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ICRUレポート70(日本語翻訳)
胸部X線写真の画質
〈著 者〉カールバイボーニィ〔Carl J. Vyborny〕
〈翻訳監修〉
土井 邦雄 シカゴ大学カートロスマン放射線像研究所
〈翻訳編集〉
桂川 茂彦 熊本大学医学部保健学科
杜下 淳次 九州大学医学部保健学科
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最近のわが国における胸部放射線診断では,CTを用いた肺の微細病変の診断に主たる精力を費やしている感があり,胸部X線写真の重要性は軽視されがちなように思います。しかしながら,心臓の調子が悪くて救急室を訪れた患者さんが,かならず胸部X線撮影を受けて肺鬱血の程度を調べるように,胸部X線写真はなくてはならない画像情報です。胸部X線写真の重要度は,もっと認識されるべきであると思われるのですが,臨床現場では必ずしも良質な胸部X線写真が得られていないのが現状だと思います。これは,医師が胸部X線写真の画質に関するscientificな教育を十分に受けていないことや,勉学のための良い教科書があまりなかったことにも原因があると考えられます。
このICRUレポートは胸部の解剖や撮影法から始まり,画質の評価法,さらにディジタル画像に至る胸部X線写真についてのすべてが網羅されております。つまり,本書を精読することで,技術から臨床までの全体を俯瞰することが可能です。このような体系的で質の高いレポートは,診療放射線技師や胸部画像診断医にとってきわめて有用性が高く,今後の日本の胸部画像診断の発展に多大な影響を与えるであろうことは間違いないと思います。また,日本語訳は各章ごとに当該分野における日本の第一人者が担当されており,非常に読みやすい文章になっていますことも特筆すべきことと思います。
最後に,きわめて重要なレポートの策定に関与され,今回の日本語翻訳の監修にも当たられた,シカゴ大学の土井邦雄教授に敬意と感謝の意を表したいと思います。
佐々木康夫(岩手県立中央病院副院長,中央放射線部長)
このたび,ICRUレポート70「胸部X線写真の画質」の邦訳が,日本放射線技術学会から発刊されました。
胸部X線画像は,胸部の持つ複雑な解剖構造に加えて,そこに発生する病態の多様さ,X線像として描出する撮影技術や記録系システム,さらに画像診断時の観察環境,画像評価など非常に多くの医学的,技術的,工学的因子が作用する検査部位であります。
これら多くの領域にわたる問題解明のために,本書は複雑な胸部構造に潜在する肺疾患を,X線スペクトルや記録系,散乱線,X線装置,撮影技術,被曝線量などの因子を画像形成としてくまなく解説し,また胸部X線写真の画質についても各種伝達特性や観察者の特性を基に詳細に記述されており,現在臨床で仕事をされている診療放射線技師はもとより,技師教育を担当されている方や企業研究者にとって,胸部X線撮影を広く的確にとらえるには大変役立つ内容にまとめられています。
読者が胸部X線画像の幅の広さと奥の深さを理解し,今後の臨床技術や研究に役立たせるには絶好の書と思います。
小川 敬壽(帝京大学医療技術学部)
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