シーメンス・ジャパン(株)は,多様化する医療現場からのニーズに応えた高性能3テスラMRI(磁気共鳴診断装置)の新製品「MAGNETOM Spectra(マグネトム スペクトラ)」の薬事認証を2012年2月21日に取得し,3月8日より販売を開始する。
MRIの解像度は静磁場強度を表すテスラ(T)で示され,本製品のような3T MRIは,一般的に普及している1.5T MRIと比較して高精細な画像情報を得ることが可能。一方で価格も高額となるため,これまで導入した医療機関は限られており,現在国内MRI稼働台数約6,000台のうち,3T MRIは約300台程度とされている。そこで,シーメンスでは,より多くの医療機関で,最先端の3T MRIの画質のメリットを活用してもらうため,改めて必要とされる仕様を一部見直し,従来の3T MRIより価格を抑えた「MAGNETOM Spectra」を開発した。
「MAGNETOM Spectra」は,従来の3T MRIの高い解像度と画質,優れた操作性は妥協せず,コストパフォーマンスの高い価格設定を提供することで,大規模病院だけでなく,中小規模の病院や脳神経外科のような単科の医療機関など,より幅広い医療機関への3T MRIの普及を促進し,より多くの患者の診断に貢献したいと考えている。
また,国内では,2012年4月の診療報酬改定で3T MRIの撮影画像診断料の改定が予定されており,本製品は病院の経営戦略にも大きく貢献できると考えている。
なお,本製品は世界に先駆けて日本の薬事認証されており,他国に先行して販売を開始し,定価は15億円(税別),年間販売台数は40台程度を予定している。
●主な特長
■最新世代のコイルシステムを搭載
「MAGNETOM Spectra」には,シーメンスのハイエンドMRI に搭載されている最新世代のコイルシステム「Tim4G テクノロジー」が採用されている。Tim(Total imaging matrix)の高密度かつ統合されたコイル構造により,局所撮像から全身撮像まで,高いクオリティの画質を実現,さらにガントリ内でアナログ信号をデジタル信号に変換する「DirectRF」により,高速かつ高精度のデータフローを可能にした。
■被検者を圧迫感から解放するショートデザイン・ガントリ
ガントリ部の奥行きが173cmのショートデザインを採用。圧迫感を減少させ,被検者の不安を軽減する。
■優れた総保有コストの削減と検査効率の向上
「MAGNETOM Spectra」は,従来の3T機種と比べて消費電力も約半分程度に抑えた設計になっている。また,装置を冷却するためのヘリウムガスの消費がないため,ヘリウムガスのコストを削減するだけでなく,充填作業にかかる時間も削減することが可能。これにより,導入コストの抑制だけでなく,運転維持費も削減し,MR 装置の総保有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)削減に貢献する。
さらにMR検査にかかる操作を最適化する様々な機能により,効率的な検査を実現する。例えば,ケーブルレス・コイルにより,セットアップを迅速かつ簡単に行うことができ,最大120個までのコイルエレメントを柔軟な方法で装着することが可能。大きな部位に対する広範囲な撮影についても,被検者の位置を変えたりコイルを取り替えることなく1回の設定で全身撮影(最大205cm)を行うことができ,検査時間の短縮を可能にする。
■複雑な操作から技師を解放し効率的な検査を実現
「MAGNETOM Spectra」は,シーメンスの特長であるMR検査の複雑さを省くためのワークフロー最適化ソリューション「Dot(Day optimizing throughput)」を採用。一般にMR検査においては,撮影・操作技術の熟練が求められる場面が多く,安定した検査結果を得るためにはある程度の習熟を必要とされていた。しかし,本製品は,より幅広い医療機関での導入を意図しているため,シーメンスのハイエンドMRIと同じ「Dot」エンジンを採用,検査ごとの段階をリアルタイムで提示する「オンボードガイダンス機能」,被検者一人ひとりの状態に合わせたパラメータを記憶する「パーソナル機能」,最適な撮影条件を自動的に設定し,再撮像のリスクを低減する「自動化機能」が利用可能。これらの機能により,一貫して平準化された再現可能な検査手順が確保でき,短時間での高画質撮影を実現する。 |