行政,企業それぞれの立場から,日本における医療のIT化への意見が出されたパネルディスカッション
「iPACS-Enterprise」(写真上),「RSA SecurID」(同下),オラクル,マイクロソフトの展示もあった。
開原成允 氏 ((財)医療情報システム 開発センター)
豊田 建 氏 (ベリングポイント(株))
3月10日(水),在日米国大使館商務部,日本貿易振興機構(ジェトロ)が主催する「医療のIT化セミナー〜医療システムの日米比較〜」が,赤坂ツインタワーのJETRO IBSCホールで開かれた。このセミナーは,医療の質の向上,経営改善といった課題をIT化によってどのように解決するか,米国での取り組みを参考に討議するというもの。基調講演や,パネルディスカッションのほか,米国のIT企業からのプレゼンテーションも行われ,定員の100名を上回る参加があった。 はじめに,(財)医療情報システム開発センター理事長の開原成允氏と,2003年11月の第23回医療情報学連合大会の大会長を務めた豊田 建氏(ベリングポイント(株)理事)を演者に迎え,基調講演が行われた。 開原氏の講演では,「日米の医療IT─政府,医療関係者,研究者,企業の対応の違いから学ぶこと─」がテーマとなった。開原氏は,米国の医療のIT化政策について,HIPAA(Health Insurance Portability And Accountability Act)法など,法律を定めるだけで,普及については市場原理に委ねられていると説明。片や,日本では,政府が「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」のように目標を掲げ,補助金で医療機関を誘導していくとして,米国との政策の違いを指摘した。また,米国がデータベースを構築し,EBMの実践,ガイドラインに基づいた医療が行われているの対し,日本では,経験が重視され,診療ガイドラインの策定も遅れていると述べた。 一方,豊田氏は,「米国の医療分野における最新IT事情」と題し,IT企業や医療機関の動向について講演した。豊田氏は,米国では,HIPAA法や,医療事故防止,ヘルスケアサービス部門の需要増加とマンパワー不足が,IT化を加速させていると報告。医療IT市場の拡大により,ベンチャー企業などの参入や活発なM&Aがあり,競争が激化していると述べた。また,米国で普及しているシステムとして,医療事故防止を目的に導入が進んでいる,CPOE(Computerized Physician Order Entry)について説明。さらに,IT化には目的を明確にすることが必要だとして,経営改善のために情報システムを導入した米国退役軍人局病院の事例を取り上げた。 基調講演に続き,米国企業の製品,サービスのプレゼンテーションが行われた。この中では,RTI(RealTimeImage)社の高速画像配信が可能なPACS「iPACS-Enterprise」(国内販売:メダシス・ジャパン(株)),RSA Security社のユーザー認証システム「RSA SecurID」などが紹介された。 セミナーの最後には,中村雅美氏(日本経済新聞社編集委員)をコーディネータにして,パネルディスカッションが行われた。関 英一氏(厚生労働省医政局研究開発振興課医療技術情報推進室室長),西村 毅氏(マイクロソフトアジアリミテッド),村越高王氏(日本オラクル(株)),Laura Robinson氏(RSA Security)がパネリストとなり,「日米のeHealthの特徴と相違点を比較検討し,今後の展望を探る」をテーマに,討論が繰り広げられた。