日立コンシューマエレクトロニクス(株)(以下,日立)は,「ガンマカメラ(放射線測定装置)」の使い勝手と測定精度を大幅に向上した新製品(以下,本装置)を開発し,8月2日より受注を開始する。
なお,本装置の開発には,独立行政法人科学技術振興機構(JST)研究成果展開事業 先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環として*1,日立が中心となり平成24年度末にかけて研究開発を行なっている成果の一部を反映している。
日立は,2012年3月下旬より,放射性物質が放射するガンマ線の線量を測定した結果とカメラで撮影した映像を重ね合わせ,放射線量の高低を色分けして確認できる「ガンマカメラ(放射線測定装置)」の販売を開始した。その後,福島県内を中心に測定を実施しながら,自治体などで除染活動に関わる方々や放射線測定の専門家から,放射線測定装置に対する要望や同社製品への改善提案等についてのヒアリングを重ねてきた。今般,これらのヒアリング結果を反映し,GUI*2の改善による操作性の向上や,距離補正の性能向上,小型化,位置情報(GPS*3情報)への対応*4を実現した。
日立独自の技術により,従来製品より距離計を装置に内蔵して測定対象までの距離を測定し,補正処理を行なった上で表面線量率を表示しているが,これまでは画面中心の一点のみの距離を測定し,その距離で補正した線量率を表示していた。本装置では,距離測定をマルチスキャン化し,放射線検出エリアの全256ピクセルの各ピクセル毎に距離を測り,補正処理を行なうことで,より一層精度の高い測定データが得られるようになった。また,従来製品では測定者が測定ノウハウで得た知見により,測定終了時間を見極めていたが,本装置では測定環境に応じて自動的に判断し,測定終了までにかかる時間を画面上に表示するほか,バッテリー残量も表示するなどGUIを改善している。その他にも,同社指定の「USB接続GPSレシーバ」(NMEA対応品)を取り付ければ,放射線測定データと共にGPS位置情報が記録されますので,除染活動前後のデータ管理に役立つ。さらに,従来製品と比べて容量約30%減の小型化を実現し,除染現場での使いやすさを向上している。
日立は本装置の供給により,除染活動の作業効率向上や,除染廃棄物(がれき等)の量を少なく抑えることに役立てていきたいと考えている。
なお,本装置の部品の一部を,福島県飯舘村に工場を持つ(株)菊池製作所*5から納入し,復興支援に協力していく。
また,菊池製作所では本装置を導入して,福島県飯舘村をはじめとした被災地域の自治体並びに地域住民等に向け,放射線測定などの各種サービスを行なっていく計画である。
*1 独立行政法人科学技術振興機構(JST)研究成果展開事業 先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環として:重点開発領域「放射線計測領域」実用化タイプ(短期開発型)平成24年度採択課題「半導体検出器を用いた環境測定用ガンマカメラの実用化開発」(チームリーダー:茂呂 栄治(日立コンシューマエレクトロニクス(株)))では,除染作業の効率向上等に貢献するために,操作性の向上や高感度化を図った「環境測定用ガンマカメラ」の開発を行なっていく。
*2 GUI: Graphical User Interface
*3 GPS: Global Positioning System 全地球測位システム
*4 位置情報(GPS情報)への対応:別途同社指定の「USB接続GPSレシーバ」(NMEA-National Marine Electronics Association-対応品)が必要になる。
*5 菊池製作所:福島工場の従業員の約9割が飯舘村の出身者 |