死を忘れた日本人
どこに「死に支え」を求めるか
著者:中川恵一 |
|
がん専門医が,2万人の治療に関わって考えたこと伝統も宗教も失って,無力に死に直面する日本人に,救いはあるか?
『がんのひみつ』の著者が,「死を忘れた日本人」に向けて放つ第二弾。2人に1人ががんになり,3人に1人ががんで亡くなる「世界一のがん大国,日本」。はたしてどれだけの人が,自らの末期(死)に思いをはせているでしょうか。 病院死がほぼ100%となり,核家族化が進行した結果,家族の老いや衰弱を見守り,最期を看取る習慣もなくなりました。死が視野に入らないのです。「死を忘れた」奇っ怪な環境に生きるのが私たち日本人と言えそうです。その意味で,日本人は,宗教も伝統も失った現代世界の「死の恐怖のフロントランナー」なのです。 著者は,がん専門医としての25年の経験に立って,日本人に現代の「メメント・モリ」を呼びかけます。死を忘れ,死に無防備なままで,いざというときに,自らの死を受容できるでしょうか,と問いかけるのです。人気の「ピンピンコロリ」は望んでも得られません。かつての結核のように,「ゆるやかで,期限付きの死」が多くの人を待ち受けているからです。ある日突然,死の恐怖に直面し,うちひしがれながら初めて自らの死を思い,途方に暮れるのではなく,いまから「死の予習」をしておこう,という提言なのです。諺にもあるとおり,「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ですから。
目次
序章 「死に支え」がない国,日本
第1章 私たちのカラダは星のかけら―宇宙の誕生と死
第2章 絶対時間と私の時間―「永遠」と「一瞬の人生」
第3章 進化の中で,「死」が生まれた―もともと,寿命などなかった
第4章 大脳が宗教を生んだ―死を飼い慣らすために
第5章 死のプロセス―多細胞生物の死
間奏―私たちが死んだあとのこと
第6章 死の決定をめぐって
第7章 「がんによる死」の正体―がんの進化論
間奏―人はどのようにがんで亡くなっていくか
第8章 宗教なき時代の死の受容―何を怖がっているのか
|