キヤノンは,病院や眼科クリニック向けに,失明原因の上位である加齢黄斑変性や緑内障などの網膜疾患を3次元で検査する光干渉断層計(OCT)の新製品として,「OCT-HS100」を9月中旬より発売する。
キヤノンはOCT分野への本格参入を目的に,2010年にポーランドのオプトポル・テクノロジー 社を連結子会社化して以来,OCTの製品化を進めてきた。今回,キヤノンブランドで初となるOCTを新たに製品ラインアップに加え,眼科診断機器を総合的に提供することでさらなる事業拡大を目指す。新製品「OCT-HS100」は,オート機能などによる素早い検査や,高解像度による高画質画像の取得を実現している。
●主な特長
1. 充実したオート機能と毎秒7万本のAスキャンにより,簡単操作で素早く検査
- 毎秒7万本のAスキャン(深さ方向)の実現により,最大10×10mm の広範囲の網膜の3D断層画像を約2秒で撮影可能。同時に固視ずれや瞬きによる画像の欠落も防止し,網膜疾患の 検査に求められる正確で質の高いOCT断層画像を取得。
- 被検者の瞳孔の中心を検知して自動的に位置合わせを行う前眼オートアライメント機能を業界で初めて※1 搭載。
- オートアライメント,オートコヒーレンスゲート調整※2,オートフォーカスなどのオート操作を実現し,パソコンから2クリックで狙った部位を確実に撮影することが可能。
- 本体の基本操作をパソコン側に集約することにより,被検者の位置調整から撮影,データ 解析まで素早い検査を実現。さらに,OCT本体とパソコンを自由に設置できるため,検者と被検者の位置関係を柔軟に変更することが可能。
- 外形寸法約387(幅)× 499(奥行き)×474(高さ)mm,質量約29kgのコンパクトボディーを実現。対物レンズより上に位置する部分を小さくすることにより,被検者の顔がよく見え,開瞼の容易性を追求。
※1 市販の眼科用OCT装置において。2012年9月1日現在。キヤノン調べ。
※2 断層プレビューを表示開始後,自動的に適切な断層位置を検出・調整する機能。
2. 3マイクロメートルの高解像度で高画質を実現
- 3マイクロメートルという業界最高※の高解像度(深さ方向)を備え,網膜の各組織を高画質で撮影でき,微細な病巣を高い精度で読影可能。
- 最大50枚までの断層画像の重ね合わせ処理により,ノイズを低減した高画質な画像を実現。
- 点状にビームを集光させ走査を行うFlying-spot SLOを観察画像に採用し,コントラストの高い眼底画像で血管や疾患部位の状況を確認することが可能。
- 眼球の微動を検知し自動で追従するオートトラッキング機能により,固視微動の影響を低減し,過去に撮影した同じ部位の撮影を自動的に行うことで,経過観察を簡単操作で実現。
※ 市販の眼科用OCT装置において。2012年9月1日現在。キヤノン調べ。
3. 多彩な解析機能によって実現される各種レポート,層認識
- 黄斑疾病を分析する「Macula 3D スキャン」,NFL(網膜神経線維層)+GCL(網膜神経節細胞層) +IPL(内網状層)の厚みにフォーカスした緑内障分析のための「Glaucoma 3D スキャン」, NFL 厚と視神経乳頭(ONH)測定パラメータにフォーカスした「Disc 3D スキャン」など,8種類のスキャンモードの搭載により,被検者の症状に合わせた多彩なOCT画像で検査が可能。
- それぞれの目的に応じた多彩な疾患別の解析レポートを作成。
- 網膜の各層を識別して10本の境界線表示が可能。疾患により病態が現れる層が異なるため,疾患の早期発見に貢献。また,任意の境界線間の距離を計測,表示することも可能。
4. その他
- コヒーレンスゲート位置を脈絡膜側に設定することで,脈絡膜をより鮮明に表示。
- 眼底画像をインポートし,断層画像との位置合わせを自動で行うことが可能。
- オプションの前眼部撮影アダプターを装着することにより,角膜を含む前眼部のOCT画像を撮影することが可能。
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