第11回目となる胸部CT検診研究会大会が2004年2月13日(金),14日(土)の両日,さわやかちば県民プラザ(千葉県柏市)で開催された。同研究会は1994年に設立以来,10年間にわたり,工学,撮影法,画像処理,診断法の標準化,検診の費用対効果など,幅広い角度から胸部CT検診について研究を行ってきた。大会長を務めた柿沼龍太郎氏(国立がんセンターがん予防・検診研究センター)は,開会の挨拶のなかで,「新しい10年の始まりである」と,今大会の持つ意義を述べた。
大会は,一般演題と特別企画で構成された。このうち,一般演題は7テーマに分けられ,28の発表があった。一方,特別企画は,教育講演,ランチョンセミナー,シンポジウム,特別報告が設けられた。教育講演は,石川浩志氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科腫瘍放射線医学分野)が,マルチスライスCTによる微小肺病変の高分解能CTと病理組織の対比について発表した。また,特別報告は,本研究会会長の金子昌弘氏(国立がんセンター中央病院)が,低線量CTによる肺がん検診の有用性に関する研究をテーマに発表した。このほか,「微小結節の診断の現状と展望」,「肺結核,肺非結核性抗酸菌症を疑う画像所見について」と題した,シンポジウムが行われた。
シンポジウム1の「微小結節の診断の現状と展望」では,まず,新妻伸二氏(労働衛生医学協会)が,小結節の診断法について,腫瘤をGGOと結節影に分類し,さらに,GGOをpureとmixedに分けて検討したと説明。その結果として,10mm以下のpure
GGOは,1〜3か月の観察で消失しなければ1年おきの観察で十分である述べた。また,結節影については,3〜4mmの大きさで発見し,短期間の経過観察で増大した場合は,切除を考えなければならないと報告した。
続いて,日立健康管理センタの中川徹氏が,微小結節の診断の現状について発表した。中川氏は,胸部CT検診が微小な肺野孤立性結節の検出に優れているとして,効率的な診断のために繰り返し検診が重要であると述べた。その上で,どの対象者に,どの間隔で実施するか検討する必要があるとした。また,胸部CT検診の診断基準を検討すべきとして,5mm前後の結節をどのように扱うか,今後の研究に期待したいとまとめた。
最上 博氏(国立病院四国がんセンター)は,10mm未満の微小肺結節の良悪の鑑別が可能か,thin-section CT画像での検討結果を報告した。10mm未満の結節が見つかった155名では,4〜6mmの結節が最も多かったとし,このうち肺がん6例,AAH3例,過誤腫1例に手術を実施したと述べた。これを踏まえ,最上氏は,10mm未満の結節でも,肺がん,AAHの高い可能性を持っているとの見方を示した。
この後,芹澤和人氏(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科放射線診断治療学分野)が,マルチスライスCTで肺がん検診を行った長崎県内3施設における10mm以下の微小結節の診断について発表した。芹澤氏は,結節をpure
GGO,part-solid,solidに分類して検討した結果,pure GGOは円形で境界明瞭なものが多く,part-solidは,最低1回のフォローアップをすべきとした。また,solidは,急速に進行する症例もあり,短期間のフォローアップが必要である報告した。
最後に発表したJames R. Jett氏(Meyo Clinic)は,1999年にマルチスライスCTを使用して行った,1520件の肺がんCTスクリーニング結果を報告した。結節が見つかったのは全体の51%で,計1646個,大きさは3mm未満が最も多く976個だったと述べた。また,PETを使用した微小結節の評価についても発表。10mm以下の結節では,16例中11例,10〜15mmでは31例中26例がtrue-positiveだったと説明した。
このシンポジウムをはじめ,いずれの演題も柿沼大会長の述べる「新しい10年」を見据えたテーマが数多く見られた。次回,第12回大会は,守谷欣明氏(岡山県健康づくり財団)を大会長に,2005年2月11日(金・祝),12日(土)の2日間,岡山県衛生会館三木記念ホールで行われる予定である。
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