GEヘルスケアグループ(以下「GEヘルスケア」)の世界中核拠点の1つであるGEヘルスケア・ジャパン(株)は4月13日(金),PET(陽電子放射断層撮影装置)検査で使用する放射性薬剤を自動合成する装置(放射性医薬品合成設備)「FASTlab(ファーストラボ)」を,大学病院や検診センター,先端の研究機関を主対象に発売する。
放射性医薬品合成設備はPETでのがん検査などの際に体内投与する薬剤を生成する装置で,薬剤のもとになる放射性同位元素を製造する加速器(サイクロトロン)と並んでPET検査に欠かせないシステム。FASTlabは主にがんのPET検査で使用する放射性の18FDG(フルオロ デオキシ グルコース)薬剤を自動合成する装置で,世界中で350台以上の納入実績を誇り国内シェア3割を有する「TRACERlab(トレーサーラボ)」シリーズの後継機種となる。
FASTlabの最大の特長は,国内で初めて,従来(今後も含めすべて同社TRACERlabシリーズとの比較)別々に分かれていたカセットや試薬などを一体化し,すべての合成用試薬をあらかじめ充填した状態で提供するフルパッケージングカセット方式を採用したことにある。
従来の合成装置では,試薬用カセットや合成用試薬,アクセサリーキットが独立しており使用前に現場で組み立てる必要があったため,準備の手間や使用時のトラブルの発生といった問題があった。加えて,18FDGの半減期(寿命)は110分と短く,1回で生成できる量も限られるため,短時間での効率の良い薬剤合成が求められていた。
FASTlabでは合成用試薬がセットされたフルパッケージングカセット方式を採用することでこの課題を克服,一体成型のカセットユニットを取り付けるだけのわずか60秒で手軽にセットが完了し,液漏れなどのトラブルも減る。また容器の熱効率改善などの改良を施すことで,合成時間も25分未満と従来装置に比べて2割弱短縮したほか,これまでに比べて約10%高い合成収率(非時間補正値)を実現し,18FDG薬剤合成時の効率性を高めている。
加えて,洗浄プログラムを見直すことでカセット内の残存放射能量を従来の1割となる0.5%まで低減,被ばくを抑えることで連続して合成する際の安全性を高める。
このようにFASTlabは短時間で高効率・低被ばくの確実な18FDG薬剤合成を実現し,年間約60万件実施されているPETによるがん検査のさらなる利便性向上に貢献すると期待されている。
●主な特長
1. 準備時間はわずか60秒,合成時間も25分以内に短縮し短時間での薬剤合成を可能に
従来の合成装置は試薬を充填するカセット,合成用試薬,ならびに付属のアクセサリーキットが独立しており,使用前に現場で組み立てる必要があったが,FASTlabでは合成用試薬がセットされたカセットユニットを取り付けるだけで準備完了。これまで操作者によっては30分程度かかっていた準備がわずか60秒で完了する。また容器の熱効率のアップや攪拌タイミングの見直しなどで,合成時間も25分以内と従来装置に比べて2割弱短縮,迅速な18FDG薬剤の合成を可能にする。
2. 取り付け時のミスや合成時のトラブルを削減し,確実かつ高精度な薬剤合成を実現
カセットユニットを取り付けるだけの簡便な操作でセット完了となるため,準備段階でのミスが減るほか,一体成型カセット中心の構成のため,これまで課題となっていたカセット接続部からの液漏れなどのトラブルも削減し,確実かつ高精度な18FDG薬剤の合成を実現する。
3. 67.5%の高い合成収率を達成,薬剤合成時の効率性をアップ
加速器で製造した放射性同位元素をいかにムダなく薬剤に合成できるかをあらわす合成収率(非時間補正値)も3回合成平均で67.5%以上と従来装置に比べて約10%向上,フルパッケージングカセット方式の採用でムダを抑えた高い効率で18FDG薬剤の合成が可能となる。
4. 残存放射能量の割合を10分の1に低減,超被ばくを実現し連続合成時の安全性を向上
薬剤の合成に使用したカセットは次に備えて洗浄する必要があるが,従来装置では洗浄後も約5%の放射能が残存していた。FASTlabでは洗浄プログラムを見直すことで,残存放射能量を10分の1の0.5%まで低減,被ばくを抑えることで連続して合成する際の安全性を向上する。
なお医療機関はこれまで,放射性医薬品合成設備用のカセットと試薬を別々に購入する必要があったが,FASTlabではこの2つを一体化したことでカセットと試薬の一括購入を可能とし,医療機関の機材調達の利便性を高めている。
同社は放射性医薬品合成設備として,国内初の18FDG合成装置「FDG MicroLab(エフディージー・マイクロラボ)」を2001年に,その後継機種である「TRACERlab MX FDG(トレーサーラボ・エムエックス・エフディージー)」を2004年に発売したほか,11C-PiBなどの11C標識PET化合物の原料となる11Cヨウ化メチルおよび11Cメチルトリフレートを自動合成する「TRACERlab FX MeI(トレーサーラボ・エフエックス・エムイーアイ)」を2005年に国内に導入するなど,PETやPET/CTの販売にあわせて同合成装置の拡販を進め,現在国内市場で約3割のシェアを有している(同社調査)。
同社は今回発売するFASTlabをTRACERlabシリーズの後継機種と位置づけ,同社のPETやPET/CTと組み合わせて,大学病院や検診センター,先端の研究機関などの買い替え需要を主対象に積極的に販売することで,国内市場におけるトップの地位を狙う。
PETは,超短半減期の放射性同位元素(RI)を用いた薬剤を患者の体内に静脈注射や吸入により投与し,薬剤が体内を移動して心臓,脳などの臓器やがんに集まる様子を画像化する装置。CT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴断層撮影装置)などが主として生体の形態を画像化するのに対し,PETは代謝や血流など生体内の生理学的・生化学的な機能を捉えて画像化します。現在,心臓医学や腫瘍医学,神経医学などの分野において研究および臨床に使用されているが,活発に活動するがん組織を明瞭に画像化できるため,特にがんの早期発見にその効果を発揮する。
PET検査には,放射性同位元素を容易に製造する加速器(サイクロトロン)と,この放射性同位元素を人体に投与可能な薬剤に合成する装置(放射性医薬品合成設備),ならびに体内に投与された放射性薬剤が集積する様子を画像処理するPET装置が必要。
同社はより手軽で利便性の高い18FDG薬剤合成を実現するFASTlabの発売を機に,PETによるがん検査のさらなる普及に貢献することを目指す。 |