報システム」という電子カルテである。このシステムには,旧病院時代のデータも取り込まれており,すべての診療情報を,診療科,部門に関係なく,一元管理するというもので,IT化プロジェクトのリーダーである紀之定保臣医療情報部長は「全人的カルテ」という言葉で説明している。検査や処置,処方の実施などの診療情報は,すべて発生源入力となっており,患者情報や診療行為が正確に記録され,さらに,物品・物流の情報も記録できる。そのため,クリティカルパスの評価や,コスト管理も行えるという。また,チーム医療を基本方針に掲げている同院だけに,スタッフが患者情報やクリティカルパスを共有できるようになっているのも特徴である。医師,看護師,診療放射線技師など,職務に応じ,入力,参照できるよう画面が設計され,従来個々の部門システムが管理していた情報を1つにまとめている。これにより相互チェックができ,医療過誤の防止効果が期待できる。
 「新総合医療情報システム」の端末は,「クリニカルコックピット」と呼ばれているビューワ機能を持っている。CT画像やアンギオの動画像,数値データといった各検査結果を効率的に参照できるようにしたもので,過去のデータはもちろん,最新のデータを検査装置からリアルタイムで呼び出せる。1つの画面上で,情報を表示させることで総合的に閲覧,判断が可能になっているよう設計されている。また,医療文書を統一的に管理する「ドキュメントビュー」という機能も開発された。
 さらに,病室の各ベッドには,光ファイバーの院内ネットワークに接続されたベッドサイド端末が設置されている。タッチパネル方式を採用しており,「新総合医療情報システム」の端末としても機能する。また,患者説明や,情報参照などにスタッフが使用するだけでなく,病院の案内や連絡を表示する院内情報の掲示板や,食事のメニューを選ぶといった患者のための端末としても利用されている。この端末にアクセスするには,ICカードが必要になる。院内にPKI(公開鍵基盤)の認証局があり,暗号鍵を持つICカードをスタッフ,患者がそれぞれ持っており,高いセキュリティを確保している。
 近い将来,在宅でICカードを用いて糖尿病の治療などで在宅しながら病院にある自分の情報にアクセスできるようにするなど,地域全体で情報を共有できるような環境をつくっていくことを目指している。インテリジェントホスピタルとして生まれ変わった岐阜大学医学部附属医病院が,地域の中核病院として担う使命はこれからますます大きくなると言えるだろう。

 

●問い合わせ先
岐阜大学医学部附属病院
〒501-1194 岐阜県岐阜市柳戸1-1
TEL 058-230-6000(代表)
URL http://www.med.gifu-u.ac.jp

   

   
    放射線科には,16列マルチスライス
    CTをはじめ,最新のモダリティがそ
    ろう(写真上)。読影室には,3M,
    5Mピクセルの高精細モニタを導入。
    高度フィルムレス環境を実現してい
    る(写真下)。