テクマトリックス(株)は国内通信事業者等と連携することで,2012年6月1日(予定)から,新たな医療クラウドサービス「NOBORI」のサービスを開始する。新クラウドサービスの「NOBORI」では,医療機関の内部で発生する大量の画像等医療情報を暗号化した後,バラバラに分割することで,それぞれの情報の塊の単位では,全く意味をなさないデータへと変換してから,外部のデータセンタ―に安全に保存管理する機構を提供する。
2010年2月の厚生労働省の通知により,民間事業者による医療情報の保存管理が制度上認められるようになった。しかしながら病院にとっては受診患者の個人情報の秘匿,保護への懸念から,他産業では一般化するクラウドサービスの活用になかなか踏み切れない背景があった。一方で,医療機器の高度進化により,施設内で発生する画像情報量は飛躍的に増大しており,それに伴うIT投資の増大,またITの専門家ではないスタッフによる大規模なコンピュータサーバの管理運営が深刻な経営課題となっている。
上記,医療機関における課題へのソリューションが新サービスの「NOBORI」。新サービスでは専用の通信装置(NOBORI-CUBE)を病院内に貸出設置することにより,情報の安全管理に対する責任分岐点を顧客施設内に設け,大切な情報を確実に預かることが可能になる。
● 主な特長
- 医療情報の暗号化と,完全な分離分割後のクラウド環境での保存管理
- 多拠点多重管理(電力供給50Hz, 60Hz 地域分散)による災害対策
- 貸出し提供される専用通信装置(NOBORI-CUBE)のみで院内PACSを構成
- 初期投資ゼロ,利用料課金のみのクラウド型PACS システム
- 医療機関と個人のコミュニケーションを支援する情報サービスの提供
テクマトリックスグループでは,1998年より医療機関むけのITサービスを提供している。これまで子会社の関連事業を併せると,国内に約350のユーザ医療機関が存在する。また連結子会社の合同会社医知悟では,過去4年間に亘り,遠隔画像診断を目的として,月間約8万検査(過去参照画像検査含む)の大量な医用画像を,インターネット経由で送受信するサービスの運営経験を有している。これらのITサービスの経験と,顧客との対話の積み重ねから,新ソリューション提供を目指し,3年前から設計検討を重ね,1年間の集中的な実証実験の結果を,新サービスの「NOBORI」に集約している。テクマトリックスは,医療情報の確実な暗号化と分割によるデータセンタへの安全な送受信の機構,専用通信機器の設計開発,またクラウド型のPACSのソフトウエアを提供する。
さらにデータセンタ内に於ける,低価格かつ対障害性の高い大容量ストレージ機構の構築,また個別の医療機関による投資では困難な広域災害対策として,データ管理の多拠点化と拠点連携の機構を独自に開発している。将来的には上述の専用通信装置により,画像情報に加え,さらに広範囲の医療情報の安全な外部管理,同時に医療サービスの利用者(個人)と医療サービスの提供者(医療機関)とのコミュニケーションをサポートするIT インフラの構築を目指す。
新医療クラウドサービス「NOBORI」の名前は,プロジェクト全関係者からの公募で決定された。空高くのぼる雲(のぼり雲)のように,大切な情報達が空高くに昇って行く様子への連想からのネーミング。
ロゴのバルーンが高い空に昇って行く図案は,ひとりひとりの大切な情報をさらに高い次元で集約し,集合知(統計データ)として,医師,医療サービス従事者,医療サービスの利用者1人1人に還元したいという願いが込められている。
新サービスの利用料では,従来の院内設置型のPACSに対して,5年TCO(Total cost of ownership)を20%削減することが可能。6月のサービス開始に先行して,既に複数の先進的なユーザでの導入が決定しており,9月までに6施設,サービス開始から6年間で,全ユーザ(希望施設)の「NOBORI」への移行を計画している。また,6月のサービス開始に続いて,順次モバイル端末連携,知識データベース機能,病院と患者のコミュニケーション支援等,付加的なサービスのリリースも計画されている。
サービス開始時,データセンターはソフトバンクテレコムの施設を利用する。 |