富士フイルム(株)は,内視鏡検査に使用する光源にレーザーを用いた新世代内視鏡システムを開発した。
同社が写真分野・医療分野で長年培ってきたレーザー制御技術を応用して,2種類のレーザー光を観察目的に応じて自在にコントロールし,独自の画像処理技術と組み合わせることで,粘膜表層の微細血管などを強調した画像観察を可能とし,がんなどの病変部の視認性向上を実現した。
本システムは,同社内視鏡システムの最上位シリーズ「LASEREO(レザリオ)」として,商品化を予定している。平成24年5月12日から東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪で開催される「第83回日本消化器内視鏡学会総会」共催セミナーで,本システムの臨床評価に関する発表が行われる。
従来の内視鏡検査では,ハロゲンランプやキセノンランプの白色光源を用いた観察が行われているが,白色光を用いた観察では,粘膜表面の微細な変化をとらえることが難しいと言われている。
今回開発した新世代内視鏡システム「LASEREO」は,波長の異なる「白色光観察用レーザー(白色用レーザー)」と「狭帯域光観察用レーザー」の2種類のレーザーを搭載。白色用レーザーを蛍光体に照射することで,通常の観察に適したスペクトル幅の広い白色光を発光させ,自然な色の画像をモニター上に再現することができる。また,狭帯域光観察用レーザーは,波長が短くスペクトル幅の狭い光であり,この光を照射することによって,粘膜表層の微細血管やわずかな粘膜の凹凸などのコントラストを強調して画像をシャープに映し出すことができ,微小な病変を観察するのに適している。
「LASEREO」には,粘膜表層の微細な血管や粘膜の模様を強調して表示する「Blue LASER Imaging(BLI)機能」を搭載。「BLI機能」では,白色用と狭帯域光観察用のレーザー光の発光比率を変えることで,観察目的や対象部位に応じて照明を瞬時に切替えて使い分けが可能。BLI機能には,近接・拡大観察に適したモードと,全体の明るさを高めたモードを用意している。
また,レーザー光源は,従来のハロゲンランプやキセノンランプ光源と比べ高効率で消費電力が少なく,かつ長寿命であることから,省エネ運用が可能。
さらに,今回開発した新世代内視鏡システムを応用し,現在,国立がん研究センターとの共同研究で,レーザー光源を搭載した内視鏡システムによる腫瘍とその周辺部の酸素飽和度を画像化する新たな画像診断技術の確立を目指した研究を進めている。将来的には,病変の形態診断だけではなく,腫瘍による組織の酸素消費の変化など,機能診断が可能となるシステム開発を目指す。
●主な特長
(1) 観察機能に応じた照明制御
白色用と狭帯域光観察用の2種類のレーザーを光源として搭載し,レーザー光の発光比率を変える事で,白色光観察に適した照明と狭帯域光観察に適した照明を瞬時に切替えて使用する事ができる。
・白色用レーザー(450±10nm) : 蛍光体を効率よく発光させ,発光した蛍光と混合して,白色光として照射する。
・狭帯域光観察用レーザー(410±10nm) : 表層の強調処理に適した波長の短い狭帯域光として,白色光と混合して照射する。
(2) 新しい観察機能の搭載
「LASEREO」には従来モデルから搭載している,分光画像処理機能FICEに加え,狭帯域光観察用レーザーを照射したうえで,粘膜表層の微細血管や粘膜微細模様などを強調処理して表示する「Blue LASER Imaging(BLI)機能」を新規に搭載。BLI機能には二つのモードが用意されている。
・BLIモード : 粘膜表層の微細血管のコントラストを高めることを狙い,狭帯域光観察用レーザー光の比率を高くして照射している。主として近接〜拡大観察の用途に適している。
・BLI-brightモード : 狭帯域光観察用レーザー光と白色用レーザー光とをバランスよく配分することで,血管コントラストの向上と明るさを両立している。主として,中景〜近接の観察用途に適している。
(3) 長寿命・低消費電力
長寿命なレーザーと蛍光体を採用することで,従来のハロゲンランプやキセノンランプ光源と比べ高効率で消費電力が少なく,かつ長寿命であることから,省エネ運用が可能。 |