シーメンス旭メディテック(株)は2月21日(土),品川インターシティホールにおいて,「第4回シーメンス最先端技術講演会」を開催した。大会長に宮坂和男氏(北海道大学大学院医学研究科高次診断治療学専攻病態情報学講座放射線医学分野教授)を迎え,CT,MRにおけるシーメンスの最新装置を用いた画像診断技術と臨床評価について発表が行われた。特に,RSNA2003で注目された新機種や技術を中心とした講演ということもあり,500名を超える多数の参加者が詰めかけた。
CTのセッションでは,今井 裕氏(東海大学医学部基盤診療学系画像診断学教授)を座長に,Bernd Ohnesorge氏(Siemens
Medical Solutions Vice President, Global CT Marketing)とStephan Achenbach氏(Department
of Internal Medicine,University of Erlangen)が発表した。Ohnesorge氏は「New frontiers
in CT with up to 64 slices」と題して,技術的側面から現状を報告。「Speed4D」と総称する新しい技術である「Straton」,「CARE
Dose4D」,「WorkStream4D」,「syngo InSpace4D」について解説した。特に,「Straton」は陽極を直接冷却するダイレクト・アノード・クーリング設計を採用して熱交換率の飛躍的な向上と小型化に成功し,世界最高速の0.37秒回転を実現させた,まったく新しいX線管球である点を強調した。一方,32スライスのディテクタを搭載し,X線管の焦点を体軸方向に瞬時に振るというバーチャルディテクタ的な構造を持つ64スライスCT(ダブルZサンプリング)については,最も効率的なスキャン方法に着目して開発した点を紹介。アーチファクトを考慮すれば,64×0.6mmスキャンで同じピッチの場合,1×64スライスよりも2×32スライスでスキャンする方が非常に高品質な画像が得られ,臨床的にも有用であることを示した。また,将来の技術として現在,研究が進んでいる768×1024pixel×0.25mmの解像度を持つフラットパネルCTも紹介した。
続くAchenbach氏は「Clinical Aspects of Nninvasive Coronary Angiography by
CT」として,16スライスCTによる心臓領域への応用について報告した。心臓の形態を見る場合,現在は必ずしもCTがファーストチョイスとはならないが,16スライスCTを使って冠動脈を描出することができれば,狭窄の有無に関しては100%証明できるという。同氏は,プラークをはじめ,ステント内部の再狭窄の描出など,今後も,心臓領域におけるCTの可能性に期待しているとした。
後半のMRのセッションでは,吉川宏起氏(駒澤大学医療健康科学部教授)を座長に,まずChristoph Zindel氏(Siemens
Medical Solutions Director of Strategic Marketing Group MR)が「Tim ― A
revolution in MR」として講演した。Zindel氏は主に,「Tim(total imaging matrix)」テクノロジーというマトリックスコイルデザインとRFシステムを融合した新しい技術を解説。同技術は,頭部,胸部,腹部,足部用のマトリックスコイルを組み合わせ,76のコイルエレメントと32のRFチャンネル(76×32)の全身用コイルとして構成するものである。Zindel氏が発表のなかで「局部が全身になる」と述べたように,頭頂から足先まで最大205cmの範囲をS/Nの良い1つの画像として提供するという(True
Whole Body MR)。このTimがはじめて標準搭載されるのが,RSNA2003で発表した1.5T MRI装置「MAGNETOM
Avanto」である。「MAGNETOM Avanto」(W.I.P.)は,最強のグラディエント(FOV:50cm)と,AudioComfort技術によるノイズの低減,従来比97%カットの静かさを実現。一方で,自動化による撮像後のワークフローの効率化も図れ,スループット向上による経営的利益と同時に,小児領域でのアドバンテージも大きいと述べた。なおTimは,「MAGNETOM
Symphony」でも使用できるという。
次にHeinz-Peter Schlemmer氏(Universitaetsklinik Tuebingen)が,「Whole Body
MRI for Oncologic Staging ― Experiences with Total Imaging Matrix Technology」というテーマで発表した。Schlemmer氏はまず,「MAGNETOM
Avanto」でのWhole Body MRIについて,短い撮像時間と同時に高い分解能を実現している点を高く評価。MRAやMRCPをはじめ,FOVが50cmと大きいことで大腸がん検査において高い有用性を示し,前立腺も高分解能の画像を得ることができるという。また,全身MRIを腫瘍に用いれば,腫瘍の活性レベルや軟部組織種とその再発などを観察する際にも力を発揮する点も強調した。そのほか,循環器疾患や脳血管の塞栓などの局所はもちろん,全身の包括的な軸断層を得ることができる点も大きな利点に挙げた。将来的な応用としては,リンパ節も包括的に観察することができると述べた。一方で,全身の悪性腫瘍を1時間で検査できることを例に挙げ,検査ワークフローや効率性の向上,入院時間の低減,コスト削減を支援する点で大きなアドバンテージがあるとした。また,最後に,「Whole
Body MRIは放射線診断における考え方を変えるだろう」とまとめた。
閉会の挨拶では,宮坂氏が印象深い内容を発表した講演者と多数詰めかけた参加者に感謝の意を述べるとともに,発表された革新的な技術に対しては,新たな応用への展開が期待できると述べ,「シーメンスの技術開発力の高さを再認識した」と締めくくった。
問い合わせ先
シーメンス旭メディテック(株)MSM本部 担当:酒見
TEL 03-5423-8401
http://www.med.siemens.co.jp
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