富士フイルム(株)は,DR方式(*1)の「CALNEO(カルネオ)」シリーズにおいて最高画質と低線量での撮影を実現する「Premium CsIパネル」を採用した製品のラインアップを拡充する。体格の大きな被験者も効率よく一回の撮影で対応できる幅広サイズ(17×17インチ)のデジタルX線画像診断装置「FUJIFILM DR CALNEO HC SQ(以下,CALNEO HC SQ)」を,富士フイルムメディカルを通じて9月6日より発売する。
同社は平成21年9月より,独自の「ISS方式(*2)」の間接変換型FPD(*3)を採用したデジタルX線画像診断装置「CALNEO」シリーズを発売している。今年8月には,「ISS方式」の間接変換型FPDに,少ないX線量でも高感度かつ低ノイズで撮影が可能な専用チップ(*4)を搭載した「Premium CsIパネル」を開発し,「CALNEO」シリーズで最高画質を実現する世界最軽量(*5)の「CALNEO C mini wireless SQ」を発売した。X線の被ばく線量を大幅に低減しながら高画質な画像が得られると,医療現場から評価を得ている。
今回発売する,「CALNEO HC SQ」は,少ないX線量でもノイズを大幅に抑制できる専用チップを搭載した高感度な「Premium CsIパネル」により,粒状性が同社従来機種「FUJIFILM DR CALNEO C 1717 Wireless」よりさらに向上。これにより,一般的な間接変換型FPDにおいて,世界トップレベルのDQE(量子検出効率(*6))を実現。さらに,従来の「CALNEOシリーズ」に比べて,全面耐荷重を約2倍高め,310kgまで耐えられる堅牢性も兼ね備えている。
「CALNEO HC SQ」のパネルサイズは17×17インチの幅広サイズのため,被験者の体格に合わせてカセッテの差し替えが必要なく,広い部位を一度に効率よく撮影することが可能。胸腹部や整形領域などさまざまな部位の撮影に利用できる。ハンドル付きで,立位装置・臥位撮影台への出し入れ(*7)や持ち運びがスムーズに行える。
また,新たに開発した高速通信インターフェイスにより,画像表示時間および次の撮影までの時間を同社従来機種より約2/3まで短縮(*8)した。X線照射から約1秒で画像制御端末へ画像を表示でき,また,約5秒で次の撮影を実施できるため,同一部位の連続撮影などにおいても作業効率を向上させることができる。
*1 Digital Radiographyの略。被写体を通過して照射されるX線エネルギーを電気信号に変換し,X線透過画像として再構成する方式。
*2 Irradiation Side Samplingの略。従来型のFPDと反対側のX線照射面側にセンサーを配置し,X線の照射面側より,X線から変換された光信号を読み取る同社独自方式。
*3 Flat Panel Detectorの略。被写体を通過して照射されるX線エネルギーを検出し,電気信号に変換する,X線画像平面検出器のこと。X線をいったん光信号に変換した後に電気信号に変える間接変換型(センサー:ヨウ化セシウムやガドリニウムオキシサルファイドを採用)とX線を直接,電気信号に変える直接変換型(センサー:アモルファスセレンを採用)がある。
*4 X線情報をセンシングする性能を高め,かつX線を低ノイズで検出することを可能とした電気回路。
*5 平成24年9月6日現在。一般用の間接変換型FPDにおいて。
*6 DQE(Detective Quantum Efficiency:量子検出効率)とは,X線情報を,検出システムがどの程度無駄なく捕捉して画像に役立たせているかの尺度。DQEが高いほど高画質な画像が得られ,低線量化が可能となる。「CALNEO HC SQ」ではDQE54%(1cycle/mm)を達成。
*7 CALNEO HC SQに対応した立位・臥位撮影台と組合せて利用できる。
*8 有線通信時に比較した場合。
●主な特長
(1)「CsI(ヨウ化セシウム)シンチレータ」,「ISS方式」,シンチレータと受光素子を組み合わせた「接合構造(*9)」に加えて,少ないX線量でも高感度かつ低ノイズでの撮影を可能とする専用チップを搭載し,さらなる高画質化を可能とした。撮影時のX線量を大幅に低減することが可能。
*9 光変換効率が高く,結晶性の良いCsIの先端部分と受光素子を貼り合わせることで,高画質化を可能とする同社独自の方式。
図1 一般的な間接変換型FPD(左)と,富士フイルム独自方式(右)との比較
一般的な間接変換型FPDで用いられているCSS(Conventional Side Sampling)方式では,X線照射側にシンチレータ層,出射側に受光素子(TFTパネル)が配置されている。CSS方式では,X線照射側の高強度の発光光が受光素子に達するまでに減衰・散乱しやすく,X線情報のロスが大きい。一方,同社独自の「ISS方式」ではX線照射側に受光素子基板を配置し,X線照射側の高強度の発光と受光素子までの距離が短く,発光光があまり散乱されずに効率よく検出される。また,CsI柱状結晶を受光素子に直接蒸着してCsI柱状結晶を形成する,従来一般的な「直接蒸着構造」ではなく,光変換効率が高く,結晶性の良いCsI柱状結晶の先端部分と受光素子を貼り合わせる「接合構造」を採用することで,高画質化が可能となる。
(2)17×17インチの大視野撮影領域により,被験者の体格に合わせてカセッテの差し替えが必要なく,広い部位を一度に効率よく撮影することが可能。胸腹部だけでなく整形領域などさまざまな部位の撮影に対応できる。ハンドル付きで,立位装置・臥位撮影台への出し入れや持ち運びがスムーズに行える。また,マグネシウム合金フレームとカーボン複合材の採用により,17×17インチサイズでありながら全面耐荷重310kgの優れた耐荷重性能を実現でき,スポット荷重(φ40mm)においても160kgの耐荷重を持つことで,患者の体重が加わるような使われ方でも使用できる。
(3)高速通信インターフェイスの採用により,撮影終了後約1秒で画像制御端末へ高速に画像を表示でき,迅速に確認することができる。また,約5秒で次の撮影を実施できるため同一部位の連続撮影などにおいても作業効率を向上させることができる。 |