東芝メディカルシステムズ(株)は,X線アンギオグラフィを用いたカテーテル治療による被ばくの更なる低減のために,積極的な線量低減技術として関心領域にのみX線を照射する「スポット透視機能」を開発し,X線アンギオグラフィシステムへの搭載を開始する。
同社は,これまでに軟線除去フィルタやグリッド制御を用いたパルス透視,低レートパルス透視など様々な線量低減機能を製品化してきた。中でも,画像処理コンセプトPureBrain™では,インターベンションにおけるガイドワイヤー操作時など,術者の快適な検査環境はそのままに,従来装置の撮影画像に匹敵する透視画像を提供できるので,検査中の撮影を透視で置き換えることによる線量低減を実現してきた。
今回開発した「スポット透視機能」では,透視におけるX線照射面積を減らすことにより更なる線量低減を実現する。
スポット透視機能はINFX-8000Vの12インチ×12インチ平面検出器搭載モデルからリリースし,Infinix Celeve™-iシリーズに順次拡大していく。3月16日から福岡で開催される第76回日本循環器学会学術集会の併設展示及び学会共催ランチョンセミナーで発表する。
インターベンション施行中は,デバイスを治療関心部位に到達させるが,デバイスが安定した状態での透視では,術者はデバイス近傍の情報を元に治療を進めている。このとき,デバイス近傍以外のX線照射エリアは,治療手技に関わらない画像を表示していることになる。これまでは,それら不要なエリアにはX線絞りを挿入し,照射野を狭めることで不要な被ばくを抑えてきたが,このX線絞りを用いることには,下記に挙げるいくつかの問題があった。
(1) X線絞りは上下・左右対称にしか絞れず,関心領域を画像中心にしなければ,有効に絞れない。
(2) X線自動輝度制御の計算領域にX線絞りが入ると,装置はX線不足と感知し照射線量が増加してしまうことがある。
(3) X線絞りをかけた領域はX線遮蔽されるため画像が黒く表示され,X線照射野以外の様子がつかみにくい。
これらの問題を解決し,快適な検査環境を維持しながら,更なる線量低減を実現させるスポット透視機能を開発しX線アンギオグラフィシステムへ搭載した。
●スポット透視機能の特長
「スポット透視機能」は透視モニタ上でX線照射したい関心領域を指定し,その領域のみにX線照射されるようX線絞りが設定される。関心領域は画面中心でなくても良く,X線照射においてはどのように絞られていても適切なX線自動輝度制御を行うことで,絞込みによるX線照射量の増加を防ぐことができる。また,絞りのかけられた領域には,直前の全面透視の静止画像を表示し,画面全体の様子を想像できる(図1)。
被験者に照射される面積線量が抑えられるだけではなく,全面の1/4の面積にしたスポット透視では術者の被ばくとなる散乱線の線量を約50%にすることが可能となる(図2)。
図1 スポット透視の例
図2 スポット透視の効果
30cm(縦)×30cm(横)×20cm(高)のアクリルに図示した方向からX線(または透視)を照射。散乱線はX線照射中心から50cm離れ,床面から150cmの点での測定値とした。 |