日本ヒューレット・パッカード(株)(略称:日本HP)は,画面転送処理専用チップ(DSP)を搭載し,高速な転送画面描写を実現する,手のひらサイズのコンパクトなゼロクライアント「HP t410 Smart Zero Client(以下,t410)」を発表した。また,仮想環境におけるネットワークの品質を改善し,快適なレスポンスを実現するソフトウェア「HP Velocity(エイチピー ベロシティ)」をあわせて発表し,「t410」を含むHPシンクライアントシリーズ(ゼロクライアント含む)に無償で搭載する。
新製品は,日本HP直販営業,日本HP販売代理店を通じ,8月23日より販売を開始する。
<画面転送を高速化した,手のひらサイズのゼロクライアント「t410」>
「t410」は,Citrix ICA,RDP7.1,Microsoft Remote FX,VMware PCoIP(*1)など主要な画面転送プロトコルをサポートし,あらゆるクライアント仮想化ソリューションに対応する専用端末。手のひらサイズのコンパクトな筺体でありながら,画面転送処理専用チップによる高速な描画を実現し,フルHD(*2)での2画面出力に対応する。
*1: Teradici PCoIP対応モデルのみ対応。
*2: 利用するプロトコルによって対応解像度は変化する。
●「t410」の主な特長
≪専用チップ搭載で画面転送のパフォーマンスが向上≫
「t410」では,従来CPUで処理していた画面転送プロトコルを,専用のプロセッサー(DSP)「Texas Instruments TMS320DM8148™」で行うことにより,快適なパフォーマンスを実現した。また,映像出力端子としてDisplayPortとVGAの2ポートを備え,フルHD解像度(*2)の2画面出力が可能なため,オフィス業務の効率化に貢献する。筐体はVESA規格に準拠しており,モニターの背面に取り付けることで設置スペースを削減し,作業スペースを広く確保することも可能。
≪管理コストの削減と迅速な導入を実現する「HP Smart Zero Client Service」≫
「t410」は,起動と同時にWebサーバー(IIS)に格納された設定情報を読み込み,クライアント仮想化環境に接続できる「HP Smart Zero Client Service」に対応する。端末に対しての設定が不要で管理に要する工数が省けるのに加え,同時に複数台の「t410」を導入する際には初期設定時間の大幅な短縮,迅速な稼働開始が可能。
<快適なネットワーク環境を実現する,ソフトウェア「HP Velocity」>
昨今,ワークプレースの変化やBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)への対応に伴い,業務の生産性や安定性向上などの観点から,クライアント仮想化の導入が本格的に進んできている。常にネットワークに接続し,画面転送を行う仮想環境では十分な帯域を確保し,ネットワークの品質を維持することが必須になる。
「HP Velocity」は,パケットロスや輻輳(ふくそう),ジッター(ゆらぎ)などの問題を改善し,ネットワークの品質を改善するソフトウェア。特に画面転送や動画再生,音声会議,ストリーミングなど,リアルタイム性が求められるアプリケーションの利用時に効果を発揮する。また,拠点や自宅などのWAN環境からのアクセス,海外ネットワークからのアクセスなどパケットロスが発生しやすいネットワークや,無線LAN環境での利用にも効果的。
「HP Velocity」は,今回発表の「t410」をはじめ,HPシンクライアントシリーズに無償でプリインストールされる(*3)。
*3: 「HP Velocity」対応製品についての詳細は以下のURLを参照。
http://www.hp.com/jp/velocity
「HP Velocity」の発表に先立ち,テスト導入した(株)ショーワ管理本部情報システム室 資産運用課主任 久保浩一氏のコメント。
「WiFi環境でのHP Velocityの導入効果を大きく実感しています。通信最適化機能が働き,動画の再生が格段に滑らかになりました。」
「ネットワークモニターの機能はレスポンス問題の切り分けに非常に有用で欠かせないものとなっています。このようなツールが充実していることで,シンクライアントの導入が非常にスムーズになるでしょう。」
●「HP Velocity」の主な特長
≪パケットロスによる再送防止でスループットを改善≫
パケットロスが発生するとデータの再送信が行われるため,スループット(一定単位時間あたりの処理能力)が著しく低下する。「HP Velocity」では,パケットを複数のセグメントに分割して送信し,分割したセグメントの1つがロスしても最初のデータを回復することが可能。これによりパケットロスを軽減すると同時にデータの再送信を防止することができ,処理能力の低下を防ぐことができる。
≪WiFiネットワークの有効帯域を最大約15%拡張≫
「HP Velocity」は,WiFiネットワークにおいてパケットの4分の3を占めるオーバーヘッド(通信確立のための追加処理分のパケット)を最適化することにより,有効なWiFi帯域を最大15%拡張することが可能。これにより,遅延やジッターが減少し,高速なスループットを実現する。
≪リアルタイムなネットワークモニター機能で,問題発生時の迅速な対応を実現≫
「HP Velocity」をインストールしたクライアントとサーバー間のデータのやりとりやネットワークの状態をリアルタイムにモニタリング可能。これらの情報は,モニターツールによって逐次確認でき,問題が発生した場合には迅速な対策が可能。
<「Windows Embedded Standard 7P」搭載モデルをシンクライアントのラインアップに追加>
販売中のフラッグシップモデル「HP t610 Thin Client」,「HP t610 PLUS Thin Client」に,新たに「Windows Embedded Standard 7P」搭載モデルを追加。
「Windows Embedded Standard 7P」は,マルチタッチや他国の言語に切り替えられる「マルチリンガルインターフェイス」に対応している。案内表示版やデジタルサイネージ,POSなどタッチ操作が求められるシーンや,多言語対応が求められる空港など,従来以上により幅広い用途での活用が可能となる。
また,Applocker,Windows Defenderなどの機能をサポートし,単体利用時のセキュリティ機能も強化されている。
■「HP t410 Smart Zero Client」に関する製品情報は以下のURLを参照
http://www.hp.com/jp/t410zero |