(財)医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)は2月19日,「バーコードは患者安全に役立つ」をテーマに,国際シンポジウムを開催した。開原成允理事長が開会の挨拶のなかで「世界的に見てもホットな話題」と述べたように,現在,医療資材のバーコード表示への関心が高まっている。こうした状況を背景に開かれた本シンポジウムでは,海外も含め,技術者,製造業者,医療機関,行政のそれぞれの担当者が招かれ,活発な意見交換がなされた。
シンポジウムを前に,7演者が講演。まず,折井孝男氏(NTT東日本関東病院薬剤部長)を座長に,Lea Yu氏(EAN-international)とJohn
Terwilliger氏(Uniform Code Council)が「技術的観点からの取り組み」について述べた。Yu氏は,EAN.UCCシステムが物流におけるコスト低下や医療過誤の防止に貢献していることを強調。一方で,日本医療機器関係団体協議会と(財)流通システム開発センターが,製品コードとUCC/EAN-128を用いた標準化で協力していることを高く評価した。また,Terwilliger氏は,EAN.UCCシステムというグローバルスタンダードを利用することでコスト削減だけでなく,患者安全を確保できるとした。
続いて,Laurie R. Hernandez氏(Abbott)とRich Hollandar氏(Pfizer)が,「製造業者の取り組み」について発表した。Hernandez氏は,Abbott独自の統計より,院内でのミスのうち投薬ミスに関する事項が51%を占めていることを提示。バーコードを用い,適切な印刷をするなど製造の側として配慮すべき点を挙げた。一方のHollandar氏もバーコードの高品質な印刷技術においてその重要性を示した。さらに,日本と米国ではブリスターパッケージが異なるなど技術的な問題があるが,他の国々も含め,グローバルな標準化を推進すべきであるとした。
土屋文人氏(東京医科歯科大学歯学部附属病院薬剤部長)が座長を務めた「医療機関の取り組み」では,Eric G. Poon氏(Brigham
and Women's Hospital)が発表。現在,すべての薬にバーコードを貼付し,さらに患者やスタッフにいたるまで病院全体で適用し,効率化を実現した同院の事例を紹介した。
「行政機関の取り組み」では,Jerry Phillips氏(FDA:米国食品医薬品局)と俵木登美子氏(厚生労働省医薬食品局安全対策課安全使用推進室室長)が講演した。Phillips氏は,医療にかかわるミスでの問題要素に投薬ミスや調剤ミスを挙げた上で,問題解決に対しコスト面の考慮や適切なコードの推奨などの効果的な対策を展開していることを主張した。続く俵木氏は「ヒヤリ・ハット」事例を挙げて医療過誤の現状を示し,バーコード表示が患者安全をもたらすと述べた。その一方で,標準化を図るためには,コード体系やデータキャリアの統一をはじめ,いくつかの問題が存在することも示唆した。
シンポジウムでは開原氏を座長に,日本におけるバーコード化の動向に焦点が当てられた。新技術として注目されている電波による非接触通信の「RFID」も議論が挙がったが,「コストの問題もありすぐには浸透しない」といった意見も出てバーコードの方が医療現場の現状に適しているとの声が多勢を占めた。
当日は製造業,印刷業,行政などさまざまな分野の担当者らが来場。休憩時にはバーコードリーダをはじめとする製品展示も設けられた。
問い合わせ先
(財)医療情報システム開発センター 普及調査部
TEL 03-3586-6391
http://www.medis.or.jp
|